「不祥事」
銀行を舞台にしたドラマ「花咲舞が黙ってない」の原作小説本。ドラマは見ていないが、面白いというのは、予想出来た。もし再放送されたらみたいなぁと原作を読んで思ったくらい良かった。
池井戸氏は経済小説?会社を舞台とした小説が何作品もドラマ化(半沢直樹シリーズや下町ロケット)されているが、私はこの本が初めて。
感想を書くと、スッキリしていて面白いなと思ったけどもう少し深い部分があってもいいのでは?と。ただ好みの問題で、ライトな感覚で気軽に読める1冊という見方もできるかな。銀行員と呼ばれる人達の仕事ぶりが垣間見るように読めるし、どれもミステリとして小気味いい結末。いくらでも難しく書ける銀行という舞台設定で、物語に合わせて無駄な部分をそぎ落とし、スッキリ簡潔に描くほうが難しいかもしれない。センスがいいなと思う。
この本にはノベルズ版あとがきが付いている。これを読むとこの作家の初期作品と分かったので、現在の作風とは違うのかな~と思った。最近の作品を読んでみたいなと。
ところで一番面白かったのは、私は実をいうと「あとがき」なのだ。この作品を批評する読者の意見として「経験と違う」とか「こんな部署はない」とかそういったものがあったらしい。それに池井戸氏が答えている。
以下この「あとがき」から抜粋する。「不祥事」 池井戸潤 実業之日本社から引用 ノベルズ版あとがきから
(略)
小説を小説として単純に楽しめない読者が少なからず存在することだ。
(略)
そして、もっとも始末に負えないのは、自分達がエリートだと信じ切っている選民思想の銀行員読者である。
鼻持ちならないエリート意識で、「いまの銀行はこんなふうになっていない」、などと上から目線でのたまう
そんなことはわかっている。
(略)
女だてらに啖呵を切って何が悪い、こういう臨店チームをもつ銀行があったっていいじゃないかー。
だから、世の中は面白いんじゃないか。小説は楽しいんじゃないか。
・・・・ (抜粋終わり)
この単純に楽しめない読者は、おそらく「池井戸氏に的外れな批評をすること」が「楽しい」のだろう。屈折した楽しみ方でもあるが、小説の楽しみ方は人それぞれなので仕方ないのかもしれない。作家と読者の距離がSNSで近くなったせいもあるかもしれない。(実際近くはないけどそう錯覚させる)ただ池井戸氏がここまではっきり書くのは、かなり頭にきたのかな(笑)と思った。
エンタティメントを純粋に楽しみたい、そういう余裕のある人だけが池井戸小説を読むべきですね。