パソコン上達日記2

日々の雑感を戯れに綴ります

かぐや姫の物語 生きている手ごたえがあればきっと幸せになれた

2018-05-19 11:43:42 | 映画

圧巻というか 凄いリアリティですよね。かぐや姫の物語。アニメーションという枠組みを超えた日本が世界に誇る映画です。

昨日金曜ロードショーでノーカット版で放送されましたが、何もかも突き抜けた表現力。この映画にしか見られないような これまで見たこともないような質感。シンプルでいながら温かみのある線と色彩。構図や動き一つとってもスクリーンを意識した大きさがある。具体的にあげるとキリがなく一日かかっても文章が書けないので(笑)

物語は竹取物語を忠実に再現してありますが、それはかぐや姫の人間としての成長をベースにしたもの。人間として生きる苦しみと喜びです、最初は笑うだけの赤ん坊が 怒りを知り知恵を得て それでも自分に忠実に生きたいと願う、自分というものは何なのか?という根源的テーマを追求する部分。

印象として感じたのはかぐや姫は怒りっぽいなと(笑)高貴な姫君という立場を強いられてしまった頃から 怒りという表情がよく見られますね。その置かれた立場は不本意ですが、父親に従うというのは現代的だなと思います。一度屋敷を飛び出しますが いつの間にか戻っている 課せられた宿命を悟るのですが自分の力ではどうしようもない。それを受け入れながら一人で何かと怒りながら戦っているかぐや姫が帝に抱きしめられたことで生命の存在に嫌悪を感じる・・・もうこんな世界はイヤだ生きているのが嫌だというの よく分かる部分です。

かぐや姫がなぜ苦しむのか?それは自我があるからですよね。人間というのは自我がある、それが自分を苦しめ人間を醜くみせているのですが、それを捨て去ろうと思ったらどうなるのか?「悲しみも悩みもありません」という月の都 つまり天に還るわけです。悲しみも悩みもない世界というのは死の世界ではないでしょうか?地球を懐かしむ月の世界の住人がお釈迦様のような風貌をしているのは哲学的です。迎えにくるのもまさにお釈迦様の姿。それは死を思い起こさせるものです。悟りというのは人間のエゴを捨てた状態 幸せという概念をもたない世界なのかなと思いました

ところでこの物語の男性はロクなのがいない(笑)ここは面白いですね。でもそれは 悪気がないんですよ。男性の欲望に忠実なだけで、お爺さんも姫の幸せを願ってのことで それを思うと切ないです。 捨て丸に関して言えば 唯一かぐや姫が愛した男性ですが、ひどいですよね、奥さんと子供を忘れているわけだから(笑)昔話の範疇にないキャラクターでそれが生々しい。高畑監督作品らしい苦さがあります。きれいごとで済まない世界が現実です。それもかぐや姫に全て体験させる。

(ラストの捨て丸とかぐや姫の再会シーン。このシーンの解釈は、色々できますよね。生きている手ごたえを感じる異性と再会し愛し合う、その喜びを飛ぶことで表現する 雨も風も空も空気も海もただただ美しくて)

 最後は月のアップとともに 「かぐや姫」と名付けられる以前の生まれたままの無垢な赤ちゃんの姿が重なる。輪廻転生を感じさせました。それからのエンディングはその歌詞とともに壮大でまさに一大絵巻物を見ているかのよう。世界最古の竹取物語ですが、原文を一度読みたくなるぐらいファンタジックでまた美しい悲しい物語です。

高畑監督は平家物語の構想があったようで それが叶わなかったのは本当に残念です。日本映画界の巨匠、心からご冥福をお祈りいたします。

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