辺見じゅんのノンフィクション「収容所から来た遺書」を映画化した「ラーゲリより愛を込めて」(2022年、瀬々敬久監督)を近くのシネコンで見た。代金はシニア料金で1,200円。シベリア抑留に関する映画だというのを知り見たくなった。ラーゲリとは抑留者の収容所があるところの地名である。辺見じゅんと言う作家は不勉強ながら知らなかった。ウィキベディアで調べてみると「男たちの大和」、「戦場から来た遺書」、「レクイエム・太平洋戦争」など第2次対戦をテーマとした小説も多く書いている作家らしい。
この映画は第2次対戦終結時、当時のソ連に不当に拉致され10年以上抑留されて強制労働に従事させられた日本軍人の悲劇の物語である。もう日本には帰れないのではないか、と言う絶望的な気持ちになる中、何とか希望を捨てずに頑張った日本兵たちの物語である。映画の冒頭に「この映画は実話である」とテロップが流れる。主人公である山本幡男は満州で妻子と生活を共にしていたが終戦のどさくさにソ連に抑留されて家族と別れ別れになってします。抑留されてからはロシア語ができるのでいろんな局面で通訳をやらされるが、翻訳した内容があまりにも過酷な命令なので同僚の日本人たちに憎まれるが段々とその立派な人格・人柄に仲間たちから尊敬の念をを集めるようになる。そして10年の歳月が経過するが・・・
この映画を見ていると、戦争やその後の極寒の地における抑留という極限の状態になると人間の持つ醜い部分が出てしまいがちになるという現実を突きつけられる。このような状況でも人間としての尊厳を保ち、自己のみならず他者にも配慮し、励まし、助け、絶対的権力に立ち向かう、と言うこの主人公が実行したようなことが果たして同じ状況に自分がおかれたときにできるか、自問しても「できる」と言える自身がない。
ソ連(ロシア)のやることは今も昔も変わらない、と言うことを今回のウクライナ侵略の悲惨さを見てもこの映画も見ても感じるが、我々日本人の教訓とすべきは戦争はやるべきではないと言うだけではなく、なぜ終戦間際のどさくさにこのような被害に遭ってしまったのか、どうしたら避けえたのかというようなことも検証することだと思う。
なお、映画としては主人公の二宮一也や北川景子は熱演していたと思うが、最後に主人公の留守宅に同僚が遺書を届けるとことはちょっと冗長で、テロップでそのようなことがなされた、と言う程度にして2時間ちょっとくらいの放映時間に抑えてほしかった(原作のタイトルからしてこの部分が大事なことはわかるが134分は長いと感じた)。
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