あけ方に

2017-05-02 16:56:54 | 独り言
一昨日、一息ついたのがあけ方。時間を忘れていた。今から寝るのもなあ、なんとなく気持ちが高ぶっていてどうせすぐには寝付けないなあ、なんてうだうだしている時に、そうだ!と思いついた。金星だ、明けの明星が見られる。ついこの間までは宵の明星だったけど、これからは明けがたに見られる。現役時代は早い時間に出勤していたので、玄関を出て必ず西の空を見上げた。残っているすっぴんのお月様と金星を見つけて挨拶を交わすのが、その日最初の仕事。引退してからは見る機会がなかったので、思いついて空を見上げたらなんと当麻の空は曇り空でした。残念!

「あけ方に来る人よ」は永瀬清子さんの有名な詩ですが、永瀬さんのあけ方には「金星」という詩があります。

       金星

  私はつめたい星空を啜った
  しおからくそれは私に流れこんだ。
  蝠はそのたばね焚斗の形のまま
  しわしわとしばまり
  カシオペアはその長い髪のジグザグを
  蛇のようにうねらせ
  北斗も念珠のようにつながったまま
  私の喉をすべっていった。
  しずかなあけ方に
  天の星はみななくなって
  そして私の内部は
  キラキラと彼等の青い鱗で燃えた。
  最後に喉にかかった釣針みたいな金星を
  私はものういため息とともに
  東の空にむかって吐きだした。
  それはしばらくゆれていたが
  さびしいあじさい色の空に一つだけ残って
  しずかに綸(つりいと)の先端にひかっていた。
                思潮社現代詩文庫「永瀬清子」より

特に、最後の六行は震えます。物憂い朝、あじさい色の空、吐き出してつりいとの先端にひっかかった金星、はじめてこの詩を読んだ時からずっとこの六行の雰囲気に憂かれています。他に「月について」という詩もあります。永瀬清子さんの詩の中でぼくはこの「金星」がいちばん好きです。明日のあけ方は東の空を見よう。

コメント (2)
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