JR羽越本線は余目駅が分岐点となり、鶴岡・新潟方面に向かっている。余目駅からは、もう一本の線路が最上川を沿うように走り、山形県新庄市を経由して宮城の鳴子温泉方面へと向かっている。今では通称「奥の細道最上川ライン」と言うらしい。以前にこのルートで鳴子温泉に向かったことがある。車窓からは風情たっぷりの駅が見えて、気になっていた。今回の狩川駅は、余目駅から二つ目の駅にあたる。例によって行政区分で言うと何町(何市)にあたるのか想像できない場所だが、調べたところ庄内町である。
庄内町は人口が約2万人と比較的な大きな町で、鶴岡市とか酒田市と合併することなく、独自の町として生きていくことを選んだ町だ。町の中心部(商業ゾーン)は、車で行きやすい郊外にあり、駅前は特別なものはないが、古くからの町並みを残しているといえよう。道路が茶色いのは冬季間に地下水等で融雪処理をしているためと思われ、雪国ではあるものの冬は生活しやすいのかもしれない。駅前の店舗は営業を休止しているものが多く、日曜日で人通りが少ないせいもあり、いささか寂しい感じがした。蔦に覆われた建物はハーブの研究所と表示があり、なぜここにそんなものがあるのか気になるところではある。こもう少し色を調整して、駅前の独特の雰囲気を再現したかったけど、なかなか上手くいかなかった。
LEICA M9 / SUMMICRON 35mm ASPH
JR酒田駅の一つ隣(秋田側に)の駅が本楯駅である。酒田は頻繁に遊びに行く場所だ。頻繁に行く場所ほど、走る道路は決まり、訪れる場所も決まってしまうものである。いくら近いとしても幹線道路から内に入り込んだ地域などには逆に近寄ることがなくなる。そんな訳で興味津々で本楯駅に車を走らせた。
さて、その本楯駅前は規模は小さいながら、独自の町並みを構えていた。駅舎の横には屋根付きの駐輪場が2棟もあり、それぞれに自転車が1台づつ停まっていた。農協の古い倉庫のシャッターは錆びつき、駅前一等地の住宅は空き家となっていた。こんなことでもなければ来ることのない場所だなと感慨深い思いを持った。帰宅してからGoogleマップで確認すると、ほんの500m先に「鳥海山大物忌神社」があった。そこには今年に入って2回も行っている。車と鉄道では視点が違うので、全く気づかった。僕という人間の視野は、なんと狭いのだろう。
LEICA M9 / SUMMICRON 35mm ASPH
秋田から青森方面に出かける際、自動車道(高速及び自動車専用道)の終点が二ツ井であり、そこから大館を経由して弘前方面に抜けることがスタンダードなのだ。だから二ツ井の町には何度か立ち寄ったことがある。それなのに駅前に立ち寄るのは今回が初めてだ。二ツ井は、僕が想像していたより遥かに大きな町で、昭和の時代には相当栄えていたであろうこと、そのことを想像させる町並みが続いていた。なにしろ、大通りが1キロ近く続き、そこから逸れる横道にも何らかのお店が続いている。まるでロールプレングゲームのダンジョンで、全部を潰すことは容易ではないだろう。今回は駅からまっすぐに1キロほど歩いた写真を掲載したが、まだまだ色々なものが潜んでいる筈だ。
ふと思ったのだが、どこからどこまでが「駅前」なのか、その明確な定義は僕の知るところでは存在しない。聞きかじり知識でいうと、「太陽系」とは簡単にいえば太陽の重力の影響下にある範囲をいい、具体的には太陽風が届く範囲までのことを言うらしい。その理屈でいえば、駅前とは「駅」の影響下にある地点をいい、物理的な距離とは関係ないことになる。影響力の大きい駅であれば、駅前の範囲も広がるというのは正論だ。思いつきで始めた「駅前の光景」シリーズは、まだテンプレートも確定していない段階だけど、駅を基点に町を見るという試みは、少なくともある種の刺激を与えてくれることは確かだ。
LEICA M9 / SUMMICRON 35mm ASPH
JRの駅舎の横には、少し小ぶりな「秋田内陸縦貫鉄道」の鷹ノ巣駅がある。二つの鉄道の駅前だ。昨日掲載した農村コンビニ「ノーソン」は、この鷹ノ巣駅前にある。この日は、強い陽が差したかと思えば、どんより曇り、また陽が差した直後に大粒の雨が降ったり、とても忙しい天候だった。今回のハイライトは3枚目のカットで、駅からまっすぐに伸びる道路である。土曜日の昼さがり、道路のど真ん中に立ち撮影した。人一人見えず、車すらはるか遠くにかろうじて見えるだけ。雨を吸った黒いアスファルトは鈍く光っていた。その場の情感を完全に写し撮ることはできなかった。えも言われない情感を撮りたい、それが僕のテーマとなるだろう。
LEICA M9 / SUMMICRON 35mm ASPH
峰吉川駅は大仙市協和地区にあり、少し前に掲載した刈和野駅の隣の駅である。JR奥羽線は秋田駅から大曲駅までの間、国道13号線と併走するように走っている。このJR奥羽線には、所謂「秋田新幹線こまち」が在来線と同じレールを走行する。秋田新幹線は、東京から盛岡までが新幹線区間で、盛岡から秋田までは在来線扱いの所謂ミニ新幹線なのである。それでも国道13号線を走っていると、山の間から突然「こまち」が現れるさまは、とても美しい。そして、この峰吉川駅を新幹線は停車はしないもの、通過するのである。
さて、肝心の峰吉川駅周辺だが、正直どんな場所と一言で言うことは難しい。大抵の秋田県民にとって、国道13号線を車で通過する場所であり、知り合いがいるとか、仕事の関係とか、何か特別なことがなければ一生行く機会のない駅なのだと思う。そんな駅前を散策すると、にかほ市(同じく秋田県)の醤油メーカー、キッコーナンの看板があって感動した。お店にかかっているのは初めて見た。しかも「なん子ちゃん」なるキャラクターまで描かれている。あれ?峰吉川駅とは関係ないか。あと、駅前には謎の3階建ての洋館風ビルが異彩を放っていた。恐らく以前は何かの店だったらしい。新築当時は相当モダンであったと思う。人口も所得も増え続けることが当たり前で、まだまだ地方は貧しかったとはいえ、今日よりは明日の方が「より良い世界」になることを誰しもが実感していた。そんな時代に建てられた建物だ。この田舎には少し早過ぎるかもしれない、でもそれが当たり前になる筈だ。そんな建築主の気概が見えたような気がした。発展する筈だった駅前は、とても静かだった。
LEICA M9 / SUMMICRON 35mm ASPH
JR男鹿線の「天王駅」である。駅とは離れているところに、道の駅てんのう(天王グリーンランド)があり、そこは男鹿方面に行く際には必ず通過する。一時期どんな場所にも「展望台」を建設するのが流行だったようで、「道の駅てんのう」にも全高約60mの立派な展望台が建っている。その展望台のイメージがあるせいか、JRの天王駅はもっと大きな駅だと思っていた。こじんまりとした姿は意外ですらあった。
天王駅が大きいと思い込んでいた理由はもう一つあり、東京で働いていたときに会社の打ち上げパーティーで行った「天王洲アイル」と混同しているからだ。全然違うのは当たり前だが、天王駅のホームはモノレールのイメージに近いような気もする。天王を秋田の天王洲アイルと認定したい。・・・。・・・。やはり違うか。
LEICA M9 / SUMMICRON 35mm ASPH
刈羽野は、「大綱引き」で有名な町である。駅前にも巨大な綱が展示されていた。とはいえ、この大綱引きが全国的に有名な一大行事というのには、少し無理がある。刈羽野は「大仙市」の一地域であり、大仙市では「大曲」が花火で全国的に有名だ。刈羽野は何かその地に縁がある人ではないと、これといった特徴が見出しにくい町である。最近、有名になったところでは、秋田県出身の俳優「柳葉敏郎」さんが、この刈羽野に自宅を構えていることだ。柳葉敏郎さんといえば、、一世風靡セピアで当時の若者の最先端を行く人というイメージを持っていた。一世風靡セピア結成の数年前までは秋田県の一高校に通っていたとは驚きである。
まあ、そんなこんなで、あまり良い写真は撮れなかったけど、駅前は3年後に再訪しても、あまり変わらずにいるのだろうなと思う。
LEICA M9 / SUMMICRON 35mm ASPH
JR釜石線で、遠野から釜石方面へ二つ目の駅である。この手の駅は鉄道で訪れるか、自動車で訪れるかで、大きく印象が変わる。鉄道で訪れると、廃れて寂れた駅前通りを眺め、心細い思いを持つ。ここで暮らすのは、どれだけ寂しいのだろうか、と余計な心配をする。
一方、もしここを自動車で訪れるとすれば、真新しい国道バイパス道路を快適に飛ばし、必要があれば道路添いのコンビニで飲み物を買ったりしながら来ることができる。大通りから少しだけ集落に入ったところに駅はあり、あまり寂しい感じはない。住民の方も同様に自分の地域を「自動車道路」目線で見ていると思う。駅前は何もなくなったけど、、特に不便もなければ、侘しさもない。そこを見誤ってはいけない、と自分を戒めている。
そのうえで、失われつつある駅前の情景、古くからある建物や商店、人の流れ、それこそが地方都市の本来の魅力であったように思う。そもそも、鉄道がこの地になければ、地域のありようは全く異なるものとなったのである。公共交通機関が失われることの恐ろしさを、我々はもっと認識すべきかもしれない。
LEICA M9 / SUMMICRON 35mm ASPH
僕はブログ記事を毎日作る余裕はないので、基本的に週末に作成しておき、あとはアップする日に微調整だけしてアップしている。その記事が少したまって収拾がきかないので、何日かの間、朝晩アップする日を設けようと思う。さて。。。、
長井市の人口は約2万8千人程度で、あまり大きな町(市)とはいえない。実際、駅前も地方の町そのものといった感じで、大きな建物やお店もないし、昼食を食べる場所を探すのにも苦労した。多分、駅前とは別のバイパス道路沿いとかにショッピングゾーンが形成されているのだろう。長井市散策の記事でも同じことを書いたが、歩けばそれなりに面白いものを見つけるし、何らかの歴史というか伝統みたいなものも垣間見える。丁度、小さな城下町を歩くような、そんな感覚を持つ。
でも長井は城下町ではなく、商業都市なのである。無論この地を収めた米沢藩の武家文化の影響は色濃くあるだろう。僕が見た城下町のようなイメージは、米沢藩の影響というより北前船を通じて酒田から最上川を遡った京文化の香りなのかもしれない。
LEICA M9 /SUMMICRON 35mm ASPH
新しいカテゴリを作った。「駅前の光景」というカテゴリだ。特段制限はないものの、現実的には日本国内の駅になると思う。国内には約9600の駅があるそうだ。その殆どの駅に僕は行ったことがないし、行くことができぬまま一生を終えるだろう。僕が行ったことのある駅にも、行ったことのない駅にも、須らく「駅前」が存在する。JR渋谷駅の駅前と、東北の無人駅の駅前では、同じ駅前という言葉を使うことに無理があるほど、大きな差異がある。それでもどちらも駅前なのである。
そして僕は、この企画を立ち上げない限り(大げさだけど)、行くことの無いであろう、何の変哲もない地方の一駅、その駅前に興味を持っている。そこには写欲掻き立てられるフォトジェニックな何かは無いかもしれない。それでも撮ってみようと思う。駅の写真(全景)と駅から見た駅前の写真。これだけは全ての駅前の必須写真とし、あとは僕の眼に留まった何かをランダムに載せる、ただそれだけのことだけど。
記念すべき第一回は、JR奥羽線・釜淵駅だ。山形県の真室川町に位置し、秋田県湯沢市にほど近い県境の町である。真室川町は中々正体の分からない町で、山を沿って走る道路(さして大きくもない)に集落が延々と続いている不思議な町だ。僕が知らないだけの可能性もあるけど、どこが中心地なのか、それすら分からない。地図で見ると、釜淵駅は当地の大動脈である国道13号線から山間部に入り込んだところにある。駅前では道路工事が行われていて、工事関係者以外に人気は全くなかった。駅の近くには巨大な「百貨店」を名乗る店舗があった。外から覗くと、巨大なフロアの真ん中に、普通の小さな商店くらいのスペースだけを使って食料品などを展示していた。これで何が分かったかといえば、全く何も分からない。もう載せるのもやめようかとも思った。でも、続ければ何かが見えてくるかもしれない。取り敢えず、シリーズ続けます。企画倒れで早々に廃止になったら、すいません。
LEICA M9 / SUMMICRON 35mm ASPH