



ポール・オースターの訃報に接したのは、今年のGW中のことだった。どう捉えて良いのかも、どう言葉を発すれば良いのかも分からなかった。僕が初めて読んだポール・オースターの作品は「「ムーンパレス」だった。あの時の衝撃は忘れようがない。それから都合5〜6回(多分もっと)は通読していると思うけど、あれほど切なく、美しく、そして親近感に満ちた世界を僕は他に知らない。それ故、ポール・オースターの死に触れることは簡単ではない。彼の死の直前、今年の2月にアメリカで出版された「4321」。その日本語版が昨日11月28日に発売された。予約注文していた本が発売日当日に到着した。ずっしりと重くて分厚い本。800ページ、88万字、そして厚さは5センチ近い。頁を開くと、濃厚なインクの香りが鼻腔に吸い込まれる。うっとりする。一字一字慈しむように読もうと思う。それがポール・オースターに対する礼儀だし、別れの儀式となるだろう。この本を読み終わるまで、僕の中でポール・オースターは生きている。