ここも恋焦がれる花巻スポットである。街中のエアポケットのような立地にあり、いくらGoogleマップ(ストリートビュー)を眺めても決して検索することは不可能な場所だ。縁がなければ一生足を踏み入れることはないだろう。僕は何かの縁に導かれ、初めて花巻の街を歩いたその日、わずか十数分で此処に辿り着いた。それはちょっとした奇跡だと今でも思っている。小っ恥ずかしいけど、僕が花巻と恋に落ちた瞬間だった。
初めて見た時点で、テル美容室は閉店してから長い時間が経っていることは明らかだった。それでも、その佇まいからすぐに分かった。少しだけ昔、お洒落な花巻娘(今では大々お姉様)は、この店に集っていた。新しい髪型、流行のセットをここで整えていたに違いない。花巻の流行はこの場所から発信されていたのだ。今では店は眠りにつくけど、往時の凛とした姿を保っている。そのことも奇跡だと思う。毎回同じ写真しか撮らないが、花巻に来れば必ずここに顔を出す。変わらぬ憧れの美女に会うために。時折、本当はこんな場所は存在せず、僕の心の妄想が作り出した幻影ではないかとも考える。さて真実は・・・。
X-PRO3 / Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical