京都大の本庶佑客員教授らの研究グループは、がん免疫治療薬「オプジーボ」の効果を高める方法をマウスの実験で発見したと発表した。2017年度から臨床試験を始める予定。本庶氏は「(患者によって効果に差があるオプジーボの)一番の問題点を解決できるかもしれない。医学的に大きな貢献ができるだろう」と話している。論文は17日以降、米科学アカデミー紀要に掲載される。
人間には本来、正常な細胞から変化したがん細胞を攻撃する免疫システムが備わっている。しかし、がん細胞は免疫のキラーT細胞にある分子「PD―1」に、別の分子「PD―L1」を結合させ、攻撃にブレーキをかけてしまう。この仕組みを発見した本庶氏は、ブレーキを解除すればキラーT細胞が攻撃を始めると考え、オプジーボの開発につながった。
本庶氏らは今回、PD―1をなくしたマウスではキラーT細胞内のミトコンドリアが活性化することに着目。大腸がんのマウスで実験した結果、活性化したミトコンドリアが活性酸素を生み出し、キラーT細胞が増殖することが分かった。
活性酸素を発生させる薬剤をオプジーボと同時に投与すると、オプジーボ単独に比べ効果が上がった。市販の安価な高脂血症剤「ベザフィブラート」が発生剤として使えることも分かった。一方、がん細胞付近のリンパ節を切除すると、キラーT細胞の効果は消えた。
がん患者は転移を防ぐためリンパ節を切除するケースが多いが、研究グループは免疫治療に有害な可能性があると指摘。高価なオプジーボは安価な薬と併用すれば使用量が減り、医療費負担の軽減につながるという。