『核兵器について、本音で話そう』(太田昌克 著、新潮新書)は、ガイド役を務める元国家安全保障局次長の兼原信克氏を筆頭に、共同通信編集委員の太田昌克氏、元軍縮会議日本政府代表部大使の髙見澤將林氏、元陸上自衛隊西部方面総監の番匠幸一郎氏による座談会をまとめたもの。
各人がそれぞれの領域において核政策に深く関わってきた人物であるだけに、かなり専門性の高い内容となっている。そのため難解な部分が少なくないことは否めず、しかも昨年9月10日に行われたものであるため、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった今年2月24日を境に大きく変わった状況に追いついていない部分もある。
それはともかく兼原氏は「はじめに」の部分で、戦後75年が経過した結果、日本の戦略環境は激変したと述べている。いま日本は、世界で最も危険な核の谷間にあるのだとも。
日本は世界で最も危険な核の谷間にある
ロシアは米国と核の均衡を保ちつつ、小型核の先制使用を公言している。中国は、米露がINF(中距離核戦力)全廃条約(以下、INF条約)によって手を縛られている間に、中距離核ミサイルの開発・配備を猛烈に進めた。さらに、世界最貧国で政情の不安定な北朝鮮も、日本全土を射程に入れる核ミサイルを手にしている。(「はじめに」より)
日本は世界で唯一の被爆国である。広島・長崎の悲劇は、世界に核兵器の廃絶を求める強いメッセージとなって伝わり続けた。核廃絶の理想は正しい。しかし、理想を実現するのに必要なのは、具体的な手立てである。(「はじめに」より)
日本の21世紀は、中国の台頭と台湾有事の危険、北朝鮮の核武装という暗雲たれ込める中で幕を開けた。「核兵器の存在は是か否か」という神学論争をいつまでも続けていられるような戦略環境に日本はない。冷戦初期のドイツのように、日本は核問題を自分自身の安全保障の問題として真剣に考える時期に来ている。(「はじめに」より)
個人的にはすべての意見に同調できたわけでもないのだが、それでも核の脅威が身近になってしまったいま、目を通しておく価値はありそうだ。ここでは第4章「ロシアの核」のなかから、私が気になった部分を抽出してみたい。
兼原氏は、「ロシアは武門の国なので、軍事だけは手を抜かない」と指摘する。事実、経済規模は日本の4分の1であるにもかかわらず、国防予算はずっと多いそうだ。日本の5兆円規模に対して7兆円規模くらいあるというのだから驚きである。
軍隊にしても、日本の自衛隊が25万人であるのに対し、ロシアの軍隊は90万人くらい存在するのだとか。しかし、それでも広すぎる国土を守るには充分ではないため、核戦力だけは絶対に譲らないのだという。後述するように、核ミサイルの開発にも余念がないようだ。
「核を使う」と公言する背景
一番怖いと思うのは、彼らの核ドクトリンです。「ロシアの死活的な利益が脅かされた場合は核を使う」と公言しています。これは「戦術核を使う」という意味です。そう言っておかないとあの広い領土が守れない、と彼らは考えている。最近は北極海の氷も解け始めていますから、長大な北極海沿岸部も守らねばならないとなったら、大変なのは確かです。しかし、ロシアの戦術核先制使用のドクトリンは、核の均衡と安定を図る上で、不安定要因になっていると思います。(149ページより)
これは、プーチン大統領が核の使用を否定しない現状とも合致する部分があるのではないか? 非常に気になるところである。
「冷戦に負けたリベンジをしたい」
ロシアはかつてアメリカに対抗する世界最大の核大国だったが、冷戦後にソ連も崩壊して国力が落ち、そのプライドを維持することが難しくなっていると指摘するのは番匠氏だ。
とはいえ、かつてのプライドが簡単に捨てられるものではないのも事実。そればかりか「冷戦に負けたリベンジをしたい」というナショナリズムもあるため、レガシーを維持しつつ国力に合わせた形で柔軟に核戦略を変えようとしているのではないかという。
2018年の3月、プーチンは年次教書演説の中で6種類の近代兵器に言及しました。サルマト(大型ICBM)、アバンガルド(極超音速滑空兵器)、キンジャール(極超音速空中発射型弾道ミサイル)、プレヴェスニク(地上発射型原子力推進式巡航ミサイル)、ポセイドン(原子力無人潜水兵器)、ペレスヴェート(レーザー兵器)です。
これらは、いずれもアメリカのNPR(核態勢の見直し)への対抗を念頭に、ミサイル防衛システムを突破していく目的で開発されていると考えられます。まだまだレガシーの部分で俺たちは負けないぞ、ということだと思います。実際に、その中で幾つかは実戦配備をしているし、夢物語では決してない。だから、ロシアの兵器近代化には、引き続き注意が必要だと思います。(157ページより)
なお国力に関していうと、クリミア侵攻やシリアへの介入の仕方などを見ると、“大国のガチンコ勝負”ではなくなっているとも番匠氏は述べている。そうではなく、柔軟に対応して実を取ろうという感じになっているというのだ。重戦力重視の姿勢を維持しながら、時代に合わせた柔軟な戦力も持ってきているということであるため、冷戦時代よりも対応が難しくなっているわけだ。
エスカレーション抑止論
ロシアの核戦略の議論によく出てくるのが「エスカレーション抑止論」です。ロシアが最初に限定的に核兵器を使用することにより、相手が怯んで軍事行動を停止させることを目的とする考え方で、エスカレーションを止めるために核兵器を使うという非常に危険な考え方です。今までは使ってはいけない兵器だったのに、ハードルを低くして核を使おうとする姿勢。これは非常に注意をしなければいけない。クリミアのときにプーチンは、NATOが介入したら核を使用する用意があったと言っています。彼らは本気で使う可能性がある。(159ページより)
また番匠氏は、冷戦期のNATO(北大西洋条約機構)とワルシャワ条約機構軍の立場が逆転しているような気がするとも言う。冷戦時代はワルシャワ条約機構軍が強かったが、いまやNATO軍は近代的で相当な力を持ってきている。そのためロシアは「弱者の戦法」として核を使うかもしれない。
そういう意味で、「INF条約が終わったからどうするか」というのは対中国だけではなく対ロシアについても考えていかなければならないということだ。さらに、北方領土の重要性は、ロシアにとってむしろ高まっているとも指摘している。
その証拠が、最近の部隊の配備です。例えば地対艦ミサイルのバスチオンやバル、最新鋭の防空ミサイルを択捉島と国後島に配置したと発表しています。ロシアは近年、北方領土駐留軍の近代化を着実に進めています。
それから、千島列島の松輪島など旧帝国陸軍が拠点を持っていたところにも新しい基地を置く計画もあるようです。オーシャンバスチオン(海洋要塞)であるオホーツク海の防備体制は、冷戦期よりも量的には減っていますが、それを質の向上によって補おうというのが最近のロシアの傾向です。演習の状況などを見ても、決して油断はできないという感じがします。(159〜160ページより)
先ごろロシア外務省は、北方領土問題を含む日本との平和条約締結交渉を中断すると発表した。ウクライナ侵攻に伴う制裁に日本が加わったことに反発したとみられているが、こういう事実を明かされると、多少なりとも今回の問題との関係が気にかかってしまうのも事実だ。果たしてそれは考えすぎだろうか?
ロシア人の頭の中は「9割軍事」
ソ連崩壊の前後に外務省のソ連課(のちのロシア課)に勤務しており、ロシア人との付き合いが多かったという兼原氏は、その経験を軸としてロシア人のひとつの特徴に触れている。
彼らは中国人とまったく違います。頭の中の9割は軍事で占められ、お金の話と言ったら自分の財布の話になっちゃう(笑)。トップの人たちはエネルギー資源の代金を山分けしているような状況で、真面目にコツコツ商売して稼ぐ人たちじゃないんです。外国人に対する猜疑心はとても強いのですが、仲間だと思うと突然垣根が外れて、思ったことをそのまましゃべってしまう。全然、表裏がない。
彼らの本音は、「国が広すぎる。金もない。だから核を使うしかない」ということだと思います。武門の誉れ高い人たちですから、武力で押し込まれたら絶対に許さない。核使用も辞さない。エスカレーションラダーで言うと、アメリカは20階から上が核の次元だけどロシアは10階から上はもう核戦争の次元だ、という感じですね。(164ページより)
もちろん、これは兼原氏と交流のあった「トップの人たち」の話であり、すべてのロシア人を十把一絡げにすべきではないだろう。とはいえ、「ロシア人は生粋の戦士です。手が出るのが早い。『やられたらやり返す』と平気で言う人たちですから」という発言は、こういう時期だからこそ気になることではある。
以上、東洋経済
日本は、北方領土にミサイル基地があることを知らない。マスコミがヘイワボケの洗脳を一生懸命やり、丸山議員が戦争しないと奪還できない発言を叩いていたが、今となっては正解ですね。
北海道にミサイル基地を建設すべきです。北方領土向けと北朝鮮向けにやられたら敵基地攻撃ミサイルということでOKです。
中国に対しても尖閣に自衛隊を常駐できるように対中国要塞化のための軍事基地を建設してもらいたいものです。ところで、奄美には、ミサイル基地はありますよ。
ウクライナの状態を日本人は学習しないといけない。
ネクストウクライナは、日本です。
その自覚がない日本人、大丈夫???
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