新日春展 東京都美術館 2017年4月19日~4月24日
バベルの塔展でにぎわう東京都美術館。それも早く見たいところだけれど、この日はひとつ上のフロアの新日春展へ。
第50回を区切りに2015年に終了した日春展(日展日本画部春季展)を母体に、今年から場所を東京都美術館に移し開催されている。第一回展。
日展よりも一回り小さな作品が並んでいる。日展と重なる方が多いので、日展で興味を持った画家のかたの作品を見られるのが嬉しい。しかも描きあがってまだホカホカの作品。
技術的なことはわからないので、好きな作品を記録。(記名して腕章をつければ撮影可)
加藤晋「昔の約束」 おそらくにこにこして観ていたかもしれない。
日展で出会った素敵な加藤晋さんワールドに、もう一度遊びに行く。
こっそり、いろんなものが姿を現すのですもの。
鶴は、姿を見られたしまった夕鶴だろうか。
三蔵法師一行が旅をし(ぽっちゃりの猪八戒がかわいい)、
玉手箱と羽衣の間で途方に暮れているのは、天女の羽衣の夫か浦島太郎なのだろうか?
ウサギと亀はいいとしても、タヌキやマレーバクはどういうつながりなのかわからない♪
他にも白蛇、龍、猫は発見したけれど、実はもっともっとひそんでいるかもしれない。
始めにパッと見たときは、その奥行き感に驚いた。濃い緑や青の色彩が、幻影のようでとってもしみてくる。山並みのむこうの月を見ていると、空も山並みもどんどん奥に深くなり、遠くそのまた遠くへ。山のむこうには何があるんだろう、と、子供のころ二階の窓から山を見ながら思っていたのを思い出す。
他の絵を観ていてもやっぱり見たくて、もう一度戻ってしまった。加藤晋さんは1955年東京生まれ、多摩美大を出られた。展覧会を熱望。
池内璋美(あきよし)(1947~)「さくら」
「桜」と銘打つ絵は多けれど、こんな桜もあるなんて。
花は少しの花びらだけ。伝わってくる、ほろりほろりしたもの。花じゃないけれど、「金のしずく ふるふるまわりに」の詩がうかんだ。
描き込んだ構成の絵が多い現代日本画の中で、はっとするシンプルさ。それだけに、質感の厚みに引き込まれた。
(写真では見えにくいけれど)子犬の毛並み感に感嘆。触れそう。
誰かを待っているのか、遊び疲れたのかな?。そこまで描かない。さくらの花びらも、丁寧にほんのり。
地の金がまた素晴らしく。金一色なのに深い奥行き。地面や空気や木立やいろいろなものに置き換えられる。
子犬、桜とともに、地そのものが主役の一つになっているようだった。
池内さんの不思議な世界。昨年日展で見た絵も、撮影してあった。
「水路を行く」
水に触れそうなほどで、どんなふうに描いているんだろうと、可能な限り近づいてしげしげと観た記憶がある。
どんな景色でも、身近な小さな出来事でも、こんなにとくべつなものにしてしまう。犬の毛並みや水や、慣れすぎてあたりまえすぎて感じなくなってしまう手触りを、指先にまざまざと感じさせてしまう画家さんて、すばらしいなあと思う。
画像検索すればいくつかの絵が見られたけれど、この方の絵は是非実物を見て、蝕感を感じたいもの。
土屋禮一「苑樹」
なんてなまめかしく、官能的な木肌なんだろう。
きりがないので、あと少しだけに
福田知恵「天高く」
平木孝志「舞う」
前田廣子「春を待つ」
佐藤龍雄「水温む頃」
最後に、伊東正次「月下独猿図」
先日京王プラザのロビーで見た、お猿にもう一度会えた(その日記)。
同じ題、同じモチーフの絵。でも印象が違う感じ。
京王プラザの絵よりも、猿に主役感が。はっきりこちらを見ているのを感じ取れた。冷たい岩の上で、猿の体温。はぐれざるなのかな。端正な顔立ちの猿だった。伊東さんはどこかでこの猿と出会ったんだろうか。
展示数380点(!)と大変多く、かなりはしょりながら見たけれど、へとへとでした。