ドイツの物理学者ゾンマーフェルトという名前は物理学に関心がある人以外には知られていないでしょう。
この人を中心にドイツにおける理論物理学が勃興した社会的背景を詳述した大著があります。
ミヒャエル・エッケルト(金子正嗣訳)『原子理論の社会史ーゾンマーフェルトとその学派を巡って』、海鳴社(2012)
ゾンマーフェルト(1868-1951)は、天才ハイゼンベルクを発掘した人としても有名です。
X線に関連する研究から出発し、理論物理学という学問を創始した人達の一人でもあります。
上記の本は、原子物理学(量子力学)の勃興をデンマークのボーアを初めとする欧米諸国における学者との往来をその時代の社会情勢をからめて詳述しています。
第1次世界大戦において戦地にいる若き研究者たちと郵便で研究内容を報告し合っていた様子にも驚かされます。
第1章:新しい学問の成立
高等学校の教職ー物理学の職業化の先駆者ー
フェーリクス・クラインとその努力
『数理科学百科全書』に見る世紀転換期の理論物理学
主な執筆者:ボルツマン、ローレンツ、ヴィーン
第2章:ゾンマーフェルト学派の初期
「理論物理の苗床」
X線
原子構造とスペクトル線
第3章:資産としての原子理論
第一次世界大戦の遺産
第4章:”新世界への出発”
ミュンヘン、ゲティンゲン、コペンハーゲン:ある科学革命の中心地
新たなエリート:ヴォルフガング・パウリ、ヴェルナー・ハイゼンベルク
理論物理学における世代交代
第5章:理論物理学の国際的普及
米国物理学の拡大
第6章:量子力学の応用
ゾンマーフェルトの金属電子論
複合科学の成立:量子科学、分子生物学、宇宙物理学
第7章:幸福な30年代?
亡命物理学者たち
第8章:1930年代における理論物理学の中心点の移動
固体理論の新たな中心地:MIT、プリンストン、ブリストル
核物理学の繁栄
第9章:「第三帝国」の物理学
「ドイツ的物理学」のゾンマーフェルト学派への敵対
第10章:物理学者たちの戦争
マイクロ波レーダー、マグネトロン、レーダー探知機、半導体電子工学の先駆
原子爆弾
第11章:結び
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