田口善弘『学び直し高校物理ー挫折者のための超入門ー』、講談社現代新書2738(2024-2)
は、好評のようで重版されました。
しかし、この第25章”この世の物質は「波」である!”にはトンデモナイ記述があります。以下にその一部を引用します。
「ド・ブロイ波」(物質波ともいう)の関係式はかなりぶっ飛んだものだ。
波長=プランク定数/運動量
何がどうぶっ飛んでいるのか。
実は、この式は、「ある運動量で飛んでいる粒子は、どんなものであっても、上の式で与えられる波長の波でもある」というトンデモない式なのである。
(途中略)
量子力学によれば、この世のものは全部波動だということになる。
波だから、波動編で学んだような、反射や偏光、屈折などの現象は一通り実現する。
「でも、物体が屈折したところなんて見たことない」と言うかもしれないが、
実は、そんなことはなく、普通毎日目にしている。
たとえば、力学編で登場した「斜方投射」。
これは屈折で理解できる。
屈折では波長が短いところから長いところに入ると、光が波長が短いほうに向かって曲がることを説明した。
また、波長が連続的に変わっていると光の軌跡が曲線を描くことを学んだ。
斜方投射では上に上がるほど速度が遅くなって波長が長くなるので(ド・ブロイの式)、斜方投射の軌跡は、屈折で理解できる。
僕らはこれを「重力が働いて曲がった」と思っているが、それは「錯覚」であり、
本当は「この世の物質はみなド・ブロイ波で表現される波なので波長が変わると屈折する」ということに過ぎない。
なんで毎日「屈折」を見ているのに僕らはそれが「屈折」だと気づかないのか、
というとド・ブロイ波の波長がとても短いからだ。
(引用終わり)
以上の説明の問題点を指摘します。
(問題点1)
もし重力が働かなかったら物体は曲がらずに直進するだけです。
屈折などしません!。
(問題点2)
もっと大きな問題点は、著者が ”物質波を実在するもの” と誤解している点です。
これは、著者の学歴を見ると驚くしかありません。
田口善弘中央大学教授の学歴:
東工大大学院理工学研究科理学専攻 博士後期課程終了、理学博士
因みに、次の教科書にあるように量子力学では”物質波は実在しない”と主張しています。
清水明『新版 量子論の基礎ーその本質のやさしい理解のためにー』、
新物理学ライブラリ、別巻2,サイエンス社(2006.9)、p.149
補足:古典波動との違い
波動関数が古典波動と同じ形になっていると言っても、音波のように直接測定できる波(実在の波)ではない。(引用終わり)
ブログ担当者の補足:
ド・ブロイの物質波はシュレーディンガーの波動方程式で表現されます。
このときの波動関数は複素数なので実在する波ではありません!!!
量子力学を勉強したことのある人なら誰でも知っていることなのです。
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