情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

測定器はシュレディンガー方程式に従わない 観測問題は擬似問題

2021-01-17 09:29:43 | 情報と物質の科学哲学
観測問題の混乱は、測定器の特異な性格を無視していることに起因します。

以下で、測定器に関する現象はシュレディンガー方程式に従わないことを証明します。
シュレーディンガー猫の生死の観測という問題は次のように簡略化できます。
猫の生死は、毒ガスの有無と対応しています。
そこで、猫の生死の観測を箱内部の毒ガス分子の有無の検出に置き換えます。

毒ガス分子無→猫は生きている
毒ガス分子有→猫は死んでいる

粒子情報の測定器は、4つの部分から構成されるものとします。
(1)捕獲器: 窓を一瞬開けて毒ガス分子を取り込みます。
        この瞬間に何個の毒ガス分子が捕獲器入るかは不明です。
        このときから粒子と測定器との相互作用が始まります。
(2)増幅器: 相互作用で生じる現象を電気信号として増幅します。
(3)比較器: 増幅信号と比較器のしきい値とを比較します。
        このときのしきい値は恣意的なものです。
(4)出力器: 信号がしきい値以上のとき毒ガス”有り”の情報を出力します。

分子の数は0個以上ですから、出力器における入出力関係は多対一になります。
これは、出力器における現象が不可逆過程であることを示します。
このときの不可逆性は確率とは無関係なので、絶対不可逆過程と名付けます。

不可逆過程は時間に関して非対称です。
一方、シュレーディンガー方程式は時間に関して対称です。
従って、比較器を含む測定器はシュレーディンガー方程式に従わないことが分かります。

ということは、毒ガス分子が測定器に入ってから測定値という情報が出力されるまでの過程をシュレーディンガー方程式で記述することは原理的に不可能であることを意味します。

言い換えると、シュレーディンガー方程式を用いた観測問題自体が無意味であり擬似問題であることを意味します。

更に言えば、測定器が出力する測定値という情報概念も物理学の対象には含まれません。
このことも観測問題が擬似問題であることを裏付けています。


物理学者は測定器の本質を誤解 「測定値=物理量」ではない

2021-01-16 09:55:59 | 情報と物質の科学哲学
物理学者は、測定器を普通の機械であると理解しています。
しかし、測定器には他の機械に見られない特異な性格があります。
測定器が測定値という情報を出力する機械だからです。

物理学者は、測定値は物理量の一種であると勘違いしているようです。
秤、物差し、時計などの目盛がそれぞれの物理量の大きさを表しているからです。
測定値に(グラム、センチ、秒などの)単位を付けて表すので、物理学者に「測定値=物理量」という固定観念を植え付けてしまったのです。
そのために測定値が情報概念の一種であることに気づかなかったのです。

測定器は、入力物理量と基準物理量との比を測定値として表示します。
比という概念は無次元量ですから物理量ではあり得ません。
従って、比を表す測定値は物理量ではなく情報概念の一種なのです。

物理学には情報概念がないので測定器に関する現象を物理学だけで説明することは原理的に不可能です。

測定は、測定値をカードに印字して出力した時点で終了します。
測定値をいつ誰が読むのかは測定とは無関係です。
従って、観測問題において観測者が猫の入った箱の中を覗いた見た瞬間に波束の収縮が起こるという主張は無意味です。


物理法則の予測能力には限界がある

2021-01-11 14:37:47 | 物理学
物理法則は、その予測能力があるために絶対の信頼性を得ています。

未知の天体、未知の素粒子などがこの予測能力により発見されました。
ブラックホールも一般相対論により予測され実証されています。

この予測能力が発揮されるのは初期条件が確定しているときに限ります。

いま、箱の中に塩基を構成する原子が多数入っているとします。
物理法則は、この初期条件のもとで塩基が合成されることを予測できるでしょうか。

それは不可能です。
何故なら、塩基が合成されるためには実に多くの条件が必要だからです。
物理法則が言えるのはせいぜい偶然に塩基が出来る確率はゼロではないということでしょう。

しかし、確率がゼロでないとしても箱の中にある原子集団の初期状態から物理法則を用いて塩基の合成を導くことは出来ません。
何故なら、初期状態に関する情報は無限に多いからです。

同様に、物理法則は遺伝子を予測することもできません。

予測能力のある物理法則でも偶然という魔法の力に頼らざるを得ないことは無数にあります。
この偶然という概念に頼った説明は、果たして説明といえるのでしょうか。


物理的偶然という魔法の力

2021-01-09 10:44:55 | 物理学
偶然という概念は物理学にとって不可欠です。
量子力学や素粒子論において偶然という概念は本質的な役割を果たします。
言うまでもなく偶然は確率概念と等価です。

物理学には確率的にゼロでない現象は禁止されないという指導原理があります。
偶然という概念が魔法の力を発揮しているのです。

並行宇宙論や多元宇宙論はこの原理を用いて奇妙な宇宙像を数多く提唱しています。

遺伝子や生命も偶然に誕生したというのです。

荒唐無稽な並行宇宙論

2021-01-03 16:15:30 | 物理学
別冊日経サイエンス、No.186、『実在とは何か』(2012)にM.テグマーク、”並行宇宙は実在する”という記事があります。

この中で、”地球のほかにも生物がいる惑星が無数といってよいほどあり、その中には姿も名前もあなたとそっくりな人が住んでいる惑星がたくさんある。”としています。

しかし、どの宇宙論も一般相対性理論、量子力学やひも理論などに基づいています。
これらの理論は物理量に関連する現象を扱うものです。
物理学にある情報に関する概念はエントロピーだけです。

測定器、通信、コンピューター、人工知能、脳神経回路、生物などにおける情報概念は物理学の対象ではありません。
これらの情報概念にはシステム依存性があるので非客観的なものになり物理学では扱えないのです。

物理法則は現象がおきる必要条件を示すだけであり、十分条件を示すことはできません。

物理法則の説明対象は自然現象だけです。
並行宇宙論やマルチバース宇宙論なども自然現象の範囲であれば物理法則で予測や説明が可能です。

しかし、生物は無機質な自然現象ではないので物理法則だけで説明することは不可能です。
生物が物理法則に従うことは必要条件ですが、物理法則は生物を説明できる十分条件ではありません。

従って、物理主義に基づくテグマークの主張はナンセンス以外の何物でもありません。

そもそも、物理学には生命の定義がないのです。
まして、物理学には人間の定義がありません。

それにも拘わらず”同じ人間が他の宇宙にいる”などと主張することは論理的に矛盾しているのです。
最先端の宇宙物理学者のこのような主張には開いた口が塞がりません。