いつか英国日記

英国を中心とした靴、鞄、時計、その他ファッションに関するブログ

Hartmannのレザーラゲッジ

2011-06-12 05:05:02 | 
先日、ハートマンの大型のラゲッジを
オークションで入手しました。
恐らく1970年代の物。

ハートマン、、、
私には特別な思いがこの鞄にはあります。

既にお気づきの方も多いと思いますが
そう、あの落合正勝氏が愛してやまない鞄でした。

いつかは私も同じハートマンを
という思いが募り
遂に先日、扱い店である
日本橋の三越に問い合わせたところ
既に取り扱いを止め
今は修理のみを受付ているとの話でした。

であれば本国アメリカから
直接輸入しようと思い
本国のサイトを確認しましたが
既にこのタイプの鞄は廃盤。

万事休す、、、

いや、オークションは?

と思い早速確認したところ
先日偶然にもタイミングよく
手に入れる事が出来た次第です。

落合氏曰く
「長旅に出るとき、
 今でも数ある中からハートマンを選択するのは、
 質実剛健な外見に付加された、
 モダンなヨーロピアンテイストの双方が
 気に入っているためである」
 と「男の服 こだわりの流儀」で
 書かれています。

又、「私の愛するモノ、こだわるモノ」では
こんな事も言われています。

鞄が増えすぎた以外に
「鞄の収集をやめた理由はもうひとつある。
 これぞトランクという理想的な鞄に出合ったためだ。
 ハートマンである。」

いったいどんな鞄なのか、、、

そして先日、無事、鞄が
拙宅に届けられました。

まずはその大きさに驚き



そしてその革の美しさに感動しました。



大きさはもっとも大きいサイズと思われる
640mm×500mm×210mm
写真の万双のダレスと比較すると
その大きさがわかると思います。

そして重さは
鞄単体で5.7kg。
海外旅行の際は荷物のエクストラチャージが
かかりそうですが
ちゃんとした革の鞄はどうしても重くなるものです。
逆に革の鞄で軽ければ
どこかで効率化という名の下に
手を抜いている可能性を疑う必要があります。

さて、Hartmann
創業は1877年、米ミルウォーキーで
旅行用品メーカーとしてスタートしました。

代表的な取扱商品でもある
プルマン型のトランク類は
ハートマン社の近くに自生していた
靭やかで軽いBASS WOOD(しなの木)を
フレームとして使用している為
大きさの割には軽量です。

そして、この素晴らしく美しい革ですが
ベルティングレザーと言います。
ベルティングレザーとはステアハイド
(2年以上経過した去勢された成牛の皮)を
植物タンニンで鞣し
オイルで仕上げた、ヌメ革の一種で
工業用のベルトなどに使われる、とても丈夫な革です。

英国のブライドルレザーなどは
独特の趣とある意味デリケートなところがありますが
ベルティングレザーは正に質実剛健
肌触りも最初は素っ気なく
何も気にせずガンガン使える
ある意味アメリカらしい合理的な革だと思います。

では革の風合いがないかというと
そういう訳でもなく
使い込んでいくうちに
何とも言えない、飴色に変化していきます。

ベルティングレザーは元々オイルを含んでいるので
皮革用のメンテナンス用品も基本的には不要です。
寧ろ、使わない方が良いとも言われています。

はじめ、この鞄が到着した時
かなり斑があったので
シール類も全て剥がし
ぬるま湯で丁寧に全体を水拭きをしたところ
大分綺麗になりました。

ベルティングレザーはそういった革です。

さて、少し冷静になって
鞄を観察する事にしましょう。
まずは鞄の大きなポイントのひとつ。
金具がしっかりしているか
そして勿論正常に作動するか?

このハートマンは
中央に「hartmann luggage」のロゴ入りのナンバー錠



そして両サイドにロック式の金具がついています。



両方とも新品のように
びくともしません。
全く問題はないようです。

そしてトランクとしての機能
例えばスーツがちゃんと仕舞えるか?

このトランク
ガーメントケースのようにちゃんとフックと
専用ハンガーそして仕切り板がついています。



とてもしっかりした丁寧な作りです。
そしてハンガーにスーツをかけ収納すると
三つ折りではなく
ちゃんと二つ折りでスーツが収納出来ます。
3着くらいは大丈夫な厚みがあります。




仕切り板をちゃんとセットすれば
皺も最小限で済みそうです。



そしてバッグの内側は
前のオーナーが丁寧に扱ったらしく
とても奇麗です。
そして機能的にレイアウトされています。



この鞄でヨーロッパの長い旅に出る。
革の鞄があるだけで
旅の雰囲気が一変しそうです。
色々な夢や期待
そして思い出を
詰め込む事が出来そうな鞄です。

そして革の一番良いところは
使い込む程にエイジングされ
より素敵な鞄になっていくことです。
革好きが革の鞄に拘る
ある意味一番の理由です。

さて、この鞄。
ウオークインクローゼットに仕舞おうと
思いましたが
暫くは自分のワークルームに
インテリアとして
置いておいても良いかなと思いました。





そして最後に
「男の服 こだわりの流儀」ではこんな事も



「他人の歴史が刻まれた
アンティークは論外である。
たとえ、そのバッグがどれほど
「一モノ」の条件をクリアしていようと、
それは自分の「味」ではなく、
あくまで借り物の他人の「味」であり、
こだわりとはほど遠い。」


痛烈なパンチです。


落合先生へ

素晴らしい出会いを作ってくれた
貴方を忘れません。

そして、貴方の一ファンが
貴方への憧れから
この鞄を使うことを
どうかお許し下さい、、、








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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ハートマン!! (hiko)
2011-06-12 21:45:17
ワタシの地元には三越の『出張所』みたいな小規模店舗がありまして、
ムカシそこでお取り寄せしましたねぇ・・・
まだトロリーケースが一般的ではなかった頃、レザーとツイードのコンビのヤツを。

旅行用の大柄のカバンは、ナゼかアメリカブランドの多いワタシ。
アメリカ圏への旅行のときはそんなカバンのおかげでか、
とてもアメリカ人には親切にしてもらったものです。
返信する
hikoさんも (らみい)
2011-06-13 12:39:39
hikoさん そうでしたか~

ハートマンお持ちでしたか。
今回、この鞄を入手して
アメリカ鞄を見直しました。

ハートマンとても機能的で
鞄としての色気もあり
特に大きめの鞄の
オーバーナイトとか
今回のトランクとか
とても良いと思いました。

正に隠れた逸品だと思います。

残念なのは
現在の物より昔の物の方が
断然に良いことです。

デッドストックとか
気長に探してみます。
返信する
心配です。 (deibu95)
2011-06-14 22:17:13
こんばんは、お久しぶりです。
心配ですって、何が?
重さですよ。5.7kgといっても空ですから。(しゃれではありませ~ん!)
洋服、シャツ、靴を詰め込むととオーバー20kgは間違いないですよ。これ用のキャリーを持たないと、素手での持ち運びは、地獄になりますよ!(笑)
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大丈夫です (らみい)
2011-06-14 23:36:13
deibu95さん
お久しぶりですね~
お元気そうで何よりです。

さて、この鞄、まともに持つと
腰を痛めそうなので
専用キャリー&タクシーを利用することに
なると思います。

まあ、しかし実際、次はいつ
海外に行くかは
はっきりしていないのですが、、、

部屋のインテリアとしても
充分いけてますよ~。

返信する
Unknown (いけぼう)
2011-06-15 19:39:28
質実剛健な風合いがいいですよね。
最近店頭に並んでいるかばんは、必要以上に軽く柔らかな素材のものが多く、そういった軟弱なものがもてはやされていますから、リアルな物をそばにおいておきたくなります。

同じアメリカ鞄で、昔のコーチもすばらしいですね。最近のコーチは見る影もありませんが。
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古き良き時代の旅… (かいしん)
2011-06-16 15:11:45
 スーツを身に纏い旅へ出るには、やはりこのような鞄が相応しいでしょう。古き良き時代の旅が目に浮かぶようです。入手の経緯など、記事を拝見しておりますと、らみいさんの、この鞄への思い入れが伝わって参ります。そして、この鞄のことはまったく存じませんでしたが、想像が膨らみ、興味がわいて参ります。

 鞄が重くとも、上流階級に属する紳士ならば気にする必要もないのでしょう。自分で荷物を持つことはなく、重い鞄は従者が運ぶでしょうから。しかし、それは紳士の一面にしか過ぎません。もし必要となれば、きっと笑顔で軽々と運ぶことでしょう…。

 ハートマンの旅行用鞄が置かれた書斎、「いつか英国日記」は、このお部屋から生み出されているのでしょうか。らみいさんは、良い鞄だけではなく、良い書斎もお持ちでいらっしゃいます。

 ところで、箱型旅行用鞄の呼び名ですが、トランク、ラゲッジ、スーツケースなど…境界線は一体どこにあるのでしょうか。
返信する
革の鞄 (らみい)
2011-06-16 23:01:11
いけぼうさん
質実剛健、、、
以前はこれに該当するモノが
沢山あった気がしますが
今はこの言葉自体、あまり使う事が
なくなりました。

鞄は革製に限ると思いますが
今はナイロンの物が主力で
軽いモノが、もてはやされます。
トランクしかり、革のラゲッジやガーメントを至る所で探しましたが、皆無にちかいです。
その代わり、コロコロの付いた
合成樹脂製のスーツケースばかりに
なりました。

確かに現実的には
最も便利かもしれませんが
スーツやスポーツコートにトラウザースという装いの時には
何かいまひとつ、しっくりこない気がします。

ましてや、冬に上質のアルスターコートやカバートコートでは
やはり合成樹脂のトランクでは物足りないですね~。

重くても紳士は一つは
革のラゲッジを持っておくべきだと思います。
決して、無駄にならないと思います。

そして、出来れば自分で
革の鞄をキレイに
エイジングさせたいですね。
返信する
ラゲッジ (らみい)
2011-06-17 00:32:02
かいしんさん いつもコメントありがとうございます。

さて、革の鞄については既に何度も述べた通り
紳士の鞄は革であるべきと思いますし
概して、革の上質な鞄は重いのは間違いありません。

さて、ラゲッジとトランクと、スーツケースの違いですが
これは私の感覚的なものとして
お聞き願えれば幸いです。

まずはスーツケースとトランクでは
明らかにフォルムが違います。
革の鞄を前提に話します。
(合成樹脂のスーツケースは眼中にありません)
スーツケースは明らかにトランクと比べると
固い構造で出来ていて
そして、持ち手も革巻きでも
ソフトな感じではなくハードな仕様で
作られているイメージがあります。
わかりやすく言うとゼロハリのあの形が
スーツケースのイメージです。

それに対して、トランクは
古のアメリカなどで電車が主な旅行手段だった時の
プルマン型の鞄が所謂トランクだと思います。
今回、このブログで取り上げているのも
典型的なトランクですね。

スーツケースに比べると
厚みがあり、いかにも箱というイメージの
鞄です。

そしてラゲッジとは
スーツケースもトランクも内包した
大きめの鞄の総体的な
呼び名だと思います。

あくまで私論ですので
ご参考程度に。

ところで、もしインテリアにも興味がおありでしたら
「いつかタリアセン日記」も
覗いてみて下さい。
ワークルーム、寝室、リビングの写真が
掲載されています。

では、又。

返信する
ルイ・ヴィトンのたんす(?) (かいしん)
2011-06-18 18:02:49
 トランクとスーツケースの違いはどちらかと言えば感覚的なもので、明確な基準は存在しないと考えれば宜しいのでしょうか。ご教示いただきまして、ありがとうございます。参考にさせていただきます。

 今もあるのか分かりませんが、ルイ・ヴィトンのショーウィンドーに飾られていた、たんすのようなトランク(と呼ぶのでしょう)は、少年時代に興味を持ってから、ずっと心に残っているもののひとつです。

 建物の内部だけではなく外部も構造も興味ありますので、「いつかタリアセン日記」も拝見させていただきます。
返信する
LOUIS VUITTON (らみい)
2011-06-18 23:57:25
かいしんさん
トランクとスーツケース
明らかに形と雰囲気は違うように
感じられます。
そのひとつには縦横比があります。
縦横比が1:1.35以上あると
トランクっぽくなりますね。
それ以下だとブリーフケースや
スーツケースっぽくなります。
勿論、例外はありますが、、、

さて、LOUIS VUITTONですが
イギリスのアンティークなど
今もLOUIS VUITTONのトランクケースが
売られていますね。
現行のカタログに載っていませんが。

LOUIS VUITTONは恐らく上顧客には
今もビスポーク的な事を
対応していると思いますので
ご興味があれば、交渉してみては
いかがでしょうか?

そういった意味では
ゴヤールとかも気になります。
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