遂にブラックウオッチ計画始動です。
ブラックウオッチ、ロイヤル・ハイランド連隊が
身につけていた事から「黒い監視兵」を語源とする
由緒ある柄です。
とても好きな柄のひとつで
いつかはこの柄の生地でジャケットを作ってみたいと
思っていました。
ブラックウオッチというと
IVYのイメージを思い描く方も多いと思いますが
IVY世代とは少しずれている私は
この柄でエレガントな
スーツにしても良いような
雰囲気のジャケットを作ってみたいと
かねてから思っていました。
そして、いざ探してみると
納得のいくエレガントな
ブラックウオッチの生地が思いのほか
見つからないのに驚きました。
もっとも代表的な柄のひとつで
いくらでもあると思っていたのですが。
そして、ある日何気なく
いつもお世話になっている
銀座のパーソナルテーラーへ行ったときの事。
小宇宙状態又はカオス状態の
アトリエの地下で偶然ブラックウオッチを見つけました。
どうもヴィンテージのようです。
タグにはTaylor&Lodgeのタグが。
目付は350g/m前後でしょうか。
当然売約済みかと思っていたところ
テーラーのオーナーH氏こと総帥は
「あっ、そういえばジャケットとウェストコート分は
あったんだな~」と。
まあ~、早く言って下さい。
随分探しました。
しかし、これもある意味素敵な出会いですね。
ということでブラックウオッチ計画がいきなり始動です。
この生地を使い
遂にビスポークする事を決心しました。
もちろん初ビスポークです。
今まで、バタクハウスカットやフランコプリンツィバリで
色々スーツをオーダーしてきました。
限りなくビスポークに近い作りの物もありますが
デザインをゼロから考える本当の意味での
ビスポークは今回が初めてです。
ブラックウオッチ
スーツを着こなす自信はないので
ジャケット+ウエストコートをブラックウオッチで
トラウザースは他の生地とすることにしました。
丁度ブラックウオッチ生地も
ジャケットとウェストコート分しかないので
丁度良かったです。
デザインはなるべくエレガントなスーツに近いラインで。
ということで
提案された内容が冒頭の写真の
スケッチです。
ジャケットは2つボタン
袖は古のターンナップ仕様です。
そして特徴的なのはウエストコート。
何とダブルの8ボタンです。
もうこうなると
総帥におまかせするしかありません。
時代はエドワーディアン、ベルエポック的な世界に突入です。
そしてトラウザースはホワイトフラネンルを勧められましたが
この組み合わせは私にはまだハードルが高すぎます。
アトリエで生地を色々見ていくと
何と上品なハウンドトゥースが。
タグを見ればFOXの文字が。
しかもかなりの打ち込みです。
もうこれしかないでしょう。
ということで下の写真のような組み合わせに。
ジャケット+トラウザース
ウェストコートは単品使いも可能だと思います。
この組み合わせですべて着用し
これに今ビスポークしている帽子を組み合わせると
完全にコスプレの世界に突入ですね~。
(帽子は又、改めてご紹介したいと思います。)
そしてこちらのテーラーの凄いところは
生地は勿論の事
一つ一つのマテリアルに徹底的に拘っているところです。
そのひとつがボタンです。
これはイギリスのバルカナイト製のボタン。
かなりのアンティークのボタンです。
バルカナイトとはイギリス流の言い方で
所謂、エボナイト又は硬質ゴムのことです。
これも普通のテーラーでは
中々手に入らないと思います。
ブラックウオッチというとIVYでは
ゴールドのメタルボタンと相場が決まっていますが
ブラックウオッチに黒のボタンは
とてもエレガントだと思います。
そしてウエストコートのボタン。
これが凄いです。
イギリスのアンティークボタンの取引は
1個単位で行われていますが
正にそういった世界で入手した物。
凄いですね~。
いきなりディープな世界に足を踏み入れてしまいました。
こちらのテーラーとは
お付き合いを初めて丁度1年。
ビスポークの世界は
モデリストの方がカスタマーが
どんな仕事をしているのか
そして趣味や嗜好、性格も含めたキャラクターを
充分理解して本当にカスタマーに合う
スタイルが作れるのだと思います。
1年間で充分に語り合い、一緒に食事をし酒を酌み交わし
私の人となりを充分理解していただけたと思います。
製作過程については又
順次ご紹介したいと思います。