西武池袋線 江古田駅 <o:p></o:p>
踏切前 <o:p></o:p>
本屋の2階の<o:p></o:p>
喫茶店<o:p></o:p>
学生時代よく下の店で本を物色し
上の喫茶店でそれを読みながらお茶を飲んだ。<o:p></o:p>
飲むのはいつも「紅茶セット」<o:p></o:p>
「紅茶セット」には砂糖、ミルク、レモン、ブランデーが付いてくる。<o:p></o:p>
(当時は未成年だったと思うがこのセットからブランデーが除かれた事はなかった)<o:p></o:p>
私はいつも1杯の砂糖にレモンをちょっとたらし
たっぷりのブランデーを加えて飲む。<o:p></o:p>
それは日曜日の昼下がりだったと思う。
西日が差す窓際の
踏切が見下ろせるいつもの席
心地よい暖かさ、若干のブランデーの酔い、
微睡みながら本を読んでいた。<o:p></o:p>
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「カンカンカン.....」
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江古田は急行電車の待ち合わせ駅。
そのため一度降りた遮断機はなかなか上がらない。<o:p></o:p>
その日も大勢の人が線路を挟んで待っていた。<o:p></o:p>
ふと線路の向こう側に目をやると
見たこともない美しい女性がそこにいた。
「あんなに素敵な人は見たことがない!」
慌ててレジで会計を済ませ、階下へ降り
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急いで踏切の前へ。
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その女性は向こう側に立っていた。<o:p></o:p>
電車はまだ来ない。<o:p></o:p>
遮断機は下りたまま、成り続ける踏切警報機。
「いつまで経っても開かない。 いつもこれだ。」<o:p></o:p>
「いっそ、思い切って突破しようか!」
「いや、いや」<o:p></o:p>
「遮断機が上がれば必ず会えるさ」<o:p></o:p>
ゴッゥーーー
風圧とともに急行列車が通過する。<o:p></o:p>
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もうすぐ会える
この8両編成の急行列車が通り過ぎれば。<o:p></o:p>
一瞬の静寂の後
遮断機は上がり始めた。<o:p></o:p>
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しかし、そこに
彼女はいない。<o:p></o:p>
さっきまで<o:p></o:p>
急行列車が通過するまでは<o:p></o:p>
そこにいたはずなのに。<o:p></o:p>
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電車が通り過ぎる僅かな間に
向こう側に何か用が出来て、行ってしまったのか?
待ちきれずに痺れをきらし、あきらめてどこかへ行ったのか?
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どちらにしてもさっきまで向こう側で踏切を待っていたはずの彼女は
いなくなってしまった。<o:p></o:p>
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危険を冒し踏切を突破しなかった私に<o:p></o:p>
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愛想を尽かしたかのように。<o:p></o:p>