
コラム(277):自民党 危機の構造
当ブログ『岐路に立つ安倍政権と自民党』で指摘した自民党の危機が早くも現実のものになってきました。沖縄県知事選敗北と内閣改造・役員人事が自民党の抱えている問題点を浮き彫りにしています。
沖縄知事選では、沖縄県民と自民党の間で意識の大きな乖離が見受けられ、新内閣発表では総裁選の論功行賞を求める党内の声が一番肝心な改憲をあとまわしにしています。
両者に共通するのは党内に蔓延する奢りと私的利益追求体質です。それが結果的に安倍首相の改憲、改革の思いを妨げる要因になっています。
沖縄県民の心に寄り添わなかった自民党
沖縄県知事選挙が敗北した理由は二つあります。
沖縄の抱える基地問題を金で解決しようとした姿勢とネットを中心とした自民党の応援団の誹謗中傷が県民の反発を招いてしまったことによるものです。
県民のうち米軍基地に反対している人は30%に過ぎず、残りは容認している人たちです。しかも、県民は、基地問題が外交や国政レベルの問題で、県政とは無関係と承知しているのが実情です。それにも関わらす、反体制左翼勢力は基地問題を利用し、地域ナショナリズムを煽り、あたかも反基地が沖縄県民の総意であり世論であるかのように見せかけていました。
本来、基地問題は真正面から正当な議論を展開すべきものが、自民党は金銭によって県民を懐柔しようとしてきました。しかし、この手法は県民の心に怒りをもたらしただけでした。
沖縄は江戸時代には薩摩藩からの搾取にあい、大東亜戦争末期には本土防衛のために多くの犠牲を払いました。
こうした経緯からも、お金で償ってもらう以前に沖縄県民の心に寄り添い、根底にある心の傷を癒してほしいという切実な感情を抱いているのです。
その心情を理解することなく、金をばらくだけで県民の心をつかめると思っている自民党が沖縄知事選で敗北したのは当然のことだと言えます。
ネット応援団を抱えた自民党の危機
自民党は配下の自民党ネットサポーターズクラブを使い多くのデマ情報を発信させていました。それが自民党の信用を貶め、選挙惨敗の大きな要因となっています。
実は、ネットグループが特定の政党を応援すると、その政党は惨敗します。
かつて、日本共産党は2015年にSEALDsを組織化してネットを活用して内外で騒ぎを起し、その結果2017年の総選挙では大惨敗しました。
また、2014年の総選挙ではネトウヨと呼ばれる人たちが同じようにネットを駆使して次世代の党を応援しましたが、それが逆効果となり同党を消滅に導きました。実はその彼らが行き場を失い、自民党の応援団になっているのです。誹謗中傷による意図的な世論操作の手法を国民は簡単に見抜いているのです。
予想外のスキャンダルに見舞われそうな改造内閣
沖縄県知事選敗北の二日後、内閣改造と党役員人事が発表されました。一部の評論家は「派閥均衡型で安定感もある、うまい人事をやった」と評価していますが、入閣した人物をよく観察してみると、安倍首相の希求する改憲の道筋とは真逆の方向に進みそうです。
はっきり申し上げると、留任の大臣では麻生太郎、河野太郎、菅義偉氏と、今回入閣する石田真敏、片山さつき氏ぐらいが持ちこたえ、かろうじて柴山昌彦、𠮷川貴盛両氏が残りそうです。
留任組では、安っぽい功名心で手柄を上げることに腐心する者、政党の利益を守るだけの無能な者、国民の生活よりも大企業の利益のために働こうとする者が多く、結果的に安倍首相の足を引張る存在になりそうです。
しかも、防衛利権やIR利権の両方にからむ新任の大臣もいて、誰も予想もしないスキャンダルが噴出してくる可能性が高く、改憲にシフトするどころではなさそうです。
自民党は改憲勢力たり得るのか
党役員の四役中、まともなのは政調会長の岸田文雄、選対委員長の甘利明の両氏だけであることは誰の目にも明らかです。とくに問題なのは党四役を代行するクラスの中に安倍首相をも脅迫して党運営をも私物化試みる危険人物が存在していることです。彼は、裏で売文業の評論家やネットサポーター幹部を金で操っている張本人でもあります。しかも、彼には肝心の改憲には最初から興味がありません。
さらに注目すべきは党の憲法改正推進本部長に憲法問題に疎い人物が登用されたことです。安倍首相へのゴマすりだけの人物で何の見識もありません。この人には改憲発議までもっていける能力はありません。したがって改憲を安倍政権下で実現する可能性は皆無です。
自民党の危機が日本の本質的な危機であることは確かです。安倍首相の国際戦略は、アメリカのトランプ大統領との連携で中国の覇権主義を封じ込めていますが、国内戦略は味方であるはずの自民党が足を引張っていると言わざるを得ません。
現状のままで推移すれば、来年の参議院選挙では改憲どころか67議席の確保は難しく、参議院での改憲発議が困難になります。
自民党が真の改憲政党であり憲法改正を実現するつもりであれば、姑息な手段と決別し、今こそ党内浄化と改革を図るべきです。
お問い合わせ先 akaminekaz@gmail.com【コピペしてください】
FBは https://www.facebook.com/akaminekaz