コラム(387): 避けられない文明の衝突
前回のブログで、昨今の国際情勢は、「西欧文明 対 非西欧文明」の衝突という次元で見るべきだと論じましたが、今回はその続きです。
文明の衝突は破壊をもたらす
文明の衝突は、戦争あるいは極小であったとしても大規模な破壊を伴います。文化的な遺産に対してでさえ他の文明の存在を許しません。たとえばイスラム原理主義者は偶像崇拝禁止の教えを盾に仏教遺跡を破壊します。寛容なイスラム教を標榜する割には他の宗教文化には非寛容です 。寛容とはその文明文化内のことに対してだけで、外なる世界には寛容が適用されないように思います。
このことは、いま起きている「西欧文明 対 非西欧文明の衝突」が確実に戦いをもたらすことを意味しています。これを避けることは現状の思想の力では不可能に近く、せいぜい西欧文明側の政治指導者が「力を背景とした一方的な現状変更の試みに反対する」と言うにとどまり、経済的な圧力で戦いを抑止させようとするにとどまりますが、非西欧文明諸国にはあまり効果がないように感じます。
なぜなら、非西欧文明諸国にとっての言い分が、「西欧文明の国が過去にやってきたことと同じことをやって何が悪いのか」という論理で対抗するだけでなく、経済制裁なるものが歴史的に効果があった試しはないからです。実際、アメリカから経済制裁を加えられた国々で戦火を交えずアメリカの軍門に下った国は一つもありません。
文明の衝突の勝者は
では、今回の、有史以来初めての地球規模で起きている文明の衝突の勝者はどちらなのでしょうか。
結論から先に言えばどちらも勝者にはなりえないと思います。互いを破壊しあうことで両者ともに次の時代にはふさわしいものでないと判断されるからです。
例えば、非西欧文明が勝った場合、西欧文明諸国で「自由」のありがたさを知っている人びとに非西欧型の思想を受け入れることができません。実際、中国の息苦しさを日本人が受け入れられるはずはないことからもお分かりいただけると思います。
また、逆に西欧文明が勝った場合、非西欧文明が西欧文明の思想に簡単になじむことは不可能です。現に、イスラム社会では西欧文明と1000年にわたって接してきましたが受け入れることよりも敵対することの方が多かった事実がそのことを物語っています。
最近でも、ソ連崩壊のロシアで「ロシア人の半数以上がソ連崩壊を残念に思っている」との調査報告が話題になりました。現在のロシアより、昔のソ連の方が「社会的な保護、強い国家、公平さ」があったと感じているようで、西欧型社会を目指してもなかなかうまくいかなかったようです。昔からの価値観を捨てきれない限り、新しい価値観は受け入れられないのです。
いま、どういう考え方必要なのか
地球規模での文明の衝突という人類史上の最大の危機に対して、いま必要なのは、これを生産的なものに変える考え方です。とくに、それぞれの文明の衝突の根底には、-部族・宗教・伝統・人種・イデオロギーなどがありますので、それらを超え、融合させていく考え方、あるいは社会的な構造変革が求められていると思います。
ただ、それらは思想やイデオオロギー、政治的な主張ではありません。思想とかイデオロギーなどを基準にすれば個人の数ほど正義が存在するため、多数で集約しても少数者は必ず反発します。しかも狂信する少数者ほど激しい反発行動を起こします。人びとに思想や信念がある限り、信念の対立は避けられないのです。
それよりも、有史以来、人類の悩みや争いごとの殆どが経済的な利益に基づいていることを喝破すれば、むしろ経済的利益を調整してみんながwin-winになることで、思想とか信念とは無関係に対立を収めることができると思うのです。
経済的利益の調整の第一は量を増やすことです。第二は量を増して後、みんなで分かち合うことです。
これまでの人間間、国家間の争いは限られたものを収奪することによって生じているという事実に気が付けば、量が争いの根本問題を解決するということがわかります。これは、食料でも品物でも量を大量に生産できる現代にあって初めて可能になりました。
そして、分かち合えば必ずみんなに行きわたります。「奪い合えば足りないが、分かち合えば余る」という有名な格言がありますが、この発想が、かつての資本主義や共産主義の対立、現在の富の独占化をはかる金融資本主義の考え方が過去の遺物として廃棄できるようになります。
対立はコントロールできる
これを政治システムに取り込めば、国内政治の運用でも国際政治の運用でも可能となります。
幸いなことにその先行モデルは存在します。それはアメリカ合衆国の建国時の手法にありました。現状のアメリカは建国の理念から大きくかけ離れていますので信じがたいかもしれませんが、建国時、それぞれ独立した州(事実上の国家)を合衆国にまとめあげたのは、共通の経済的利益を認識させることでした。以降、アメリカは政治の問題を経済的利益や経済的問題に転換して国家としての体裁を整えました。これは、いわば実験済みの最良の方法と言えます。
もう一つが、とりわけGAFAMと呼ばれるIT社会をけん引するグローバル企業群です。現段階では各社ともに自社の利益追求に必死ですが、社会的機関にイノベーションできた時点で新しい形での国際政府機関になる可能性を秘めています。
結局、現状の経済という考え方に新しい価値観を吹き込めば、何もかもが変わるということです。
要は、手っ取り早く量を増やして、みんなで分かち合って豊かになっていけば、無理に宗教や思想をいじることなく、また奪い合いや戦争をすることなく人類の諸問題を解決するのではないかと思います。
人間の悩みの大半は経済問題であるという厳然たる事実を認識することができれば、世界の平和と人びとの安心感は意外と簡単にコントロールできるのではないかと思います。発想の転換がまさに必要だと思います。
お問い合わせ先 akaminekaz@gmail.com【コピペしてください】
FBは https://www.facebook.com/akaminekaz