赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

いま世界で何が起きているのか コラム(385)

2022-02-03 14:42:37 | 政治見解


コラム(385): いま世界で何が起きているのか


昨今、国際間の緊張がとみに高まっています。それにもにもかかわらず、国会でも、メディア報道でも新型コロナウイルス対策ばかりに目が向いているのはぜなのでしょうか。

わが国の周辺では、北朝鮮が今年の1月に入ってから7回ものミサイル発射を行っています。その真相はわかっていません。また、覇権主義中国は現段階では国威発揚目的の冬季五輪に夢中になっていますが、その裏で民間フェリーの軍用改装や海軍の大増強を行い、台湾や尖閣・沖縄簒奪に向けて欲望をあらわにしています。

一方、中東に目を転ずるとイランとアメリカの確執が気がかりです。核合意をめぐって、制裁の解除が先決とするイランと、核合意の順守を要求する米国との隔たりは大きく進展は見られていません。この間、イランは中国からエネルギー、通信、交通などの分野に総額4000億ドル(約44兆円)の投資を引き出しただけでなく、ロシアと米欧との対決を確認しあって100億ドルに上る兵器購入を合意した模様です。

また、ヨーロッパではウクライナ情勢をめぐって暗雲が漂っています。1月23日には、米政府がウクライナの米大使館職員の家族に国外退避を命じ、さらに、ウクライナにいる米国民に出国を検討するよう強く求めています。2月2日にはバイデン大統領が米軍を東欧に3000人規模派遣する命令を出し、NATO加盟国間も緊張に包まれていますが足並みはそろっていません。ロシアとの天然ガス取引が影響しているからです。


西欧秩序と非西欧世界

メディアではこれらの事象を個別に報道するため、同時多発的にいま世界で何が起きているのかということがわかりません。また、世界情勢を把握していたとしても、これらの問題は政治的、あるいは軍事的な問題と見て、その奥にある問題の本質を見逃している論評が多く見られます。

そのため、いつもと同じ「戦争反対」を唱えるだけで、この重大問題が日本人の生き死にの問題に直結するということをも見過ごさせてしまい、国民全体が傍観者になってしまいました。

いま世界で起きている問題の本質は、西欧世界が支配してきた国際秩序に対して非西欧世界が反乱を起こしているという事実です。

日本は西欧秩序に組み込まれているため、中国、ロシア、北朝鮮、イラン、さらにはイスラム教国家の考えがなかなか理解できないのですが、彼らの立場に立てば、これまで世界を支配してきた西欧秩序こそが彼らを苦しめてきた元凶ともとらえることができると思います。

いまそれらの国家群が連動して西欧秩序に反抗しており、政治的軍事的にアメリカと対峙しているように見えても、その奥では西欧文明と今まで抑圧されてきたそれぞれの文明が衝突していると見ることができます。


ウエストファリア体制が西欧秩序の基礎

もともと現在の国際秩序に関する考え方は1648年のウエストファリア体制に由来します。今日の主権国家【※1】という概念、国際法の原則などはこの時代に生み出されたものです。
【※1】主権国家:国家権力が最高の力として排他的な統治を行い、かつ対外的には外国の支配に服することのない独立性を持った国家。主権国家内部においては、国家主権の及ぶ範囲の国民と領土が次第に明確にされる。

現在でもこの原則に則って国際間での国家承認が行われていますので、国家権力の上に部族や宗教や存在するアラブの国々やイスラム教国などであっても主権国家の体裁を整えざるをえませんでした。

その外にも、ツァーリズム(専制君主支配体制)をめざすプーチン氏のロシア、中華帝国【※2】復活を目論む習近平氏の中国、金正恩氏の北朝鮮などの専制国家や、ミャンマーなどの軍政の国家群なども存在し、西欧型民主主義国家とは価値観がまるで違う国が多数あります。
【※2】中華帝国:中国の歴史上において、統一王朝である秦・漢・晋・隋・唐・宋・元・明・清など、漢民族居住地域を超えた領域を支配し、周辺諸国に中華思想の影響を及ぼした「帝国」的な統一王朝を指す言葉。現代中国も例外ではない。

いま、これらの国々が無意識に連動して西欧秩序、あるいは文明観に挑戦・反抗していると見るのが正解のようで、いわば西欧文明対非西欧文明の衝突が起きていると見るべきだと思います。

しかも、どこかで戦端が開かれれば、それがたとえ侵略戦争であったとしても、どの国も祖国防衛のための戦争と称するでしょう。

(続きは次号で)



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