秋期特別展『樂と永楽そして仁清 京の陶家 「侘と雅」の系譜』 楽美術館 12月23日(金・祝)まで
京都へ旅立つ前日、サイトにアクセスして展示リストを2部印刷しておき、それをちゃんとバックにいれて訪問
今回の展覧会、楽の歴代と永楽の歴代について予習しておくと、とても興味深く鑑賞できる。
楽の歴代については1年前、後輩ちゃんと講演会を聴いて勉強したもんね。→こちら(2010.7月)
それから、私は5年前の三井記念美術館を観て勉強したもんね。→こちら(2006年9月)
永楽家についても、3年前に香雪美術館の展覧会で勉強したもんね。→こちら(2008年4月)
もちろん、今回は事前に予習している時間がなかったので
入館してから、頭の中でデータベースをほじくり出すようにして記憶を拾い上げて鑑賞した
1階(第一展示室)の一番正面の独立展示ケース。
ココは展覧会の要となる茶碗が展示されている。
だから、大抵は長次郎。もしくは御当代の茶碗だったりする。
それが今回は宋胡録茶碗。十代・西村了全作。
一瞬、「へ?」と戸惑った
なんで? 了全なワケ? しかも「宋胡録」と名乗りながら、宋胡録らしくないし
続いて左手の展示ケースの前に立つと、了入さんの茶碗。
いきなり、了入
いっつも、長次郎やん。いきなり九代めかよ~
隣にいる後輩ちゃんに初代・長次郎から八代・得入さんまでを口頭で説明しなきゃ~
と混乱しつつ、一生懸命に説明しかけたら「静かに鑑賞して」と他の見学者から叱られたわけで
連休中だったし、茶会の日でもあったから館内も確かにいつもより人が多くて、皆さんじっくり立ち止まってみてるし
仕方ないから、人がいない展示ケース前に移動。おもむろに全く反対側の展示ケースへ向かう。
と、これが理解のキッカケとなったから、思わぬ怪我の功名
左側からずーーーっと流して見ていくと最後の位置にあったのは保全の茶碗だったノダ。
十一代・永楽保全。
あ ピンとくるものがあった。
「これね、あの真ん中にあった西村了全さんの息子さんね。
十代までは『西村』姓だったんだけど、了全サンが紀州徳川家から『永楽』姓をもらってそこから永楽サンになった」
と、スラスラっと出てきた。
保全さんは天才的に器用だったんだヨ。
隣はチラッと見たら、和全。
その隣の隣には人がいなかったので、そちらへ。妙全さんだ。
「このヒトは代は継がなかったけど、女性なんだヨ」。
そうこうしているうちにまた反対側が空いたから移動したら、弘入さんと惺入さん。
つまり、入口から向かって左側から中心に向けて楽家の九代~十五代(当代)が並び、
右側から中心に向けて永楽家の十一代から十七代が並んでいるノダ。
つまり、こういう配置なワケ↓
次にそれぞれの歴代が生きた年代を比較。
【楽家】9代 了入 1756年-1834年 【永楽家】 10代 了全 1770年-1841年
10代 旦入 1795年-1854年 11代 保全 1795年-1855年
11代 慶入 1817年-1902年 12代 和全 1822年-1896年
12代 弘入 1857年-1932年 14代 得全 1852年-1909年 妙全 1852年-1927年
13代 惺入 1887年-1944年 15代 正全 1879年-1932年
14代 覚入 1918年-1980年 16代 即全 1917年-1998年
15代 当代(吉左衛門) 1949年- 17代 当代(善五郎) 1944年-
ものの見事に生きた年代が被ってる
そもそも、了入と了全の「了」は表千家の九代家元・了々斎(1775年-1825年)からもらってる?
ともに紀州徳川家にも出入りしていたし、ライバル関係だったのかなぁという推測が出てくる。
といったことを後輩ちゃんに説明。
幕末から明治維新にかけては天皇家が東京に移るし、日本文化が衰退して苦労の時代だったんだヨ。
とか、昭和10年代の後半も太平洋戦争でつらい時代でその中で楽家13代は亡くなって、代が不在だったのヨ。
保全さんは器用で天才的にキレイなお茶碗を焼いたから、楽家の了入さんや旦入さんはやりにくかっただろうねぇとか。
あと、江戸時代の後半の文化文政の華やかな文化が背景にあることも説明したかなぁ。
見ているうちに保全さんと和全さんのこととか、和全さんの後のゴチャゴチャとか思い出したけど、
ややこしくなるから、そこは解説しなかった
で、中2階へ上がる。
「保全は天才的に器用」というワタシの解説を裏打ちするように、保全さんのタイプの違う華麗なお茶碗が並ぶ。
乾山写に呉須赤絵に色絵(海老絵茶碗)に。
中2階(第二展示室)の真ん中に三代・西村宗全作の大きな土風炉も展示してあった。
「もともとは西村家って土風炉師の家なんだよネ」
とはいうものの、土風炉っていうのは~、そこの説明も難しい。
社中にもあるけど、パッと見は唐銅か土風炉かの違いを見分けるのはまだ無理があるもんね
そして、楽家と永楽家に混じって、野々村仁清作の道具も出てくる。
後輩ちゃんは中高を海外で過ごしたので、日本史が弱い
よって、「仁清」とは何ぞや?を説明するのも難しかった
ワタシ、いつから仁清を知ってたっけ? 日本史大好きだったからねぇ。いつのまにか知ってた
2階(第三展示室)に長次郎の「面影」があって、ちょっと安心した。
そして、北村美術館所蔵の仁清の色絵鱗波文茶碗
MOAにある筒茶碗とは異なり、普通の京焼の形の茶碗。
あ、そうそう。
以前に読んだ宗旦が主人公の小説に道入と光悦が仁清の工房を見学する場面があったなぁ。
それで刺激を受けたノンコウさんが茶碗に絵を描くようになった~という描かれ方をしてたっけ。
(と思い出した)
そして、永楽家の華麗な京焼は仁清の流れを汲むという繋がりについて、初めて気がついた。
まぁ、仁清の流れを汲んだのは尾形乾山だけど、乾山は乾山でまたオリジナリティな世界に入っちゃったし。
それに仁清も乾山も世襲はされなかったワケだから。
西村家も土風炉一本じゃ食べていけないから、化政文化の華麗な時代背景を狙って京焼に転換したワケだ。
そして、その華やかさは豪商の三井家をパトロンにつけていったから、明治になっても乗り切れたけど、
一方、楽家は強いパトロンがいなかったから冬の時代に入ってしまう。
そういった流れを考えていたら、改めて日本の近代史とこういった文化の繋がりって興味深いなぁと思った。
そんな感じで、結局1時間以上滞在していた。
この秋の京都の茶の湯展の中では一番オススメ、だなっ
※次回の展覧会情報 新春展「京の粋 楽家初春のよそおい」 2012年1月7日(土)~3月4日(日)まで
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★楽美術館バックナンバー
2011年8月 「樂焼のルーツは、なんと! カラフルな中国の焼き物」
2011年5月 「樂美術館コレクション−樂歴代とその周縁」
2011年2月 「特別展樂吉左衞門還暦記念Ⅱ 個展「天問」以後今日まで」
2010年11月 特別展『千家十職 楽家の茶碗-極められた赤と黒の美-』 表千家北山会館
2010年11月 『楽吉左衛門還暦記念展』
2010年5月 春季特別展『楽歴代展』
2009年11月 重要文化財新指定記念特別展『長次郎二彩獅子像+勢揃い京の焼き物 侘と雅』
2009年8月 「『楽焼のはじまり、そして今』親子で見る展覧会/シリーズ「楽ってなんだろう」
2009年5月 春期特別展『樂歴代』
2008年10月 開館30周年記念特別展『長谷川等伯・雲谷等益 山水花鳥図襖&樂美術館 吉左衞門セレクション』
2008年8月「楽茶碗を焼く」
2008年5月「楽家の系譜」
2008年3月「動物の意匠」
2007年11月「元伯宗旦」
京都へ旅立つ前日、サイトにアクセスして展示リストを2部印刷しておき、それをちゃんとバックにいれて訪問
今回の展覧会、楽の歴代と永楽の歴代について予習しておくと、とても興味深く鑑賞できる。
楽の歴代については1年前、後輩ちゃんと講演会を聴いて勉強したもんね。→こちら(2010.7月)
それから、私は5年前の三井記念美術館を観て勉強したもんね。→こちら(2006年9月)
永楽家についても、3年前に香雪美術館の展覧会で勉強したもんね。→こちら(2008年4月)
もちろん、今回は事前に予習している時間がなかったので
入館してから、頭の中でデータベースをほじくり出すようにして記憶を拾い上げて鑑賞した
1階(第一展示室)の一番正面の独立展示ケース。
ココは展覧会の要となる茶碗が展示されている。
だから、大抵は長次郎。もしくは御当代の茶碗だったりする。
それが今回は宋胡録茶碗。十代・西村了全作。
一瞬、「へ?」と戸惑った
なんで? 了全なワケ? しかも「宋胡録」と名乗りながら、宋胡録らしくないし
続いて左手の展示ケースの前に立つと、了入さんの茶碗。
いきなり、了入
いっつも、長次郎やん。いきなり九代めかよ~
隣にいる後輩ちゃんに初代・長次郎から八代・得入さんまでを口頭で説明しなきゃ~
と混乱しつつ、一生懸命に説明しかけたら「静かに鑑賞して」と他の見学者から叱られたわけで
連休中だったし、茶会の日でもあったから館内も確かにいつもより人が多くて、皆さんじっくり立ち止まってみてるし
仕方ないから、人がいない展示ケース前に移動。おもむろに全く反対側の展示ケースへ向かう。
と、これが理解のキッカケとなったから、思わぬ怪我の功名
左側からずーーーっと流して見ていくと最後の位置にあったのは保全の茶碗だったノダ。
十一代・永楽保全。
あ ピンとくるものがあった。
「これね、あの真ん中にあった西村了全さんの息子さんね。
十代までは『西村』姓だったんだけど、了全サンが紀州徳川家から『永楽』姓をもらってそこから永楽サンになった」
と、スラスラっと出てきた。
保全さんは天才的に器用だったんだヨ。
隣はチラッと見たら、和全。
その隣の隣には人がいなかったので、そちらへ。妙全さんだ。
「このヒトは代は継がなかったけど、女性なんだヨ」。
そうこうしているうちにまた反対側が空いたから移動したら、弘入さんと惺入さん。
つまり、入口から向かって左側から中心に向けて楽家の九代~十五代(当代)が並び、
右側から中心に向けて永楽家の十一代から十七代が並んでいるノダ。
つまり、こういう配置なワケ↓
次にそれぞれの歴代が生きた年代を比較。
【楽家】9代 了入 1756年-1834年 【永楽家】 10代 了全 1770年-1841年
10代 旦入 1795年-1854年 11代 保全 1795年-1855年
11代 慶入 1817年-1902年 12代 和全 1822年-1896年
12代 弘入 1857年-1932年 14代 得全 1852年-1909年 妙全 1852年-1927年
13代 惺入 1887年-1944年 15代 正全 1879年-1932年
14代 覚入 1918年-1980年 16代 即全 1917年-1998年
15代 当代(吉左衛門) 1949年- 17代 当代(善五郎) 1944年-
ものの見事に生きた年代が被ってる
そもそも、了入と了全の「了」は表千家の九代家元・了々斎(1775年-1825年)からもらってる?
ともに紀州徳川家にも出入りしていたし、ライバル関係だったのかなぁという推測が出てくる。
といったことを後輩ちゃんに説明。
幕末から明治維新にかけては天皇家が東京に移るし、日本文化が衰退して苦労の時代だったんだヨ。
とか、昭和10年代の後半も太平洋戦争でつらい時代でその中で楽家13代は亡くなって、代が不在だったのヨ。
保全さんは器用で天才的にキレイなお茶碗を焼いたから、楽家の了入さんや旦入さんはやりにくかっただろうねぇとか。
あと、江戸時代の後半の文化文政の華やかな文化が背景にあることも説明したかなぁ。
見ているうちに保全さんと和全さんのこととか、和全さんの後のゴチャゴチャとか思い出したけど、
ややこしくなるから、そこは解説しなかった
で、中2階へ上がる。
「保全は天才的に器用」というワタシの解説を裏打ちするように、保全さんのタイプの違う華麗なお茶碗が並ぶ。
乾山写に呉須赤絵に色絵(海老絵茶碗)に。
中2階(第二展示室)の真ん中に三代・西村宗全作の大きな土風炉も展示してあった。
「もともとは西村家って土風炉師の家なんだよネ」
とはいうものの、土風炉っていうのは~、そこの説明も難しい。
社中にもあるけど、パッと見は唐銅か土風炉かの違いを見分けるのはまだ無理があるもんね
そして、楽家と永楽家に混じって、野々村仁清作の道具も出てくる。
後輩ちゃんは中高を海外で過ごしたので、日本史が弱い
よって、「仁清」とは何ぞや?を説明するのも難しかった
ワタシ、いつから仁清を知ってたっけ? 日本史大好きだったからねぇ。いつのまにか知ってた
2階(第三展示室)に長次郎の「面影」があって、ちょっと安心した。
そして、北村美術館所蔵の仁清の色絵鱗波文茶碗
MOAにある筒茶碗とは異なり、普通の京焼の形の茶碗。
あ、そうそう。
以前に読んだ宗旦が主人公の小説に道入と光悦が仁清の工房を見学する場面があったなぁ。
それで刺激を受けたノンコウさんが茶碗に絵を描くようになった~という描かれ方をしてたっけ。
(と思い出した)
そして、永楽家の華麗な京焼は仁清の流れを汲むという繋がりについて、初めて気がついた。
まぁ、仁清の流れを汲んだのは尾形乾山だけど、乾山は乾山でまたオリジナリティな世界に入っちゃったし。
それに仁清も乾山も世襲はされなかったワケだから。
西村家も土風炉一本じゃ食べていけないから、化政文化の華麗な時代背景を狙って京焼に転換したワケだ。
そして、その華やかさは豪商の三井家をパトロンにつけていったから、明治になっても乗り切れたけど、
一方、楽家は強いパトロンがいなかったから冬の時代に入ってしまう。
そういった流れを考えていたら、改めて日本の近代史とこういった文化の繋がりって興味深いなぁと思った。
そんな感じで、結局1時間以上滞在していた。
この秋の京都の茶の湯展の中では一番オススメ、だなっ
※次回の展覧会情報 新春展「京の粋 楽家初春のよそおい」 2012年1月7日(土)~3月4日(日)まで
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