先日(9/15)、10・5全国青年大集会のプレ企画の一つとして「えどがわ雇用シンポジウム」というのが行われました。もちろん私は行きましたよ。ネット上で宣伝しておいて行かないということはありえませんからね。
私自身は初参加でしたので以前との比較はできませんが前から青年大集会に取り組んできた人に聞いてみたら、昨年より参加者が増えている、この2.3年増えてきているとのことです。言ってみたら、会場は―部屋自体が小さかったとはいえ―いっぱいでした。青年大集会のプレ企画ですから参加者の大部分は若い人ですがごく一部自分の親ないしそれより年上の方も見えていました。
いろいろ、話聞くと本当に非人間的な労働実態を聞かされます。ゲストの中にはここでお知らせしたように、SHOP99の元店長清水文美さん、美容室Ashの柳勝也さんが来ていました。
聞いたことがある人がいるかとは思いますが、名ばかり店長という言葉があります。名ばかり管理職と言い換えても差し支えないでしょう。
コンビにチェーンでは店長といっても大体お店に社員は一人しかいなくてあとはパートやアルバイトというのが実態です。また、店長といっても営業時間を決めたり、会社経営そのものに対して何らかの裁量がある、というわけではありません。それでいながら、店長が監督責任ということで店員が休むと休日返上で出勤せざるを得ないことがたびたびあったわけです。このような状況ですから朝の8時に出勤して夜11時に帰れればいいほうで休日返上で48時間ぶっ続けで見せで働く羽目になる、それこそ4日で80時間労働ということすらあったわけです。こんな働かされ方をしていれば、常識的に考えて、過労で倒れる、病気になるわけです。実際清水さんは過労のあまり胃痛、吐き気、不眠、体が動かないなどの症状に襲われます。医師の診断では「仕事を休むように」という結論だったわけですが、会社は取り合わなかったのです。彼は、店長になって4ヵ月後にうつ病が悪化して休職することになったわけです。
清水さんは、残業代150万円の支払命令とうつ病になったことでの会社の「安全配慮義務違反」として会社に対して300万円の損害賠償請求の裁判を起こしました。
管理職というのは本来、経営陣と一体となって会社経営に参加するわけであってこれに伴ってそれなりの待遇や将来性があるのですが、現在では若い労働者を安い賃金で長時間労働に縛り付けるための使い捨て要因として「名ばかり店長」を動員している、こういう実態があります。
美容室Ashは首都圏を中心にして店舗を拡大していき、知名度を上げてきました。表面的には華やかにみえる裏側ではまさに「労働基準法番外地」ともいえるほどに企業犯罪がまかり通っている実態がありました。
例えば、労働基準法では、使用者に対して賃金を通貨で毎月一度、定期に全額労働者に支給しなければならない(ボーナス除く)、という規定があります。例外的に、給与から天引きしていいのは、源泉所得税、住民税の特別徴収、健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険関係や雇用保険の保険料といった労働保険だけです。そのほかは、労使協定が書面で取り交わされるなどしない限りは、どのような名目であろうと賃金から金銭を差し引く、天引きするとというのは違法です。ところが美容室Ashでは賃金に関する違法行為、否、企業犯罪が平然と行われていたのです。柳さんの話では、給与から「共済費」、「教育費」といった本人からしてもわけの分からないお金が毎月給与から天引きされていたのです。大体、会社が採用した新人を会社の経費を使って教育するのは当然のことであって従業員から「教育費」として賃金から金銭を差し引くというのは上記を逸しているというほかありません。このような、ある意味社会的常識を著しく逸しているといえる企業犯罪が発生する背景として封建的な徒弟制度が蔓延しているということがあります。つまり、労働力を安く提供しながらその代わりに技術を教えてもらう、というバーターという封建的な徒弟制度が会社の労務管理のあり方としてそのまま持ち込まれているのです。違法とはいえ、教育費なるものを給与から天引きして、実際にきちんとした技術教育を新人にしていればまだ救いがあるのですが、実際には朝出勤すると店に立つこともなく夜まで、ひどいときには夜10時まで街頭でビラまきをさせられました。電車が終わってしまい、家に帰れずに店の床や漫画喫茶で寝たこともあったのです。散々新人社員を酷使しておきながら、会社はまともに技術を教えることすらしなかったのです。そういう状況の中で柳さんの同期の人の中には退職した人が何人もいるとのことです。しかも、Ashは従業員の時間管理すらまともにせず、不払い労働を従業員にさせることを前提にしておりましたので、タイムカードすらない状況でした。柳さんが一番不満に思っていたことは技術を教えてもらえないことでした。
私は、彼らのような実態を聞けば聞くほどに、今の日本社会における労使関係がいかに異常なのか、いかに若い人の夢と希望を完膚なきまでに破壊するのかということを理屈ぬきで思い知らされました。
清水さん、柳さん両名ともに現在、日本において青年労働者が非人間的な働かされ方をする状況を打開するために戦っています。通りすがりでも、この記事を目にした方のなかで職場のおかしいことに不満を感じていたり、非人間的な働かされ方をしていて苦しんでいる人がいたとしたら、まず知って欲しいことがあります。それは、悩み苦しんでいるのはあなただけではない、ということです。
今の異常な状況を変えるためには、私たち一人一人が立ち上がり互いに手を取り合うことが大切です。10・5全国青年大集会@明治公園に一人でも多くの方が参加くださることを心より願うしだいです。