表題の「To Zanarkand」は、日本語では「ザナルカンドにて」ということである。ファイナルナンタジーXで使われている曲をアルパ奏者の神山里映子氏が29弦の小型アルパで演奏している(通常のアルパは36弦から37弦である)。何故、ゲームの曲をアルパで演奏した動画をラテンアメリカ関係のカテゴリーに入れているのか。その理由は、アルパがパラグアイなどラテンアメリカ諸国で広まっている楽器だということにある。ラテンアメリカの楽器・音楽について少しでも身近に感じてもらおうとすると、現在の日本で聴くことができる音楽を通じてのほうが受け入れられやすいだろうと思われる。そこで、敢えてゲーム音楽の演奏をこのブログで紹介した。
演奏途中で神山里映子氏がアルパのレバーを動かしていることに気づくだろう。ヨーロッパのグランドハープと違ってアルパには半音を出すためのペダルがない。そこで半音を調節するめのレバーアルパが造られるようになる。なお、レバーがついていないアルパで半音を出すときにはジャベを指にはめて、これで弦を押さえながら半音を出す。
アルパ(Arpa)は、スペイン語で竪琴という意味であり、英語ではHarpと表記される。元々、南アメリカ大陸には弦楽器が存在しなかった。しかし、16世紀にスペイン人が南アメリカ大陸へ行き来するようになるとアルパが持ち込まれるようになる。今と違って16世紀の世界には航空機が存在せず、大陸間を行き来するための交通手段は船だけだった。それも船にはエンジンがあるわけもなく、航海を行うための動力と言えば、主として帆に受ける風であった(蒸気船が実用的に持ちいられるようになったのは19世紀以降である)。従って、スペインから南アメリカ大陸へ航海するために要する期間は約3か月とか約4か月という長期に及んだ。月単位で人々が船の中で生活していくわけだから道中において娯楽の一つや二つは必要になってくる。音楽もその一つである。とはいえ、船にそうそう大きなものを持ち込むわけにはいかない。そこで小型のハープ(アルパ)が用いられるようになった。こうして南アメリカ大陸にアルパが持ち込まれるようになり、現地の人々が自分たちの音楽に合わせるように改良してスペイン人が持ち込んだハープ(アルパ)を現在のアルパへと発展させて今に至る。