トレーニングルームを後にしようと思ったショー開始直前、声を掛けられました。どなたかよく分からずに、近寄るとアルマンさん。クリエイション時からショーが始まってしばらくの間、ステージマネージメントのトップをされていた方で、とてもお世話になった方です。久しぶりで、ビックリしながらハグをしようとすると
「今、人には触れないようにしているんだよ。」
と。その後すぐ、双子役の二人が近寄って来ても、同じようにさらっと手を握ることしかしませんでした。
「今ね、血液の癌と闘っていて、だからも頭こんなで、誰だか分からなかったでしょ。ちょっと太ったしね。」
彼はいつものように優しい声で、微笑みながら言いました。
「そんな顔で見ないでよ。」
と双子の男の子役に言うと、話を続けました。
「去年の12月から闘っているのだけれど、身体の中のシステムを全部替えているところだから、疲れやすいんだよね。でも新しいショーの仕事には今だ関わっているんだよ。だから今日はこうしてデザイナーの方を連れてここに来たんだ。KAは2年ぐらい観ていないかな。今日はこれから観たいとは思っているのだけど、こんな身体で疲れているからどうなることか。」
それから私は更衣室へ向かいました。涙を目に溜めながら更衣室へ向かいました。彼のことを知っている仲間に彼のことを話すと、その涙はこぼれました。「もうショーが始まるのだから。」と何度も言い聞かせているのに涙は一向に止まりません。どこへ行っても彼とのいろいろな出来事が思い出されて、その度に涙は溢れました。そしてとうとうそのまま舞台の中に乗り込むことになってしまいました。
ショーが始まり、舞台の側面に出た後、いつものように、その時に行われているシーンの歌を歌いました。そして、自分のあまりにもかすれた声を聴き、また涙が出ました。舞台が下りると、走って更衣室へ戻りました。鏡に映ったのは予想通りのひどい顔。急いでメイクをし直しました。
それからは頑張って舞台に立ちました。きっとアルマンさんは客席にいらして下さると信じて舞台に立ちました。もしも彼が疲れを感じ始めても、もう一つだけ、もう一つだけ、と心はワクワクしながらご覧頂いているかもしれません。KAを去る前、初めて客席からご覧になったアルマンさんから頂いた感想を思い出しながら、その後2年間での成長を、背伸びすることなく少しでもご覧頂けることを願いました。アルマンさんのことを考えていると、この一週間、身体の歪みからくる痛みに、悩んでいたことなど本当に些細なことに思えました。
ショーが終わり、舞台裏を歩いていると、私の身体を心配してくれるゲイルに声を掛けられました。彼女はアルマンさんのことは知らないのですが、話すと、また涙を流してしまいました。でも最後には微笑んで「彼が客席に居ると信じて、彼のためにこのショーをしたの。二回目のショーはあなたの友達が来るのよね。次は彼らの為にするから。」と言うことができました。
いつもより、どことなく静かな気持ちで二回目のショーの準備をしていました。衣装を着けてトレーニングルームへ向かうと、アルマンさんの元オフィスに彼の姿を見たような気がして、一歩過ぎてから戻りました。すると、彼の満面の笑み。
「ああ、ノリコ!良かったよ。きみの姿を舞台で見られて本当に良かった。相変わらず舞台に情熱を注いでいるんだね。出番も増えたんだね。」
そう言いながら手を差し出してくれました。私は両手で彼の手をしっかりと握りながらお礼を言いました。それからかも彼は、何度も何度も“舞台に立っている私の姿”を見られたことに良かった良かったと言っていました。
トレーニングルームへ行き、手足を広げて上向きに寝て、高い天井を見上げました。しばらくボーっと見上げていました。
「今、人には触れないようにしているんだよ。」
と。その後すぐ、双子役の二人が近寄って来ても、同じようにさらっと手を握ることしかしませんでした。
「今ね、血液の癌と闘っていて、だからも頭こんなで、誰だか分からなかったでしょ。ちょっと太ったしね。」
彼はいつものように優しい声で、微笑みながら言いました。
「そんな顔で見ないでよ。」
と双子の男の子役に言うと、話を続けました。
「去年の12月から闘っているのだけれど、身体の中のシステムを全部替えているところだから、疲れやすいんだよね。でも新しいショーの仕事には今だ関わっているんだよ。だから今日はこうしてデザイナーの方を連れてここに来たんだ。KAは2年ぐらい観ていないかな。今日はこれから観たいとは思っているのだけど、こんな身体で疲れているからどうなることか。」
それから私は更衣室へ向かいました。涙を目に溜めながら更衣室へ向かいました。彼のことを知っている仲間に彼のことを話すと、その涙はこぼれました。「もうショーが始まるのだから。」と何度も言い聞かせているのに涙は一向に止まりません。どこへ行っても彼とのいろいろな出来事が思い出されて、その度に涙は溢れました。そしてとうとうそのまま舞台の中に乗り込むことになってしまいました。
ショーが始まり、舞台の側面に出た後、いつものように、その時に行われているシーンの歌を歌いました。そして、自分のあまりにもかすれた声を聴き、また涙が出ました。舞台が下りると、走って更衣室へ戻りました。鏡に映ったのは予想通りのひどい顔。急いでメイクをし直しました。
それからは頑張って舞台に立ちました。きっとアルマンさんは客席にいらして下さると信じて舞台に立ちました。もしも彼が疲れを感じ始めても、もう一つだけ、もう一つだけ、と心はワクワクしながらご覧頂いているかもしれません。KAを去る前、初めて客席からご覧になったアルマンさんから頂いた感想を思い出しながら、その後2年間での成長を、背伸びすることなく少しでもご覧頂けることを願いました。アルマンさんのことを考えていると、この一週間、身体の歪みからくる痛みに、悩んでいたことなど本当に些細なことに思えました。
ショーが終わり、舞台裏を歩いていると、私の身体を心配してくれるゲイルに声を掛けられました。彼女はアルマンさんのことは知らないのですが、話すと、また涙を流してしまいました。でも最後には微笑んで「彼が客席に居ると信じて、彼のためにこのショーをしたの。二回目のショーはあなたの友達が来るのよね。次は彼らの為にするから。」と言うことができました。
いつもより、どことなく静かな気持ちで二回目のショーの準備をしていました。衣装を着けてトレーニングルームへ向かうと、アルマンさんの元オフィスに彼の姿を見たような気がして、一歩過ぎてから戻りました。すると、彼の満面の笑み。
「ああ、ノリコ!良かったよ。きみの姿を舞台で見られて本当に良かった。相変わらず舞台に情熱を注いでいるんだね。出番も増えたんだね。」
そう言いながら手を差し出してくれました。私は両手で彼の手をしっかりと握りながらお礼を言いました。それからかも彼は、何度も何度も“舞台に立っている私の姿”を見られたことに良かった良かったと言っていました。
トレーニングルームへ行き、手足を広げて上向きに寝て、高い天井を見上げました。しばらくボーっと見上げていました。