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更年期とジュリーファンが人ごとでない親近感を覚えて、
おもわず作者の年齢を確かめた。1953年生まれ。
1つお姉さんか?ひょっとすると同学年。
私の場合は
47歳の夫を亡くした直後に子宮筋腫の摘出手術で
一気に更年期を迎えたらしい。
「らしい」と言うのは
伴侶の死というでかいイベントがあって
正直、我が身がどうであったのか、定かな記憶がないのだ。
その1年半後に
ばっさり全身のありとあらゆる全身の毛を失った円形脱毛の親玉の治療に
心療内科から
当帰芍薬散包と言う更年期障害の漢方薬も処方されていた。
たぶん、意識しないで更年期をやっていたのだろう。
そう言えばホットフラッシュは今でもある。
今もかな?
老いてゆく我が身を感じながらも
自立しない身勝手な我が子やら、親の介護やら、
独身を通して今後の不安やら、専業主婦の離婚やらと
体が転機を迎える女性は年齢的にもいっぱいの何かを抱えている。
精神的な揺れは?
体の不調は?
更年期の所為なのか?
抱えていることの重さなのか?
あるいは両方なのか?
小説では
この救世主にジュリーが登場する。
韓流の追っかけより少し年齢が下がって
少女時代にジュリーに出会った世代が多いとか。
まさに更年期を真っ只中世代。
中年太りになった
彼の自作の歌詩が
長い人生を生きてきたからこそのもので、胸を打つと言う。
小説の最後に
一難去ってまた一難。平穏な日々なんて、もしかしたら死ぬまで
来ないのかもしれない。
そして、老いてゆく。
骨がつぶれる。関節がきしむ…(中略)
家族が、友達が、自分が、次々と病に倒れる。
その度に、思いものを突きつけられ、激しく消耗する。
・・・・(中略)・・・・
歳をとるのは、ほんとうにつらい。
でも、この歳まで生きてこなければ、会えなかった人がいる。
立ち会えなかった時代の局面がある。
だから若さなんか羨ましくない。
老いたジュリーと一緒に老いた自分と再生のきかない
「今」をじわっと味わいたいから、「今」の儚さを充分しって、
万障繰り合わせてコンサートに集う。
儚さは舞台上のジュリーとコンサート会場のみんなと一時、
共有して燃えるのだろう。
昨年の中年結集の吉田拓郎とかぐや姫のつま恋コンサートを思う。
拓郎のコンサート開始のひとこと
『みんなよくきたね』
ここに若い人たちにはない万感の思いがある。
南こうせつのコンサートに出かけたことを思い出す。
「こんな近くでコンサートがあるよ」と新聞の記事を
話したら
夫が「行っておいで」と切羽詰まった顔で言った。
毎日、病院に詰めて死の迫る夫に付き添っていた。
コンサート会場はその病院から車で山方向へ30分強の場所。
夕食の介助をしてから充分間に合う時間帯でもある。
何度かこれまで県内であればこうせつコンサートに出かけていたから
自分のために私に無理をさせている、
がまんさせている日々だと気遣ってくれたのだ。
一瞬、言わなければよかった。しまったと思った。
問い合わせたら
チケットはチョー田舎会場と言うこともあって残っていた。
行かないと夫が余計かなしみそうで、
ベットサイドから『行ってきます』と出かけた。
『楽しんでおいで』と起き上がれない体の夫に送り出された。
会場までのどんどん薄暗くなる山道の心細かったこと。
夫に頼れないこれからの自分の道のようにもあの時、感じた。
夫はもうベッドから自力で起き上がる事も出来ない体だった。
こうせつが開口一番
「こんな山また山の中に、ほんとうに今夜歌う会場があるのか心配だった」
それから数日後、
夫を転院させ緩和ケア病棟への一番近道の裏道として
この道を何度も通ることとなった。
今は、息子の通院への近道として月に1度は走る。
通る度にあの日のコンサートを思い出す。
なんであの時、あのタイミングで、こんな場所で、
南こうせつのコンサートがあったことが不思議。
あの後、全国レベルの人のコンサートがそこであった話は聞かない。
抱えるものの多い中年期にとって
ライブはいつもいつも『万障繰り合わせて』
同時代を生きてきたもう美形ではないけれど
じんわりと時間が作った人間的魅力に満ちた
ジュリーだから、
きっと『万障繰り合わせて』会場に来てくれた人への感謝を忘れず
充分に楽しませる気づかいに満ちたコンサートに違いない。
全然、ファンでもなかったけれど
コンサートは無理でも
せめてAmazonで新譜を購入してみようっと言う気になっている。
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ぶきっちょな若い女の子のラブストーリーだけど
脇を固める中年がそれぞれいい味で描かれていた。
平 安寿子も図書館で
いつも新しい本が入っていないかチェックを入れている一人だ。