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人を救うはずの、今現在、信仰厚き人々の多い宗教が
大量虐殺を行った史実を元に創作されている。
小説は少々ミステリー仕立てで、巻末の主要参考文献の下に
<本書中の聖書引用は、時代背景などを鑑み、現在発刊されている聖書と
あえて異なる表現をした部分もある…
ここまでは12世紀13世紀の話だから納得できる事。その後
…また、本書は『手稿』を含めて創作である。(編集部)>
と、あり
ローマカトリック教会に異端として大量虐殺された史実やカタリ派まで
創作なのかな?とヨーロッパの中世の歴史に疎い私は一瞬、不安になった。
手稿が書かれていたオキシタン語や異教徒されたカタリ派や
その大量虐殺の史実は『嘘』ではなかった。
この火あぶりと言う残虐な方法や拷問の証拠を書き記した『手稿』や
それを世間に公表させまいと暗躍する教会の回し者たちの事が
『創作』の部分だったのだ。
編集部の余計なお世話に、小説の基盤になる『史実』まで嘘かな?
と、思ってしまったのはそそっかしいワタシだけだろうか?
前に読んだ洋の東西を問わず三大宗教を扱った点で同じ↓を思い出した。
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あの奈良の大仏に使われている銅は山口の銅山で掘られた物で
大仏を作るにあたっては銅山から人まで奈良に送られた。
移動は船か徒歩の時代。連れて行かれる途中で命を落とす者あり。
労働が終わったらポイ捨てで『勝手に帰れ』無事帰りついた者の方が少ない。
京都の神社仏閣を見てきたところだけれど
あの大木を運び出した人々や建築に携わって
同じく家畜のように使われた膨大な人々の
労力もしくは命によって出来上がっている。
そう観ると信仰の証が別のもの見えてくる。
すべての地上に形となるものを排したカタリ派の方が正統に思えてくる。
帚木蓬生魔術にひかかったかな?
宗教も権力となった時に異質なものになるらしい。
宗教の違いで今も戦争が地球上から姿を消さない。
余談ながら
イラク戦争をやめないブッシュさんが
敬謙なカトリック教徒である事はあまりに有名。
帚木蓬生さんの小説はどれも、
嘘を交え本当より本当らしいエンタテイメントな世界を作り上げて
読み手を惹きつけて、
本当の現実の社会にそれが存在する恐ろしさを知らしめる。
新幹線のお供にちょっと重かったハードカバー。完読。
図書館に返しに行こう。無職生活は図書館が友達になりそうだ。