気の向くままに

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弥次さん喜多さんは…

2015-05-02 09:52:53 | 日記

 

 

 弥次さん喜多さんは「続膝栗毛」木曽街道編の妻籠宿で女たちばかりの伊勢参りの一行に出会っている。年のころは「十七八より二十三四まで」の女3人が、弥次喜多の前を連れ立っていく.

▲「アイわしどもは奥州から出て来申した」という女たちに喜多さんが「ソリヤア遠いとこから伊勢参だな。たった三人連れか、男もついて来たろう」と尋ねる。すると「インネまだ後から二人……」。女だけの5人連れで伊勢参りを終え、奥州へ帰る途中だったのだ.

▲金森敦子さんの「江戸庶民の旅」(平凡社新書)から孫引きさせてもらったが、江戸時代も享保以降は女性旅行者が飛躍的に増えたという。「女同士の道連(みちづれ)、ぬけ参の童(わらんべ)まで、盗賊かどわかしの愁(うれい)にあわず」(東海道中膝栗毛)というのが実感できた世だったらしい.

▲そういえば明治前半に日本各地を旅した英国の女性旅行家バードの「世界でも日本ほど婦人が危険にも不作法な目にもあわず旅行できる国はない」との言葉も思い出す。まあ実際は危険も少なくなかっただろう江戸時代の旅だが、それでも女たちは旅に出たのである.

▲そんな旅好きの先祖譲りの血が騒ぐゴールデンウイークもヤマ場の連休である。旅行会社によると期間中に1泊以上の旅に出る人は約2386万人で前年比2.9%の増とか。目立つのは北陸新幹線開通や姫路城大改修完成などの話題のあった国内旅行の好調という.

▲「宿とりて一に方角二に雪隠(せっちん)三に戸じまり四には火のもと」とは宿の出入り口確認などを促す江戸時代の歌である。旅の安全のために用心を怠らなかったご先祖の心構えをも引き継ぎたい新緑の列島だ。

毎日新聞 2015年05月02日 東京朝刊

 

 

<memo>

あちらこちらから草刈り機の音が聞こえてくる。暑さに拍車をかけている。