学究肌の男に向かって行動派の男が言う。「本を読むばかりで何にも出来ないのは、皿に盛った牡丹餅を画にかいた牡丹餅と間違えて大人しく眺めているのと同様だ」と。夏目漱石の『虞美人草』に出てくる。
▼絵に描いた餅も、実物の餅を眺めるだけの人も役に立たない点では同じだろう。牡丹餅を「平和」に置き換えてみる。自衛隊と日米同盟に守られた平和を、憲法9条に守られた平和と間違えて-。「大人しく眺め」てきた人が戦後の「日本」だとしたら背筋が寒い。
▼憲法施行からの68年、「平和の担い手か受益者か」と問われれば、日本は後者の色が濃いだろう。櫻井よしこさんが述べていた。「日本の進むべき道やとるべき選択肢を、自分の頭で突きつめて考えてこなかったからではないか」(『憲法とはなにか』小学館)と。
▼国会に憲法調査会ができたのは15年前である。遠慮会釈のない中露や北朝鮮の立ち回りを見るにつけ、一国平和主義の幻想にしがみつく愚を思う。安倍晋三首相とオバマ米大統領の共同声明が示すように、日米同盟の守備範囲は「世界」を視野に語らねばなるまい。
▼4月の統一地方選の結果から、小紙が来年夏の参院選を予測したところ、自民党は単独過半数(定数242)を占めるとの試算を得た。与党の公明党、憲法改正に前向きな維新の党を合わせると約170議席である。憲法改正の国会発議に必要な3分の2を超える。
▼世界の常識に沿った「平和」の担い手となるなら、憲法改正への道を避けては通れまい。われわれ国民も心と頭の備えが必要である。この先、日本が世界各地で流すであろう汗が甘いか塩辛いかの議論より、まずは動くことであろう。「平和=甘い」の幻想ほど怖いものはない。
5月3日【産経抄】
<所感> かって、メーデー歌としてうたわれてきた「聞け万国の労働者」とともに、国労、動労、日教組、日教組のドンと評された 輿石 東 元民主党幹事長が目に浮かぶ。現実に合わない論理=幻想を主張する人たちが「平和=甘い」の幻想を拡大してきたといえば言い過ぎだろうか?
かつては労働者の半数以上が労働組合に加入していた。今(2013年)の組織率は17.7%にまで落ち込んでいるとのこと(東京新聞 [生活図鑑]。
労組は、労働者の待遇改善や福利厚生に一定の成果をあげてきた。が、他方、行き過ぎた主張を実力行使で行うこともあったように思われる。職務に対して期待している評価がされない者(職務遂行能力と意欲の乏しい者)が組合活動には熱心だったように思う。
「平和=甘い」の幻想を抱く者とか組合肌の者とは一定の距離を保っている。
「聞け万国の労働者 」
【作詞】大場 勇
【作曲】栗林 宇一
聞け万国の労働者
とどろきわたるメーデーの
示威者に起る足どりと
未来をつぐる鬨の声
汝の部署を放棄せよ
汝の価値に目醒むべし
全一日の休業は
社会の虚偽をうつものぞ
永き搾取に悩みたる
無産の民よ決起せよ
今や廿四時間の
階級戦は来りたり
起て労働者奮い起て
奪い去られし生産を
正義の手もて取り返せ
彼らの力何物ぞ
われらが歩武の先頭に
掲げられたる赤旗を
守れメーデー労働者
守れメーデー労働者