気の向くままに

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人生には転機につながる出会いがある…

2015-05-24 18:10:45 | 日記

毎日新聞 2015年05月24日 東京朝刊

 人生には転機につながる出会いがある。京都で手描き友禅の職人をしていた森本喜久男(もりもときくお)さん(66)にとっては、35年前にバンコクの国立博物館で見たカンボジア伝統のクメール織の絹絣(きぬがすり)がそれだった。赤を基調に唐草風の模様を織り込んだ布が醸し出す質感とエネルギーに魅了された。

▲この頃、カンボジアは激しい内戦の最中だった。森本さんは難民支援の活動に参加することを思い立ち、カンボジア国境に近いタイ東北部の村で、手織物を通じて貧しい人々の生活を支えるプロジェクトに取り組んだ。

▲内戦終結後の1994年、初めて国境を越えてカンボジアに入った。ポル・ポト派による大虐殺と戦闘で国内は荒廃し、クメール織の伝統は消滅しかけていた。各地を訪ね歩き、翌年、技法を受け継いでいるおばあさんにめぐり合った。

▲復興を目指して工房を開設。荒れ地に桑を植えて蚕を育て、染料を取る樹木や草を植えた。試行錯誤の末、クメール織の技術は再生し、工房は約200人が住む村に発展した。森本さんはその歩みを著書「カンボジアに村をつくった日本人」にまとめた。

▲繭からは手で糸を引く。生糸に人の呼吸が入り織物にぬくもりが残る。良い色を出すには良い土が必要だ。自然素材で染めた色は時間と共に変化し味わいを深めていく。織物は自然の豊かさそのものだ。

▲日本にも忘れられかけている大切なものがある。自然と共に生きてきた農山村のおじいさん、おばあさんたちの暮らしの知恵だ。代々伝わる生活の技を見直し、再生していくことが本物の豊かさにつながる。異国の地で伝統をよみがえらせた職人はそう感じている。

 

 

<memo>

野々市市スポーツセンターで実施された武術太極拳大会に出場させていただいた。

出場の機会をいただき、先生の特別指導と教室仲間の応援をいただいたことに心から感謝している。