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中国で「6割の児童の尿から抗生物質」 過剰摂取に警鐘 水・食物に原因か 消費は「米国の10倍以上」

2015-05-08 07:07:07 | 日記

 

中国の養豚場。抗生物質が多量に使われているという

 

 中国の上海市などの小学生の約6割の尿から抗生物質が検出されたことが、国立復旦大の研究グループの調査で明らかになった。台湾メディアが伝えた。中国国内では、国民の抗生物質の摂取量の多さが問題になっており、“汚染”が子供にも及んでいることが示されたことで改めて関心を呼び、問題視されている。(山口淳也)


58%の児童の尿から検出

 台湾の民放「中国広播」が伝えたところなどによると、復旦大公共衛生学院の研究グループが江蘇省、浙江省と上海市の8~11歳の児童計千人余りを対象に調査。58%の児童の尿から抗生物質が検出された。このうち25%の児童からは2種類以上を検出し、中には6種類が検出された児童もいたという。

 子供たちが抗生物質の脅威にさらされているというこの調査結果は、中国国内でも大きな関心を呼んでいる。親たちは口々に不安を訴えている。「とても心配」「何を食べても安心できない」「恐ろしい」…。

 公共衛生の専門家は原因について、中国の医療機関が多くの抗生物質を処方する傾向があるのに加え、家庭での自己投与や、抗生物質に汚染された水や食物を摂取していることの可能性を指摘。中でも、子供の尿から検出された抗生物質の種類から、汚染された水や食物を摂取していることが最大の原因として考えられるとしている。

消費量は米国の10倍以上

 中国国内では抗生物質が年に21万トン生産され、うち85%が国内で医療や農業に使用されていて、1人あたりの抗生物質消費量は米国の10倍以上に達する。

 特に、畜産業や養殖業では飼育対象の魚類や家畜が病気にかからないようにするため抗生物質が大量に使用されており、動物飼料や排せつ物を介して地下水や土壌を汚染している。

 こうした環境の悪化に加え、汚水処理施設に抗生物質除去機能が備わっていないという問題もあり、「食物連鎖」を通じて、多くの人体その他の生物体に悪影響を及ぼしていると考えられるという。

 抗生物質は長時間体内にとどまることはない、との楽観論が一部にはあるものの、多くの人が現状を深刻に受け止めているようだ。医療専門家の一人は「危険なのは子供だけではない」と指摘し、さまざまな副作用があり使用には慎重であるべきだと警告している。


全人代で報告も

 抗生物質を乱用すると、薬に耐性を持つ細菌(耐性菌)を生む原因となり、耐性菌が生まれて伝染して広がれば、既存の抗生物質が効かなくなるとされる。世界各地で問題になっているが、特に抗生物質大国の中国は深刻度が高い。

 米ニューヨークに本部を置く中国語テレビ局「新唐人」が今年3月に報じたところによると、今年の中国の全国人民代表大会(全人代)の政府活動報告で、呼吸器疾患の専門家が「中国は現在細菌の薬物耐性が最も深刻な国の一つで、一部の患者は抗生物質に対する耐性が強すぎるため、抗生物質が全く効かなくなっている」と発言した。

 この専門家は中国での抗生物質の乱用ぶり、主要な河川で多くの抗生物質が検出されている実態などを指摘した上で「中国の水を飲むのは抗生物質を飲むようなもの。問題があるのにだれも責任をとらない」などと当局を批判した。

 中国のインターネット上でも議論がわき起こっており、「中国のフードチェーンをこれ以上ほったらかしにすると、ガンで死ぬ人はますます多くなるだろう」との書き込みもあった。

 抗生物質の使用に関して世界保健機関(WHO)はこれまでに「今日措置を取らないと、明日はもう手遅れ」と警告したという。しかし水資源の専門家は「中国ではまだこの点が認識されていない」と指摘。抗生物質への依存は続いているという。

 問題の解決にはまだ時間が必要なようだ。そうなると気になるのは中国産の食品。「抗生物質を使った薬が効かなくなる」なんてことにならないよう、避けた方が無難なのだろうか。


2015.5.7 11:00更新 【世界を読む】産経west