星守る犬 価格:¥ 800(税込) 発売日:2009-07 |
これは、先日会った高校の時の先輩が、貸してくれた本のうちの一冊。
絵本みたいなきれいな表紙をみたとき、“あ、たぶん、ヤバい”と直感しました。
見た目通りのほのぼのした話であるわけがない、となぜか思ってしまったのです。
(たぶん、その先輩が以前貸してくれた本が、西原理恵子氏の『まあじゃんほうろうき』だったり、業田良家氏の『自虐の詩』だったりしたせい^_^;)
作品の冒頭で、林道わきの放置車両から男性と犬の遺体が見つかるシーンが出てきて、思わず、“やっぱりそうか”と思ってしまいました。
物語は冒頭のシーンから過去へさかのぼり、家庭が崩壊し行き場をなくした男性が、あてのない旅の末に死にいたるまでが語られます。
でも、その旅の道づれとなるのが一匹の犬。その犬がいるだけで、悲惨であるはずの物語に、ささやかな輝きが加わるのです。
男性は旅の途中で犬に語りかけます。“不思議なもんだな。何もかもなくなったのに、隣におまえがいるからって、ヘンに幸せだぞ”
ほんとうに、愚直なくらいまっすぐにただ愛してくれる犬の存在は、“幸せ”としかいいようがない、と思いました。
それでも死のシーンは胸が潰れそうになりますが、いったん物語が終わったかに見えたあと、終章、のようなエピソードが用意されていて、それがこの物語全体をほのかに明るく、優しく包んでくれているようなのに救われます。
それにしても、タイトルはちょっと印象的ですね。エピグラフにも、作中にも出てきますが、“犬が星を物欲しげに見続けている姿から、手に入らないものを求める人のことを表す”とか。
同様の海外の諺を聞いたことがあったし、分不相応な夢を持つと不幸になる、ということを言わんとしているのかな、と最初は思いました。
でも、作品を最後まで読むと、否定的な意味で使っているのではないことが、分かります。
英語の諺で、“ヒッチ・ザ・カー・トゥー・ア・スター”っていうのがあって、たしか、“大志を抱け”というような意味だったと思うのですが、私はその言葉が結構好きだった。
そんなに賢くなくとも、“星守る犬”でもいいかな、と思うのです。