あめふり猫のつん読書日記

本と、猫と、ときどき料理。日々の楽しみ、のほほん日記

星を見つめすぎては、いけないか。 『星守る犬』

2009-10-01 00:17:23 | アニメ・コミック・ゲーム

星守る犬 星守る犬
価格:¥ 800(税込)
発売日:2009-07

これは、先日会った高校の時の先輩が、貸してくれた本のうちの一冊。

絵本みたいなきれいな表紙をみたとき、“あ、たぶん、ヤバい”と直感しました。

見た目通りのほのぼのした話であるわけがない、となぜか思ってしまったのです。

(たぶん、その先輩が以前貸してくれた本が、西原理恵子氏の『まあじゃんほうろうき』だったり、業田良家氏の『自虐の詩』だったりしたせい^_^;)

作品の冒頭で、林道わきの放置車両から男性と犬の遺体が見つかるシーンが出てきて、思わず、“やっぱりそうか”と思ってしまいました。

物語は冒頭のシーンから過去へさかのぼり、家庭が崩壊し行き場をなくした男性が、あてのない旅の末に死にいたるまでが語られます。

でも、その旅の道づれとなるのが一匹の犬。その犬がいるだけで、悲惨であるはずの物語に、ささやかな輝きが加わるのです。

男性は旅の途中で犬に語りかけます。“不思議なもんだな。何もかもなくなったのに、隣におまえがいるからって、ヘンに幸せだぞ”

ほんとうに、愚直なくらいまっすぐにただ愛してくれる犬の存在は、“幸せ”としかいいようがない、と思いました。

それでも死のシーンは胸が潰れそうになりますが、いったん物語が終わったかに見えたあと、終章、のようなエピソードが用意されていて、それがこの物語全体をほのかに明るく、優しく包んでくれているようなのに救われます。

それにしても、タイトルはちょっと印象的ですね。エピグラフにも、作中にも出てきますが、“犬が星を物欲しげに見続けている姿から、手に入らないものを求める人のことを表す”とか。

同様の海外の諺を聞いたことがあったし、分不相応な夢を持つと不幸になる、ということを言わんとしているのかな、と最初は思いました。

でも、作品を最後まで読むと、否定的な意味で使っているのではないことが、分かります。

英語の諺で、“ヒッチ・ザ・カー・トゥー・ア・スター”っていうのがあって、たしか、“大志を抱け”というような意味だったと思うのですが、私はその言葉が結構好きだった。

そんなに賢くなくとも、“星守る犬”でもいいかな、と思うのです。

コメント (2)
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