月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

3月、後期試験の3日前だというのに

2013-03-09 23:55:01 | 今日もいい一日




3月はビュンビュンと、勢いよく過ぎていく。仕事もそれなりにまあぼちぼち忙しいけれど、平凡な日というのが、一日たりもない。

この日も夕方4時まで仕事をして、入稿の原稿を仕上げるとシャワーを浴びて、大阪駅へ向かった。
娘と待ち合わせをして、京都へいく予定だ。

この日は黄砂の風がひどく吹き荒れて電車からみるビル群も、淀川・河川敷きの風景も薄黄色っぽく、生温かい風ぼこりとともにゆらゆら揺れた市内が窓ガラスに映っていた。

娘はこの日も、私立受験を1本終えて、まずまずの出来という感じであった。


ただ、後日談を聞いたところ、

やたらと鼻水が出て(軽い花粉症)それが気になってティッシュで鼻水をおさえながら片手で鉛筆を動かしていたら、
解き終わった時に、マークシートがずれていた事が発覚!

あと10分だ。

それから急いで消しゴムで全部消して、書き直したのだが、

鼻水がこぼれてくるのを数枚のティッシュだけではせき止められず、
訂正するのに集中できない。
ああ、ようやく終わった!と腕時計をみたところで終了の鐘がなり、危機一髪!

ああよかった、と胸をなでおろしながら

後ろから解答を集めてくる人の答案用紙をチラ見したら、なんか、胸がざわつく。
なにげに問題をみたら、

なんと1枚問題をはぐり忘れていて、5問解答していなかった
という話であった。
ここは国立の滑り止めとして慌てて後期にうけた女子大であったのだ。


私は、そんなこととはいざ知らず。顔の3分の2をマスクで覆って、JR京都線の車窓から、行き過ぎる春の景色をみていた。


7時前。
京都駅八条口すぐの「ホテルビスタ京都」(大学側にとってもらったホテル)にチェックイン。

翌日も1校私立入試がある。


夜は、胃にもたれない和食がいいと「和久傳」(京都駅)の懐石料理でもごちそうしようと試みたが、
待合には長蛇の列。
あと1時間半しないと席が空かないという。外国人と観光客でうかれた日本人夫婦が、愉しそうに英語でぺらぺらと会話していた
(娘はほぼ90%わかったらしいが)
しばらくはそれを聞いて旅行気分に浸っていたのだが、やはり今日はやめておこう。




それで、伊勢丹の食堂街「ハマムラ」で中華を食べる。
海鮮のあんかけや、酢豚、チャーハン、小籠包、春巻き、スープなどをオーダー。

正直、少々残念な気持ちで席についたのだか、それでもカウンターからみる夜景はきれいだし、
ちっとも油もたれしない大衆中華で十分においしかった。

特筆すべきは、胡麻だんごである。外皮も胡麻がたっぷり付いてサックサクの生地。



胡麻餡のペーストがたっぷり入っていて、〆には十分の甘味であった。


9時にはホテルへ帰り、バスタブにお湯をはって
のんびりと足をのばして泡風呂で入浴をする。
今日はいつもよりもっと長風呂にしよう。

おそらく、娘はまだ少しくらい勉強するのだろうし…とばかりに

お風呂のなかに飲み物を持ち込み、
中島京子の「小さいおうち」を読む。
確かフリーライターから作家に転身し、直木賞をとった作家だった。

お手伝いのタキさんの視点で、昭和モダンな東京の暮らしが描写されていて、実に丁寧で、うまくできた小説である。



風呂からあがったあとは、

備え付けのワッフル地のパジャマに着替えて、ほんとうならビールを飲みたいところを我慢して、
ベッドの背に頭をつけて、再びの読書にこうじる。


翌日も、娘は入試だ。おつかれ!

予想どおり、ホテルの机で英語を勉強していた。問1・2は全問正解した!とうれしそうだ。

まあ、慌てないで普通にやればそう失敗することもないだろう。

私はのんびりとつかのまの非日常を満喫させてもらっていた。