7月になった途端、夏の気温・夏の陽気になった。
山の緑も鶯色からすっかり濃くなっていく。
6月はわたしにとっては特別な月だ。
なんといっても昨年の婦人科系の大手術の末、あらたに自分が再生した記念すべき月なのである。
そういう経緯があるのか、ないのか。本当に6月は自分がもうすぐ不治の病にでもなるのではないかと思うほど、
沢山の友人から連絡があり再会することができたのだ。
それは、ひとつの仕事が「呼び水」となって、次々と新しい仕事が入る時のように、お友達との連絡も次々!という感じであった。
せっかくなので出来るだけ断らずに仕事と両立させながら再会を果たすことができて大変にうれしい。
6月中旬頃には、高校の時の友人から誘われて、宇治に出掛ける。
紫陽花を愛でるためである。
紫陽花は初夏の花だ。神戸森林植物園や兵庫県川西(能勢電鉄「畦野駅」)の「頼光寺」にはこれまで出掛けたことがあったが、
今回の友人のリクエストは「三室戸寺」。
前日は幸運にも雨だった。やはり紫陽花を見るには雨後が一番である。
最寄り「JR三室戸駅」には、10時半に到着した。
国道沿いに歩いて10分。赤い山門が見えてきた。
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その隣には、5千坪の森(大庭園)紫陽花の園が鎮座していて、
それらを横目で眺めながら、まずは本堂へ。
山へ向かっててくてくと歩き、ふうふういいながら本堂までのぼった。
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ハスの池と山の景色が望める小さな庵で一服。
吹く風がやや湿気をおびていたが、爽やかな夏のにおいをはらんでいた。
さて、紫陽花もいいが、蓮もとても美しかった。
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ピンと張った黄色や白の花弁がなんとも清楚でかっこいい。
蓮という花は、背筋を正して愛でる花だ。中をのぞかせてもらうと、さらに心洗われる。
特に白の蓮が一段と素晴らしかった。
本堂から向かって左手には、阿弥陀堂と三重塔、鐘楼があった。
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この寺は1200年前、光仁天皇の願により岩渕より出現された千手観音菩薩を五ご本尊として創建。
暗くてよくみえなかったが、厳かないい仏様で、ありがたい気持ちで手をあわせる。
可愛いウサギや、蛇の像も。
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帰りは紫陽花の森(大庭園)をゆっくり愛でながら、
沢山おしゃべりをして、写真もいっぱい撮って降りていく。
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紫陽花の、魅力とはやはり自然の森との調和ではないだろうか。
街路樹などでみかける紫陽花よりも絶対にイキイキしているし、
森の緑と、紫陽花はなんともよく映える。
グリーンの海に、パッ、パッと湧き出たように咲くさまが、美しい。
花弁の色もそれぞれ色合いが微妙に違って、水を混ぜて溶いた水彩画のブルーや紫の透明感を思い出す。
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お昼はどこでたべましょうか。
帰り道で赤い紫蘇ジュースを売っていらしたおばさんに、オススメのお昼処を聞く。そして、
日傘をさしても全くよけようもないほど熱い陽気のなかを再びてくてく歩いて、京阪電車で宇治駅まで行き、「宇治平等院」の表参道まで。
(途中宇治の橋に川面から虫の大群に襲われたのが不思議な体験)。
電話で予約をいれた甲斐があって、店主が店先まで出てお出迎えしてくれた。
みると本日売り切れ終了の看板が。
にもかかわらず、地元で人気と評判の蕎麦処「ながの」でお昼をいただくことができた。
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おいしい茶そばというのを、生まれてはじめて食べたのかも。
茶の味がすっきりしていて、いいにおいのお蕎麦であった。
昔、萩で食べた瓦蕎麦(茶蕎麦)よりも断然おいしかった。
このあと、せっかくなので宇治の平等院へ。改修工事中で鳳凰のすばらしい平等院はお目にかかれなかったがそのかわりに「鳳翔館」をのぞく。
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ひんやりとした冷たいコンクリート造りの建物で、平安時代の梵鐘、仏像を拝観することができた。
なかでも心に響いたのは、なんといっても雲中供養菩薩像52体(国宝)だ。
右方になびく雲の上に正面を向いて坐り、笙(しょう)を奏する姿や、
蓮華座の上に膝をついて座り、両手に拍板(はくばん)を持っている姿。
持ち物を抱いている姿、音楽にあわせて踊る姿など、そのいでたちがあまりに優美で極楽浄土を描く平等院ならではの菩薩像という感じでよかった。
心が高揚してしまった。
表参道のお茶屋さんをひやかしながら、やはりここは
「上林春松本店」でお茶を買って、かの有名な「中村藤吉」本店へ。
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川面からわたる風が初夏という感じが気持ちよかった。
超人気店のために約40分くらい並んだ。
ここはかつては由緒あるお茶屋さんだったのだろうが、今はアルバイト君がほとんど甘味をつくっていると思う。
それでもせっかくなので、長い行列に並んで「生茶ゼリーのパフェ」をいただく。友人としばしの一服だ。
このあとイラストレーターのHさんと用事があったので最寄りの高槻で会い、
京都のおいしい珈琲店で再会。冷たいカフェモカを飲んでから帰る。