東洋のベネツィア(またはベニス)ともいわれる「淡水」。
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実際にはもっと庶民的で素朴だ。
淡水河口沿いの道路が整備されていて、レンタサイクルで走るには最高に気持ちいい。
かつてスペインやオランダに統治されていたため、異国情緒あふれる建築物がまだ残っていて、
淡水河に沈む夕日は美しかった。
「レッドスリーカフェ」はライトアップされた洋館3階にあった。
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結構な高台になるので観光客も少なく、
オシャレな台北の若者たちでにぎわっていた。満席のため、テラス席へ。
遠くには海の夜景が臨めて雰囲気抜群である。
船舶と島の灯りがキラキラとして、
それを眺めているだけでお喋りがはずむ。
私たちは、ビールを飲み、魚介のパスタを食べ、フィッシュアンドチップスを食べ、そしてパンケーキまで注文した。いくらでも食べられそう。
全く満腹を感じない、子どものようだった。
ここは確かに台北なのだけど、なぜだかタイのチャオプラヤー川沿いにあるタイレストランを思い出した。
赤や青の電球が頭の上にいつくも下げられ、こうやってテラスで夜風に吹かれながら、すごくリラックスして、
思いっきり料理を平らげているシチュエーションが重なったのだろう。
愉しくて、愉しくて。
胸の奥から脳天までこのワクワクが、ドキドキが連鎖している。
何かあるとすぐに「キャー!」「キャー!」「ハハハ」と声をあげてしまいそうだった。
そんな高揚感をつのらせたまま、1時間半くらいで店をあとにし、先ほど上ってきた急な石の階段を1段、1段と今度は下っていく。
降りたら、歩行者であふれかえっていた。
「淡水河邊夜市」である。
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中山路も中正路も淡水の河口沿いも、夜店が続く。活気ムンムンだ。
ものすごい雑踏のなかを、時々、派手な車やオートバイや自転車が横切っていく。
それは幻想的というかまるで夢を見ているみたいな、お祭り騒ぎだった。
私たちはローカル住民にしっかりと混じって、淡水名物の酸梅湯(ドリンク)を飲み、
「アーポーティーエダン」で ウズラや鶏の煮込み卵のお土産を買い、
背の高いソフトクリームを舐めながら、風にふかれて河口沿岸の散歩を愉しんだ。
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芝生の広場では、あちらでもこちらでもカラオケ大会が開かれていた。
なぜか演目は日本の歌謡曲、そして演歌、演歌、演歌!
それがなんだかおかしいやら、誇らしいやら…。
サザンの唄も店前のカセットから流れていた。
ここで河口付近に駐輪していたレンタサイクルに乗り換えて、
もう一度駅まで自転車を走らせる。
しかし、人、人、人で自転車を押して歩く。
まだカラオケは大盛り上がりのよう。台湾人の演歌がいつまでもやまない。
「淡水」を後にすると、夜市の愉しさに興奮してしまい、
今度はまたまたMRTに乗って台湾最大といわれる「士林夜市」へ。
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ここはまたまた人混みなのだけれど、淡水とは違う怪しくて生ぬるい空気感。アジアっぽい夜市だ。
入り口の店でいきなり買ったのはマンゴーとドラゴンフルーツを山盛り。
これはホテルに引き上げてから、お風呂上がりに食べるのだ。
そして、ブティックやお土産屋を数分ばかりひやかして、
お腹がいっぱいのはずなのに「士林市場美食區」へ。
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うわぁー。広い!そしてすごいにおいだ。臭豆腐が特に強烈。
揚げ物やチキンの香りも、すごい。
私たちは、あんなに淡水で食べたにも関わらず、今度は地下1階の屋台フードコートで、
またまた地元ビールとカニの爪揚げ、ラーメン、点心を食べる。
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途中で、お腹いっぱいになってきてどうも揚げ物が食べられない。
ふと隣のテーブルをみると母娘が顔を寄せ合って話す姿がみえ、耳を澄ますと、どうやら日本語(東北なまり)のよう。
それで、こちらから声をかけて合流し、テーブルをくっつけて
「こちらの食事もよかったらどうぞ。もう食べられないの」と話し、
すぐに友達になった。
やはり台北はローカルフードが魅力的なのだ。食は友をつくる。東北の仙台からこられた親子と旅の話をあれこれ交換。
今回は2組のグループと友達になった。
そういうのもまた旅の醍醐味である。
「まだまだ帰らない!今夜は遊び倒す‼」と叫ぶNを連れて、
夜市を後にするのはひと苦労だ。
街はまだまだ暑く、いっそう熱気をおびるよう。どこからあれだけの車やバイクが集まってくるのかと、いうほど
道路はまだ渋滞。
夜市の人は後を引かない。街のパワーが、食べ物や人の笑顔や、屋台のネオンに跳ね返って、
どんどん膨れ上がっていくようだ。
結局、11時過ぎまで遊びまわって、またまたMRTに乗車して、
シェラトン台北の部屋まで辿り着いたのは11時40分だった。
バスバブに浸かったらすぐに眠気に誘われて、バスローブのまま1時前には眠ったのだろうと思う。夜中3時に目が覚める。
明日はいよいよ帰国である。
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