月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

いよいよ台北最終章。小さな国で、もっと小さな自分と見つめ合う時。(6)

2013-11-04 17:52:56 | 海外の旅 台湾編



5時過ぎには目が覚めた。
シャワーブースに飛び込み、ぼんやりした頭を覚醒させたら、文庫本をもってバスタブへ。
昨日夜市にて買い求めたフレッシュマンゴーの果肉を口の中にほうり込む。
あ~至福!朝のビタミンC。 お風呂で行儀悪く食べるのは最高だ。

7時には1階の朝食バイキングへ降りていった。
最後のホテルラウンジだ。いい緊張感と、爽やかな朝の空気がみなぎっていた。



私たちは、朝から食欲旺盛。焼きたてパンやベーコンエッグなどの洋風メニューはカットして、
お粥やラーメン、台湾惣菜をたくさん食べ、コーヒーを3杯もお代わりして。
デザート類もたくさん食べた。

さあ、この日はどこへ行こうか。

「101」や「誠品書店」に行って、旬のファッションを見ようか。
老舗茶芸館「紫藤盧」(80年前日本統治時代大正末期に建てられた日本家屋の風格を残したまま、改装を重ねてきた建物)に
タクシーで行こうか。それとも、
台湾一の漢方、乾物、布問屋街としてにぎわう「迪化街」とハイソな「中山」界隈か。
ああ、やはりあと1日は欲しかったなぁ。
調べてみると、どの街のどのショップも、11時にならないとオープンしない。
毎晩、夜市でエキサイトする台北市内は、昼前じゃないと活動しないのか。なるほどと妙に納得する。

それで、「故宮博物館」に9時から出掛けることにした。(ここを観ずにして日本に帰るのも忍びない)

「故宮博物館」のオープン時間にあわせてタクシーを急がせ、混雑する前に入館。

手荷物を預けると、悠久の歴史にどっぷりと浸かることができた。

(ホームページから引用)

故宮博物館のすごいところは、
新石器時代から青銅器時代、宗、栄、明晩期、清晩期と…、時代をさかのぼって観覧できるところ。
そして、王家の秘宝から、磁器、暮らしの用具、書、美術、家具と一堂に展示されているから、見ごたえたっぷり。
それに、博物館といっても、美術館のような部屋もあり、
書画の展示室は2F階の西側で、「筆に千秋の業あり」、「造形と美感」とそれぞれ書法と絵画の常設展を開催。
3Fの303展示室および305、307展示室では「新石器時代」と、「古代青銅器の輝き-中国歴代銅器展」などの器物展覧。304展示室では「名匠の魂と神仙の業―明清彫刻展」を。
中国歴代陶磁器、皇室コレクション、家具、漢字の源流、玉石彫刻、宝飾などの常設展のほか特別企画もしている。

真っ赤な絨毯を進み、2階、3階もオール見学。
小さな展示の部屋もざーっと訪ねて、有名な清の「翠玉白菜」「肉形石」までほぼ観た。



驚いたのは、日本の博物館では古いものはセピア色に褪せ、古布の絵画なども見えないほどボンヤリした表情で、
時間の経過さえ価値あるものとして見せるのに対して、この国の宝物類はよほど修復技術が素晴らしいのかしら。
実に鮮やか、真新しいまでにピカピカに輝いている。

そして、最新映像技術などを駆使した3Dの世界も(古代の美術や暮らしの紹介)も採用され、
新旧の融合が違和感もなく調和しているのが、逆にユニークに思えた。

明代前期からの磁器・漆器や家具。暮らしの用品に、花鳥画の絵画は特に美しかったが、
それでも、日本贔屓なのか日本の奈良時代や平安の頃の宝物のほうが、趣があるなぁと(失礼なこと)思ったりしながら、
たくさんの傑作や宝物の数々を2時間くらいかけて観た。
1階2階のミュージアムも充実していた。



このあと、タクシーで「台北圓山大飯店」(グランドホテル)まで行って写真撮影。




そして、宿泊先であるシェラトン台北の裏手にある茶藝店「徳也茶喫」で
角煮や点心、宮廷菓子、烏龍茶のランチメニューを予約していたので、急いで戻るようにお願いしていたのだった。


それが、えらいことになったのだ。
はじめて、あまりよろしくない台北の人に出くわしてしまったのである。

タクシー運転手は、乗った瞬間から饒舌で超笑顔。
なんて人懐っこくて、感じのいい運転手さんだろうと思ったりしたのは乗車してほんの5分だけだ。

もう、カタコトの日本語と英語、台湾語のミックスでしゃべる、しゃべる。

そのほとんどの内容が「私は日本人大好きです。日本人の誰々さんをどこそこに案内した..」
「◎◎さんは知っている。◎◎さんもよい人だった」
「誰々は友達だ」
と、こちらの知りもしない一般の日本人の名前を羅列。「日本の大学は素晴らしい」「日本の鎌倉はよかった」という自慢話オンパレード。
そればかりか、運転が危ういのだ。

しゃべりながらも、日本人の名刺や書いたメモ帖を出そうとして、ハンドルはフラフラ。
何度、前の車と激突しそうになったことか。どんどん、後ろから横から抜かされていく。

わたしたちの予約していた時間は11時半。
12時半には、旅行会社の車で空港に向かわねばならない。
今日は台北の最終日。ほんの数分でも貴重で大事にしたいところだったのである。
だから、急いでほしい!とお願いしても、無視。
大丈夫、OKと、マイペースでにこやかに喋る、喋る。

朝には20分たらずでぶっ飛ばした高速道路を、往路には25分かかっても市内に入らないのだ。

あげくの果て、予約していた「徳也茶喫」は、「よろしくないからね~」と、いい、茶文化について論じたあげく、他店を紹介しはじめる。
さあ、温厚で人の良い私だって、そろそろ切れ出した。英単語連発で
半ば命令的に行き先を懇願しはじめた。

しかし、ここで、怒り爆発する事態が…。

なんと市内にようやく入ったと思いきや、着いた茶藝館は、お目立ての場所ではなく
運転手の知り合いの茶商だったのだ。
烏龍茶の卸・小売り専門店。試飲もできないし、茶藝を愉しむことなんて全くできない
古い裏路地の倉庫のような店だった。


中から「いらっしゃいませー」と厚化粧の小太りマダムがでてきたのだから、ビックリである。
すぐにマダムに事情を話して、梨山烏龍茶を購入したから「ノーサンキュー、ノーサンキューね」を連発。
再び、タクシーに乗り込んだ時は、不機嫌このうえない。
徳也茶喫!早く!を連呼する始末。

しかも、このタクシー運転手。迷いに迷って店をさーっと通り越し、大通りでウロウロ。
もうー、私は完璧に切れた。
だって店は、宿泊ホテルの真裏ですもの。
強い口調を発して、タクシーを途中で降りて(料金は支払いましたよ)。
なんと地図傍らに徒歩でようやく目的地へ辿り着いたのだ。
店の扉をあけて息を切らし、アンティークの重厚な紫檀の椅子に座ったのはナント、ピックアップの時間20分前。

熱いお湯が運ばれてきて数分。
はあ~。喉渇いていたのよ~と思うや、料理を作るのが10分はかかるという。私はお茶を飲まずして、さっそく台北シェラトンに戻って事情を話し、
出発を15分遅らせてほしいと、現地コーディネーターに頼みこんだのだが…。(飛行機が飛ぶのは4時、現在は12時20分)
あれほど優しくて融通の利く台湾人はいずこに。(やはりチップを払うから、と言えばよかったのだろうか)
いきなりルール違反だと怒りはじめたのである。

ということで、私たちはせっかくのお昼セットをキャンセルし、お腹も満たされないまま
台湾桃園国際空港に戻らねばならなかったのである。

哀しい~。せめて、注文した烏龍茶(文山包種茶)は飲みたかった。


しかし、2泊3日の台北への旅。心残りを置いてきたまま飛行機に飛び乗ったのは、
まあ考えようによっては良かったのかも知れない。再びリベンジを決意できるに違いないから。

振り返れば、いろいろ蘇る、あれこれ。小さな失敗は数しれず。
(旅をすれば、素の、とても子どもっぽい自分にも遭遇するわけで…。自分発見の時でもあるのだ)

あえて言おう。
台北の魅力は、日本人とみればともかく声をかけてくれる人懐っこい温かさ。
そしてディープな匂いなのに、口に運べばビックリするほど旨味が強い、素朴ローカルフード。
青々しい梨山の高山茶もさすがに本物だし、
標高の高い茶園ならではの深みのある清涼な味わいは想像以上だった。

マンゴーのスイーツやタピオカ入りミルクティー、淡水の酸梅湯も衝撃だった。
龍山寺から西門町へ、淡水、永康街、中山、士林方面へと沢山歩いたので、
陽のあたる台湾の顔と陰翳の顔にも遭遇!
狂犬にも吠えられたり、
最後には茶商のブローカーにも出会ったりして…。そしてフィナーレーは故宮博物館の秘宝を観てシメ。

今も記憶に残るのは、頬をピンク色に蒸気させて、両手に子どもの手をギューッと握りしめ、はしゃぎまくって夜市へ向かう、
親子たちやおばちゃん、おじちゃんのたくましいパワーだ。
特設ステージで繰り広げられる河口沿いの日本語カラオケ慕情大会も。

この国の人達は、なぜあんなに夜になるとイキイキとして精気にあふれ、パワフルになるのか。
そして外食への愛に、命を燃やして食べまくるのか。
ともかく活きる、食べる、したたかさ…。
いろいろな台湾事情を目に焼き付けてきました。
しかし、それでも私たちは所詮ビジター。ひとときの台北の顔をチラリ拝ませていただいただけ。
本当の。ゆるやかに流れる普段の台湾時間をしらない。






旅はええです!
こうやって回想し、書いているだけで、元気になれるから。
日本は、いよいよ11月。深まる紅葉の季節を迎えます。日本に戻るとはぁ~「人」の正義感みたいなところにほっとする。
台湾もいいけど、日本の原風景もまたええもんです!




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台北旅行記)2

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