月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

夏日記のつづき 海水浴編(第3週目〜8月17・18日)

2019-09-11 23:50:54 | writer希望を胸に執筆日記




8月17日(土)晴

今日から、Nが帰省してくるので、朝からリビングや子供部屋に掃除機をかけて、めったにしない水拭きなどを。そして大急ぎでごはんをつくる。

昨晩「イカリスーパー」から買った「金目鯛の白味噌漬け」をメーン食材にして、京風の白味噌漬け金目鯛の焼き物、ゴーヤの酢の物、大葉とトマトのごま風味サラダ、もずく酢、キャベツの味噌汁。

Nは、ほっぺたがふっくらとした。よく笑うので、まぁ体調は悪くないのだろう。

午後から、歯科の予約をしていたので、家族そろって行き(Nは近くのカフェでお茶)、そこから郊外型の大型スーパー(イオン)に。ハワイアンのパンケーキ屋さんでお茶して、ペットショップをのぞいた。


そうしてこの、愛くるしい、『妖精』のようなキャットと出会ってしまったのだ。








まだ生まれて3カ月足らずであるのに、瞳には穏やかな品格が漂っていた。ブルーグレーの中に微かな黄味かかっている。品種は「ノルウェージャンフォレストキャット」。
Nと私は、ガラスに吸い寄せられるように、すばらしくバランスのとれた華麗なキャットを放心状態でみつめる。
(永遠にみていたいと思うほど)


すると、薄ピンク色の白衣をきた女性店員が、どうぞと、ばかりに私たちの前に、キャット!を抱きかかえてきて、
すっぽりと私の胸の前に。
生後3カ月のあかちゃん猫をそっと抱いてきては手渡してくれたである。




ふわーーー。かわいいこと。ミルクたっぷりの紅茶の色。
頭から顔、尻尾の先まで。ほわほわの産毛をなでると、信じられないくらい可愛くなって愛着がいっそうましてくる。

途中で、Nに呼ばれて登場した夫も(散髪していたらしい)、
しばらく硬直するも。うれしそうな、そして、やはり、赤子をみるような微笑みで、耳から首のあたりを強く、激しくなでていた。そして、このキャット!なかなかの甘え上手。

パパの顔に向かって、たかたかっーーっと駆け上がっていっては髭を甘噛みし、猛アピール。
こいつは金をにぎっている奴だと、わかるのかしら。動物的勘で一瞬のうちにそれらを嗅ぎわけ、絶大に甘えていらっしゃるのだった。 買物の帰りに、再び、ペットショップをのぞくと。

キャットさま、なでられ、持ち上げられ、振り回されて疲れたのか、スヤスヤ眠っていらっしゃった。

あぁ、一緒に暮らしてみたい。ケムジャラの妖精と。
出生地が岡山というのも、我らは大いに気に入った。





8月18日(日)晴

明石海峡大橋をわたって、淡路島に。
海の凪はおだやか。鏡のように広く大きな藍色の海がおおらかだ。

お昼を我が家で食べてから、ふらりと岩屋海水浴場にやってきた。











お盆を過ぎたというのに、波はゆったりゆっくり。浅瀬では白砂が透けてみえるほどの透明度だ。

近くには近隣の大学生だろうか、女4人、男が3人くらいでキャーキャーとビーチボールをしている。

また黄色い灯台のみえる岩場の近くでは、灯に焼けた男性のインストラクターの指導に従って、海に浮かべたサーフィンボードの上でヨガのポーズをする人。4人。

手をまっすぐに空にむかって「シューッ」とのばして、そのまま横に体を倒すポーズなど。
よほどバランスよくやらないとボードは転覆してしまうと思うのに、皆さん、うまいものである。

わたしもしばらくは砂浜の上から、そういったユニークな夏の景色・至福を焼き付けてたのしんでいたが、いよいよNとパパが、海においでと誘う。

「入りたいんでしょ。はやくおいでよ。」
 「気持ちいいよ」
 「クラゲいないよ。全然」
 「まだ冷たいよ」

もちろん、はいるよ。夏のうちに海水浴を5分でもしたいといいだしたのは、私なのだから。

小さな貝殻のかたちをした砂や小石をギュッギュッと足の指でにぎりしめ、浅瀬のところでそっと肩をつける。

ヒャー!冷たっ! この自然極まる塩分濃度が最高に気持ちいい。

顔をひょっこりと出すカエルおよぎで、足を蹴って「スイーッ」とゆるり進む。

よいねー。うん 。

よい気分。

海の自然を全身で感じて。そのまま10分ほど。無心になって泳いだ。

「ふーーっ」!







これで、夏の禊ぎは完璧だろう。


7月末。京都下鴨神社のみたらし祭ではおなかの中に、水の神様をお迎えして。
そして、これまた海の潮の恵みを全身で感じられるとは。




6時過ぎ。首やひたいが小麦色にやけた短髪のわんぱく坊主たちが連れだって泳ぎにきた。


おそらく近所に住んでいるだろう。独特の安定感のある泳ぎ、遊び方なのだった。





また、ひょっこりと現れたのは、80歳近くのおじいさん。
あばら骨が透けてみえそうなほど肉質の少ない痩せた体に、トランクスの海水パンツをちょんと腰の先につけてこっちに向かって歩いてきた。

おもむろに準備体操。ぐるぐると腕をまわし、足首もぐるぐる。ちょっぴり、よたよたしているが、目に鋭い意志が宿っている。砂浜をちょっと走ってみたりもして。いくぞ、と思ったら。
いきなり、どぼん!と海を風呂のように浸かり3分で上がった。そして、またあばら骨のみえるひょろひょろの体に濡れた海水パンツをちょこんと腰につけたままで、すたすたと歩き、帰って行った。



夕ご飯は、「淡路夢ホルモン」に行く。











住宅地の真ん中から細道を突っ切って、海からの最前列にこしらえたトタン屋根の絶景レストラン。

ポツン。ポツンと。かぼそく光る船の灯りしかしかみえないが、しっかりと波がたつ、夜の海の気配が店の中まで漂ってくるようだ。夜の海は、色々な生きものがうごめいている。豊富な生命や栄養分を蓄えて。

店主が厳選したという淡路ビーフホルモン。
例えば、国産牛白もつ、テッチャンなど。
おいしいのかな、と心配だったりしたが、これが肉の味にほのかなミルクっぽさが隠し味にあって。浸けタレはぴりっと辛く、肉は噛むほどにやわらかく。最高だった。脂も甘く、上質なので、たくさんの部位を注文した。

地元農家直送のコーンやタマネギ。淡路牛カルビ、塩タン、淡路鶏。

臭みのない旨い塩タンを久しぶりに味わった。
淡路産のクラフトビールに最高のごちそう。