『鬼平犯科帳』は群像劇です。ですから、必ずしも長谷川平蔵が主人公とは限らない話が、結構あります。
この『老盗の夢』も、その一つ。
大盗・蓑火の喜之助(橋爪功)は、「殺さず、犯さず、貧しき者からは盗らず」の三原則をきっちりと守って”おつとめ”を行った伝説の盗賊。すでに引退し、京都にて、盗賊時代の手下(梶原善)が営む宿屋の隠居に収まっていました。
このままいけば、畳の上で大往生できる。そんな”幸せ”な盗賊人生となるはずでしたが、ある女性(北野きい)との出会いが、それを狂わせてしまう。
この女性を相手に、若い頃果たそうとして果たせなかった「夢」を今度こそ果たそうという情念が、再燃してしまう。
生涯最後の”おつとめ”を、行おうと画策し始めるのです。
「蓑火」とは、使い物にならなくなって打ち捨てられた蓑が、まったく火の気のないところで突然燃え出す謎の現象のこと。「鬼火」などとも呼ばれる現象のことをいいます。まさにこの「蓑火」の如くに、若い頃の情念が再び燃え上がってしまった「老盗」の哀れさ。
長谷川平蔵の密偵・小房の粂八(和田聰宏)は、師とも慕う喜之助が再びおつとめを行おうとしていると察知し、これをなんとか押しとどめようとします。
「蓑火のおかしらだけは、畳の上で死なせてやりてえ」
そんな粂八の願いもむなしく…。
物語は喜之助と粂八を中心として進み、長谷川平蔵(松本幸四郎)は要所要所で指図をするだけであまり登場しない。でもこの平蔵の存在が、物語をぎゅっと締める。やはりいなくてはならない存在。
もう何度も何度も観て、よく知っている話ではあるのですが、だからこそ
名優・橋爪功が、蓑火の喜之助をいかに演じてくれるのか、それが楽しみでした。
期待に違わぬ名演!橋爪功さん、あなたは素晴らしい!!👏👏👏👏👏👏
脇役陣も益々役にハマってきましたね。中村ゆりさんえんじるおまさは、もはや梶芽衣子さんを引き合いに出す必要もないくらいに、さまになっています。
それとやはり私のお気に入り(笑)浅利陽介演じる木村忠吾が良い!浅利忠吾の存在は、重くなりがちな物語に明るさを与えてくれる。
とても貴重で必要な存在ですね。
よく知った話だし、ありきたりといえばありきたりな話ではあるのですが、やはり名優が演じると一味も二味も違う。
丁寧に作られた、良い時代劇でした。
時代劇はやはり、良い!
火野正平さん、撮影時にも体調があまり芳しくなかったのか、室内シーンだけの出演でしたが、そこにいるだけで、なんとも良い風情を感じさせてくれます。
ラストシーンは長谷川平蔵と火野さん演じる相模の彦十が、酒を酌み交わしながら昔語りをするシーンで終わります。粋な演出に涙。
火野正平さん、お疲れさまでした。
ありがとうございました。
次回作は『むかしの女』ではなかったですね(笑)。でもこの『暗剣白梅香』も好きな話です。
こちらも長谷川平蔵は脇に回り、平蔵の命を狙う「仕掛人」が中心となる物語ですね。この仕掛人を誰が演じるのかを含めて、こちらもまた
楽しみです。
長谷川平蔵といえば、大河ドラマ『べらぼう』で中村隼人さんが演じている長谷川平蔵も良いですね。
昨日は久々の登場で、以前よりも貫禄が若干増した感じ。でも蔦重に向かって、粟餅云々を語った後
「俺今、いいこと言った?」みたいな表情をするところが、なんとも可愛らしい(笑)。こちらの平蔵さんの今後も
楽しみです。