再びキリスト教がまだない時代のいわゆるヘレニズム期(アレクサンドロスの東方遠征によって生じた古代オリエントとギリシャの文化が融合したギリシャ風の文化が花開いた時代であり、アレクサンドロス3世治世からプトレマイオス朝エジプト王国が滅亡するまでの約300年間、即ち、ローマの属州となるまでの時代を指します)に生まれた、薔薇に関する詩(サッポー以外の)をご紹介しておこうと思います。
アルカイック期におけるギリシャの植民地
ギリシャの植民地は、ローマのものとはちがい、母体の都市に依存せず、それぞれの権利を持って独立した都市でした。
ヘレニズム期の9歌唱詩人には、シモニデス(Simonides of Ceos、合唱詩、ca. BC 500), アルクマン(Alcman of Sparta、合唱詩、ca. BC 700)、サッポー(Sappho of Lesbos、独唱詩、ca. BC 600 )、アルカイオス(Alcaeus of Mytilene、独唱詩、ca. BC 600)、アナクレオン(Anacreon of Teos, 独唱詩、ca. BC 600)、ステシコロス(Stesichorus of Metauros, 合唱詩、ca. BC 600)、イビュコス(Ibycus of Rhegium, 合唱詩、ca. BC 600)、ピンダロス(Pindar of Thebes, 合唱詩、ca. BC 500)、バッキュリデス(Bacchylides of Ceos, 合唱詩、ca. BC 500)がいます。
薔薇の花を沢山詠んだアナクレオン、アルカイオスから一編ずつ、薔薇の詩はこれしか詠まなかったステシコロスの詩から一編選びました。残りの歌人の詩は殆どと言っていいくらいに残っていません。
アナクレオン(Anacreon of Teos)
116 バラの上
あなたにそよぐ芳しい甘い花
あなたの素敵な吐息、咲き誇る薔薇
詩を詠おう、友よ
花冠は春の贈り物、
彼女は快活に微笑み歩いてくる。
夏は後ろからやって来る。
夏の薔薇の花輪が膨らむ
花冠を揺らし輝く女王
膨らむ喜び
神々の息吹はバラの香水。
バルビトス(Barbitos, 竪琴の一種)を持ったアルカイオとスサッポー
ヒュドリア、ブリュゴス(Hydria, Brygos)画、BC 510〜500 (ミュンヘン)
https://soundcloud.com/ancient-lyre/the-ancient-greek-barbitos で音色を聴くことができます。この楽器奏でるの音楽は飲酒パーティで鳴らす竪琴であると言われ、この楽器はテルパンデル(Terpander BC 7ギリシャ音楽の父)の発明と言われています。)実際に竪琴の音色を聴くとその逞しさに驚かれることでしょう。
アルカイオス
秋
見よ! 優しい秋の花
丘の上は紫色に染まっている、
薔薇は木の下で枯れ、
ディルは姿を消した。
肌を刺す眩しい朝の空気、
午後は光に満ちて、
ヘスパー(Hesper)※は夜を告げる
そよ風が湿気を帯びて冷たい。
葡萄の、紫色の収穫
圧搾機の中で血を流す、
やがてワインの毒味にバッカスがやって来る
※ ヘスパー
ギリシャ神話では、ヘスペリデス(Hesperides )はギリシャ神話に登場するニンフ達で世界の西の果てにある「ヘスペリデスの園」に住んでいる、黄昏の娘たち。
ギリシャ花瓶下段;コルキス(Colchis)からの帰国の間、ヘスペリデスの庭にアルゴナウタイ(Argonauts、コルキスの金羊毛を求めてアルゴー船で航海をした英雄達)が到着し、迎えるヘスペリデス3人。真ん中にあるのは黄金のリンゴの木。
- B.C. 420 - 400 British Museum, London
3人のヘスペリデス(左から右へ)は、花瓶にアステロープ(Asterope)、クリソテミス(Chrysothemis)、リパラ(Lipara)と名が書かれています。黄金の林檎の木には竜に似た蛇ラドン(Ladon)が巻き付いています。
(ギリシャ神話に纏わるお話は割愛させていただきます)
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