当院は兵庫県の田舎にあります。
人口構成は田舎の特徴だと思いますが、やはり高齢者の比率が多くなっています。
高齢者が多いとどうしても認知機能が低下した人も多くなってきますね。
認知症と診断されて、ご自身で来院されずお家の人と一緒に外来受診されるかたも多くいらっしゃいます。
認知症と診断された患者さんに対して家族や介護者の中には、患者さん本人は何もわかってない、認知や判断能力がまったく失われている と考えてしまう人もいらっしゃるようです。
しかし、果たして本当に何も分からなくなってしまうのでしょうか??
認知症の高齢者は、自身の体力・知力の衰えから不安になり、また、感情のコントロールする機能が低下することから、些細なことで泣いたり、怒ったりします。さらに進行すると子供や孫さえわからず、名前も忘れてしまうことすらあります。
「そうなったらもう、何もわからないんだよ」と認知症の人の家族や介護者は言います。
確かに認知症が進むといろいろなことを忘れてしまったり、他者の表情から気持ちを読み取る能力が低下してしまいます。
世話をする側も笑顔で優しく接しても、何も分かってくれないと、がっかりしてしまうこともあるでしょう。
ところが数年前に発表された研究によると、そうではなさそうです。
その研究によれば、進行したアルツハイマー型認知症の患者さんに「笑顔」「泣き顔」「怒った顔」などの写真を見せて
「この人どんな表情だろうか?」と尋ねたところ、「笑顔」についてのみ、患者さんの大部分の人が認識できたといいます。
相手の「今、楽しくてうれしい」という気持ちを笑顔から読み取る能力は、最後まで衰えないことが分かってきたのです。
ということは、認知症の人に対しても介護者が楽しそうな笑顔で接することが、とても大切だということになります。
介護者が笑顔を失ってしまうと患者さんもまた不安な表情を浮かべます。介護する人の笑顔が患者さんのうれしい気分と笑顔を引き出すのです。認知症の進行を止めることは難しいかもしれませんが、周りの人の笑顔は何よりのクスリになります。
事実、ニコニコ連れてこられた認知症の方のご家族は 認知症のお話を笑い飛ばしたり、患者さん自身もニコニコ外来でお話してくれます。
こんなに大変で~!!とイライラしながら報告してくれる認知症の方のご家族は 連れてこられた患者さんも無表情でだんまりです。
介護されている人や家族は大変なことも多いかなと思いますが、頭の片隅にでも知っておいてほしいことなので紹介してみました。
参考になればうれしいです。