学会調査報告書からの引用、二回目となります。
前回は年齢分布をもとにした調査結果の説明を加えてみました。
今回添付した図は、この調査結果を疾患別に分析したものです。圧倒的に多い疾患
が、「椎間板ヘルニア」と「脊柱管狭窄症」それに続くのが「変性すべり症」と
なっており、この3疾患だけの合計でも、10829症例となり、今回の全体症例数
16157例の 67%を占めていることになります。単純な言い方をすれば、合併症8.6%
のうち6%はこれらの疾患の手術で発生している。という見方もできるわけです。
前回の年齢分布図からの推測で思春期特発性側わん症の年間手術数は 549例では
ないかと考えたのですが、ここに分析されたデータから、その数は 327症例という
ことがわかります。ただし、327症例のなかには若干の先天性側弯症や症候性側弯症
の患者さんに対する手術も含まれていると考えますと、思春期特発性側弯症に
対する手術数は327症例も若干少ない数ということが言えます。
仮に全体の合併症率8.6%と327症例の関係でいえば、327例の手術での合併症率は
0.172%ということになります。
決してゼロではありません。また決してゼロになることもありえません。
いかなる世界のいかなる事象においても、ゼロを達成することは不可能です。
それが現実であり、それが科学の目でものごとを見る、ということです。
仮に 0.172%であったとしても、“なにか”が発生するということはあるわけです。
そのときに、名医と言われる先生を頼って遠方からやつてきたのに、おかしい !!!
と、あたかも医療ミスのような疑念を持たれるか、あるいは淡々と事実を受け止めて
次にどういう対応をしててくべきかを考えるか、
そこに、これまで話しをしてきたところの「不確実性」というものに対する皆さん
の受け止め方の岐路があると思います。
この調査はいまからほぼ10年前のものですから、手術数自体はこの16157例よりも
はるかに増加しているといえます。
脊柱側弯症手術もおそらく、500~1000例のあいだ程は毎年実施されているのでは
ないかと想像します。
しかし、合併症率というものは、大きく増大も減少もするものではありませんから
ほぼ同じような傾向が続いていると考えられます。
次回に続く