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「ハリーのことは好きだが…」

9/17(日) 11:02配信




 ヘンリー王子が創設した国際スポーツ大会「インビクタス・ゲーム」が、ドイツのデュッセルドルフで幕を閉じた。

近年のヘンリー王子はなにかと批判の的になっているが、「傷痍・退役軍人の心身の回復支援」を趣旨とするこの大会だけは支持を得ている。だが、今年はその評価を危うくする出来事が起こっていた。 



2度のアフガニスタン派遣を経験


 メーガン妃と結婚する前のヘンリー王子は、2005年の士官学校入学から2015年の除隊まで、10年に及ぶ軍歴を持つ軍人だった。

その間もスキャンダルは報じられたが、「国のために戦う王族」という立ち位置が国民からの支持を下支えしていた。  


当時ひときわ注目された件は、2度のアフガニスタン派遣だ。

2007年の派遣は現地入りから約2カ月後に米メディアの報道で明らかになり、帰国を余儀なくされた。

2012年の派遣では、戦闘ヘリコプターから殺害を伴う戦闘に参加している。

この2度の派遣をめぐる批判や議論も存在するが、ヘンリー王子が戦場にいたことは事実である。  


そんなヘンリー王子にとって、「インビクタス・ゲーム」はライフワークの1つだ。今回のデュッセルドルフ大会で6回目となる実績は、大会趣旨が一定の支持を得ている証拠でもある。  


Netflixで8月16日から配信が始まったドキュメンタリーシリーズ「ハート・オブ・インビクタス -負傷戦士と不屈の魂」にも、大会を支持する各国の傷痍・退役軍人たちが出演している。

その第1回でヘンリー王子は、大会の創設を考えたきっかけとして、アフガニスタン派遣から戻る際に輸送機で同乗した若い負傷兵たちの姿を挙げた。 


「仲間が傷ついたことに憤っていました。(負傷兵について)報道されないことや、戻された(=派遣が明るみに出て帰国を余儀なくされた)ことにも」(日本語版字幕)


「彼の記憶はやや曖昧だったとしか言えない」


 一読すると普通の発言だが、実は大きな火種が隠れていた。「(負傷兵について)報道されないこと」の部分だ。  

英大衆紙「ザ・サン」は「我々は何年にもわたって軍人たちを支援している」とする反論記事を掲載した。

傷痍・退役軍人の支援キャンペーンで中心的な役割を果たしている同紙だけに、苦言のコメントを寄せた英国軍関係者の顔ぶれは錚々たるものだ。  


元陸軍参謀総長のリチャード・ダナット氏は、ヘンリー王子のアフガニスタン派遣に際し、報道協定の取り決めに尽力した人物だ。派遣を実現させた立役者の1人だが、今回の発言については「彼の記憶はやや曖昧だったとしか言えません。

なぜなら、退役軍人の福祉に対する真の懸念はその時すでに存在していたからです」と述べた。 


「ハリーのことは好きだ」と前置きしつつ、「彼は別の世界から来たので自分が見たいものを見ている」と述べたのは、車いすラグビーの元英陸軍のバーニ・ブロード氏。アフガニスタンの地雷で両足を失い、2017年には「インビクタス・ゲーム」の英国代表主将を務めた。 


「インビクタス・ゲーム」の金メダリストで元英空軍のアンディ・フィリップス氏は「インビクタス・ゲームは私に大きな力を与えてくれたが、メディアが何もしなかったというのは間違いだ」と真っ向から否定した。


「ハリーのことは今も愛している」だが…


 サン紙の記事を引用してXにポストしたのは、アフガニスタンで片足と片腕を失った元英海軍のベン・マクビーン氏。「ハリーのことは今も愛している」とした上で「英メディアが長年にわたって退役軍人を報道していたことは知っている」と述べた。  


ヘンリー王子から「英雄」と呼ばれたこともあるマクビーン氏だが、サン紙に対しても「彼の背中を15年間支え、常に擁護してきたが、彼の発言すべてに同意する必要はない。この件に関してはサセックス公爵(ヘンリー王子)が間違っている」と断言した。  


以上の苦言が呈されたのは、今回のデュッセルドルフ大会が開催される前のことだ。9日の開会式後は、現地に滞在しているヘンリー王子の動向が連日報じられた。

開会式に現れた反戦派のデモ隊や、なぜか途中参加になったメーガン妃に関する報道もあるが、やはり大会自体を批判する内容はほぼ見受けられない。  


一方で、保守系テレビ番組に出演した元アフガニスタン駐留英国軍司令官のリチャード・ケンプ氏は、以前のヘンリー王子は軍関係者の間で絶大な人気を誇っていたが、近年の王室批判により「残念なことに、彼はそのほとんどを吹き飛ばしてしまった」と指摘した。  


10年間の軍人生活を「人生で最も幸福な時間」と称するヘンリー王子は、2017年に祖父のフィリップ殿下から海兵隊元帥を引き継ぐなど、退役後も軍の名誉職を務めた。2020年の王室引退で役職をすべて失った際は、激怒したともいわれている。  


そんなヘンリー王子にとって「インビクタス・ゲーム」は“最後の砦”といえる。大会の意義は評価されているだけに、ヘンリー王子が自身で砦を崩してしまっては元も子もない。英国軍関係者たちの言葉を選んだ苦言には、そんな心配も潜んでいるようだ。

デイリー新潮編集部

新潮社

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最終更新:9/17(日) 11:02デイリー新潮 














2023/09/17 11:02


「インビクタス・ゲーム」デュッセルドルフ大会でのヘンリー王子とメーガン妃(デイリー新潮)


 ヘンリー王子が創設した国際スポーツ大会「インビクタス・ゲーム」が、ドイツのデュッセルドルフで幕を閉じた。

近年のヘンリー王子はなにかと批判の的になっているが、「傷痍・退役軍人の心身の回復支援」を趣旨とするこの大会だけは支持を得ている。

だが、今年はその評価を危うくする出来事が起こっていた。


2度のアフガニスタン派遣を経験

 メーガン妃と結婚する前のヘンリー王子は、2005年の士官学校入学から2015年の除隊まで、10年に及ぶ軍歴を持つ軍人だった。

その間もスキャンダルは報じられたが、「国のために戦う王族」という立ち位置が国民からの支持を下支えしていた。


 当時ひときわ注目された件は、2度のアフガニスタン派遣だ。2007年の派遣は現地入りから約2カ月後に米メディアの報道で明らかになり、帰国を余儀なくされた。

2012年の派遣では、戦闘ヘリコプターから殺害を伴う戦闘に参加している。

この2度の派遣をめぐる批判や議論も存在するが、ヘンリー王子が戦場にいたことは事実である。


 そんなヘンリー王子にとって、「インビクタス・ゲーム」はライフワークの1つだ。

今回のデュッセルドルフ大会で6回目となる実績は、大会趣旨が一定の支持を得ている証拠でもある。


 Netflixで8月16日から配信が始まったドキュメンタリーシリーズ「ハート・オブ・インビクタス −負傷戦士と不屈の魂」にも、大会を支持する各国の傷痍・退役軍人たちが出演している。

その第1回でヘンリー王子は、大会の創設を考えたきっかけとして、アフガニスタン派遣から戻る際に輸送機で同乗した若い負傷兵たちの姿を挙げた。


「仲間が傷ついたことに憤っていました。(負傷兵について)報道されないことや、戻された(=派遣が明るみに出て帰国を余儀なくされた)ことにも」(日本語版字幕)


「彼の記憶はやや曖昧だったとしか言えない」

 一読すると普通の発言だが、実は大きな火種が隠れていた。「(負傷兵について)報道されないこと」の部分だ。

 英大衆紙「ザ・サン」は「我々は何年にもわたって軍人たちを支援している」とする反論記事を掲載した。

傷痍・退役軍人の支援キャンペーンで中心的な役割を果たしている同紙だけに、苦言のコメントを寄せた英国軍関係者の顔ぶれは錚々たるものだ。


 元陸軍参謀総長のリチャード・ダナット氏は、ヘンリー王子のアフガニスタン派遣に際し、報道協定の取り決めに尽力した人物だ。

派遣を実現させた立役者の1人だが、今回の発言については「彼の記憶はやや曖昧だったとしか言えません。

なぜなら、退役軍人の福祉に対する真の懸念はその時すでに存在していたからです」と述べた。


「ハリーのことは好きだ」と前置きしつつ、「彼は別の世界から来たので自分が見たいものを見ている」と述べたのは、車いすラグビーの元英陸軍のバーニ・ブロード氏。

アフガニスタンの地雷で両足を失い、2017年には「インビクタス・ゲーム」の英国代表主将を務めた。


「インビクタス・ゲーム」の金メダリストで元英空軍のアンディ・フィリップス氏は「インビクタス・ゲームは私に大きな力を与えてくれたが、メディアが何もしなかったというのは間違いだ」と真っ向から否定した。


「ハリーのことは今も愛している」だが…

 サン紙の記事を引用してXにポストしたのは、アフガニスタンで片足と片腕を失った元英海軍のベン・マクビーン氏。

「ハリーのことは今も愛している」とした上で「英メディアが長年にわたって退役軍人を報道していたことは知っている」と述べた。


 ヘンリー王子から「英雄」と呼ばれたこともあるマクビーン氏だが、サン紙に対しても「彼の背中を15年間支え、常に擁護してきたが、彼の発言すべてに同意する必要はない。

この件に関してはサセックス公爵(ヘンリー王子)が間違っている」と断言した。


 以上の苦言が呈されたのは、今回のデュッセルドルフ大会が開催される前のことだ。

9日の開会式後は、現地に滞在しているヘンリー王子の動向が連日報じられた。開会式に現れた反戦派のデモ隊や、なぜか途中参加になったメーガン妃に関する報道もあるが、やはり大会自体を批判する内容はほぼ見受けられない。


 一方で、保守系テレビ番組に出演した元アフガニスタン駐留英国軍司令官のリチャード・ケンプ氏は、以前のヘンリー王子は軍関係者の間で絶大な人気を誇っていたが、近年の王室批判により「残念なことに、彼はそのほとんどを吹き飛ばしてしまった」と指摘した。


 10年間の軍人生活を「人生で最も幸福な時間」と称するヘンリー王子は、2017年に祖父のフィリップ殿下から海兵隊元帥を引き継ぐなど、退役後も軍の名誉職を務めた。

2020年の王室引退で役職をすべて失った際は、激怒したともいわれている。


 そんなヘンリー王子にとって「インビクタス・ゲーム」は“最後の砦”といえる。大会の意義は評価されているだけに、ヘンリー王子が自身で砦を崩してしまっては元も子もない。

英国軍関係者たちの言葉を選んだ苦言には、そんな心配も潜んでいるようだ。

デイリー新潮編集部

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