漢文調のところがちょっと難しかったけど、中国の昔話、寓話のようで面白かった。
自尊心が強すぎて、詩に執着し虎になってしまった男の話。
李徴は博学で才能もあるが下級の役人であることに満足できず、詩家として世に名を残したいと思い、仕事を辞め故郷に帰り、人との交流も絶ってひたすら詩を作った。しかし、思うような詩はできず生活にも困り、妻子を食べさせるために仕方なく数年後また下級役人に戻った。ところが、その間に同僚達は出世し、自分はその部下になって命令を聞かなければならない。自尊心は傷つきその悔しさのために、ついに李徴は発狂し出張先で行方知れずになってしまう。(「俺はまだ本気出してないだけ」のDVD見ればいいのに)
翌年、彼の友人(たった一人の)が旅先の山の中で、人々から恐れられている噂の人食い虎に出合う。それは李徴の成れの果てであった。虎になった李徴だが、一日のうち一定の時間だけ人間の心が戻るのだ。そこで、自分のこれまでのいきさつを話す。
要は、自分は自尊心が強すぎて人を怨んだり妬んだりして獣の心になってしまった。獣の心で虎になってしまったということ。
虎になったけれど、人間の心に戻ったときには後悔している。虎になってからも詩をつくっていたので、せめてこれを本にしてもらいたい。そして残した妻子の面倒をみてもらいたい。本当は自分のことより妻子のことを一番に頼まなければならなかったのに、こんなだから虎になってしまったのも仕方がない。
そして、人間の心が消える前に、遠くへ行ってほしい。あなた(友人)を襲ってしまうだろうから。 そう言って涙を流した。
なんて哀れ、悲しいお話でしょう。
自尊心もほどほどにしなければいけません。そして人間の素直でやさしい心、前向きで謙虚な心だけは、いつも無くさないようにしたいです。妻子を食べさせるためには自尊心なんか忘れてがむしゃらに働けばよかったんですよ。で、詩は詩でやればいい。
いい話、教訓になります。
星4つ
自尊心は大事なものですが、行き過ぎると不幸になるようですね。
私でもつまらない自尊心を持っています。(苦笑)
これが人生に邪魔しているかどうかは分かりませんが、それに囚われすぎなければいいのではないかと思います。(笑)
>仕事を辞め故郷に帰り、人との交流も絶ってひたすら詩を作った。
これが間違っているように思いました。人との交流を絶って、人が感動するような詩なんて書ける筈がないと思うからです。
>妻子を食べさせるためには自尊心なんか忘れてがむしゃらに働けばよかったんですよ
自尊心より妻子を食べさせるのが優先順位が上ですよね。間違えないようにしたいです。(笑)
多少の自尊心は人間だからあるでしょうが、何事もほどほどにしないと、ですね。囚われないことです。
自分を愛するのはいいけど、自分を愛するなら人と比べたり思い上がったり、自分中心はいけませんね。
中島敦という作家はkindle買わなかったら知ることはなかったと思います。青空文庫にはいい本がいっぱいです。