190213 海外調査の意義 <地方議員の海外派遣が復活>を読みながら
今日は午前中、銀行である口座取引調査をした後、和歌山で仕事を終えて6時前に帰ってきました。産経記事を引用した<ゴーン被告、弁護人を「無罪請負人」弘中惇一郎氏に>が目に飛び込んできました。大鶴氏は元東京地検特捜部長の肩書きがあり、検察OBでも捜査実務に長けた方としてゴーン氏は弁護人に選任したのでしょうか。捜査段階での弁護活動として期待外れであったのか、あるいは公判での弁護方針をめぐって意見が対立したのでしょうか、辞任の背景をあれこれ外野が考えてもしょうがないですが。
昔は元検察官OB、とくに検事長や最高検のトップクラスを経験した人は検察ににらみがきくと依頼人の思惑?で弁護人に選任していたように思うのですが、公判審理になると多くはあまり有効な弁護活動をしていないことが記録などで明らかになることもありますね。
大鶴氏はどうだったか不明ですが、特捜部長の経験は相当前ですので、弁護活動、とくに公判段階についてはどのような活躍をされるのか注視していたのですが、残念です。他方で、弘中氏は経験も実績もある方ですので、申し分ないかもしれません。保釈請求の不首尾だけで交代させたのであれば、いかがかなと思いつつ、実績を重視する合理的なゴーン氏らしい選択かもしれません。ありあまる資金をもつ(それでも足りないとあくまで高額の報酬を追求する、仏教の精神とは相反するような)ゴーン氏なら、当然かもしれません。
ただ、弘中氏にとっても、過去の事件とは異なり、新たな争点も多数あり、事実関係も複雑で、かなり厳しい弁護活動になるのではないかと思いつつ、注目したいですね。
さて前置きはその程度にして、毎日の昨夕記事<地方議員の海外派遣が復活 財政難・震災で自粛から 「事実上の観光旅行」と批判>を取り上げたいと思います。この問題は以前もブログに書いた記憶で、多少重複するかもしれません(記憶で書くのでほとんどかもしれませんが)。
西嶋正法記者によるもので、<毎日新聞の調査では、全国47都道府県議会のうち、海外派遣制度があったのは00年度は44都道府県議会で、11年度に24議会まで減ったが、17年度には再び32議会まで増えていた。>なぜ11年度に半分近くまで減少したのか、それが再び増加したのか、そこに議会と都道府県民の意識が現れているのかもしれません。
その費用と派遣の実態については<1議員が利用できる費用は、60万円(北海道)から140万円(福島県)まで幅があり、14議会は上限額を設けていなかった。派遣制度がある大半の自治体で報告書の提出を義務づけていたが、インターネット上で公開しているのは24議会で全体の4分の3だった。>
だいたい費用に上限額がないこと自体いかがなものかとだれでも思うでしょう。上限があるといっても1議員が低いところで60万円、高いところだと140万円というのですから、驚くべき金額です。
17年度と思われますが、<派遣費用は、愛知県2624万円▽福島県2599万円▽香川県2095万円――などで総額3億197万円だった。>これだと総額だけで、一人いくら何に支出したかが明らかでなく、適正な費用の支出かどうかも判断できませんね。アンケートでそこまで照会できなかったのでしょうか、あるいは回答が総額だけだったのでしょうか。
私も昔、日弁連でときどきアンケートづくりをして、地方自治体に照会していましたが、照会事項を細かくすると、答えてくれないということで簡略化することもありましたが、そのあたりはアンケートで二律背反する事柄かもしれません。
さきほどの一人当たりの費用についていえば、海外派遣で60万円くらいはかかるとおおざっぱな話は適当ではないと思います。日程や調査先の事情によってはかかることもあるかもしれません。要は費用明細を提出させ、合理的な支出かどうかを自己申告ではなく議員活動をチェックする必要があると思うのです。
それは費用の問題以上に、派遣の必要性・合理性の方がより深刻でしょう。維新後の遣欧使節団といった場合、その必要性・合理性に疑いをはさむことはあまり考えにくいでしょう。敗戦後の日本が海外で学ぶ必要性も多かったと思います。では現在はどうかというと、むろん海外の先取的な事例を学ぶ意義はあるでしょう。しかし、議員が必ず現地で見聞しないといけないかとなると、その必要性・妥当性に多くの場合疑問符がつきませんかね。
代替手段はいくらでもあります。先見例を実施している専門家をお呼びしてデータをいただいたり、意見交換することで、議員だけでなく多くの公衆が理解する機会を得るメリットは大きいと思います。
派遣の成果の取扱も疑問です。
<派遣制度がある大半の自治体で報告書の提出を義務づけていたが、インターネット上で公開しているのは24議会で全体の4分の3だった。>
公費で調査するのですから、報告書をネットで公開することは当然ではないかと思いますが、それも4分の1がしていないというのはいかがなものかと思います。また、以前、記事で掲載された報告書では、コーディネイトした業者が作成したものをコピペしたものがあったとかで問題にされていたと思います。報告書の内容もチェックされてしかるべきでしょう。
単に報告書を出せばよいということでは議員としての責務を果たしたとは言えないと思うのです。国が地域の個性に応じた政策・制度づくりをすることは不可能であることはすでに四半世紀以上前から指摘されてきたことです。少なくとも地方分権改革があった2000年には、地方議会は主体的な制度作りの担い手にならないと自覚すべきであり、それにあった活動をすべきであったと思うのですが、そのような動きはあまりうかがえません(そういうといや私のところではやっていると言っていただけると、陳謝して参考にしたいと思うのです)。
当然ながら、海外調査をして報告をするにとどまらず、従来の制度の見直し、あるいは新しい制度づくりをすることが求められていると思うのです。そうでなければ、わざわざ海外に出かける必要性・合理性がないと思うのです。自分の見聞を広めるためであれば、自費でいけばよいのです。
わが国の中央集権的な法制度が邪魔して、なかなか地方分権にそう制度改革ができないといった弁解をするのであれば、それはそれとして、制度見直しの努力をしたこと、場合によっては国の制度の見直しを求めることをも視野に入れた活動を行ったという結果を示してもらいたいものです。
ちょうど一時間となりました。最近は地方議員とも交流がないので、現状を知らないまま、書いてしまいましたが、地方行政、地方議会活動がよりよくなることを期待して勝手な言い分を書きました。
今日はこれにておしまい。また明日。