190308 AIで変わる医療事情 <ITで遠隔禁煙治療>を読みながら
嗜好というものはきっと人にとって自由を満喫することを感じる重要な一つでしょう。その個人の自由について、社会、さらには国家があれこれいう、そのうえ制限するとなると、本来はとんでもないことになるでしょう。
たとえば飲酒や喫煙は典型例でしょうか。未成年者に限って禁止する、未成年者飲酒禁止法や未成年者喫煙禁酒法があります。大人が選挙権も被選挙もない未成年者を対象にしてつくった不公正?な側面があるというとどうでしょう。まあ未成年者擁護という趣旨といった理由で戦前から支持されてきたのでしょうか。それにしても真に健康上の問題を理解した上で制定されたり、維持されてきたわけではないように思います。
WHOの勧告などもあり、1990年代にはタバコの有害性は世界的に認知され、2000年代に入りわが国でもようやく健康増進法の制定、さらに昨年の受動喫煙対策強化の改正などで、今後の規制強化の道が軌道に乗ったようです。
喫煙者にとっては、長年の嗜好品を楽しむ機会が制限され、個人の自由を侵されると思われる向きもあろうかと思いますが、その有害性が他人はもちろん自分自身にも及んでいることを理解していただきたいと思うのです。その結果、タバコの害による治療費の増大はすでにアメリカのタバコ訴訟において立証されています。その被害は健康にとどまりませんね。吸着性のある含有物が衣類や室内などにあのタバコ臭を蓄積して、そのクリーニングなどの費用も軽視できないでしょう。
まあこんな話をするつもりがなかったのに、つい筆がすべりました。
喫煙者にとって今後の社会は結構楽ではない状況になることをいうために、うまく説明できず、こんな話をしてしまいました。実際、喫煙状況は大きく変わってきました。以前は飛行機や電車はもちろん、公共空間ではどこでも喫煙できました。それが嫌煙権運動や訴訟で、事業者が制限するようになり、90年代に入ると公共的な建物での分煙から禁煙に向かい、さらに電車ホームなどの公共空間でも原則禁止となりました。
それでも喫煙している人がいます。家の中でも喫煙できない雰囲気が自然に広まり、ベランダや家の外に出て喫煙することが普通になりました。民間事業者でも、相手先を訪問するとき、入る前に吸って会談中はなんとか我慢して、休憩や中断で外で吸うということも自然な光景になったのではないでしょうか。それでもなかなか止められないのがタバコなのでしょう。
なぜ止められないのか、止める意思がないからかと思っていましたら、必ずしもそうではないことが今朝の毎日記事<くらしナビ・ライフスタイルITで遠隔禁煙治療>(斎藤義彦記者)でわかりました。
新しい治療の仕組みが禁煙希望者の希望とマッチして、禁煙の成功例がどんどんでているようです。
それはITを利用した遠隔禁煙治療です。
<遠隔禁煙外来」が昨秋から始まっている。離島などを除くと一般的な治療では初の試みだ。厚生労働省が2017年に公認し、大手企業19社の健康保険組合が共同で取りむ。>
最初に登場したのは<白尾文也さん(59)>さん。<日産フィナンシャルサービス(千葉市美浜区、約660人)の総務人事部長>です。白尾さんは<20歳から1日10~15本ほど吸い続け、一度も禁煙したことはなかった>のですが、<「健康増進」担当で禁煙を社員に勧めている。>立場から禁煙に挑戦したものの、医師による禁煙治療は時間の関係上、ハードルが高かったでしょう。これはだれもがそうですね。
そこでこの遠隔禁煙外来を始めたのです。
意外と簡単だったようです。<昨年11月に行われたスマホを通した医師との初の「面談」は28分。>その後は<最初の面談から5日後に届いた禁煙補助薬の内服を始め、その8日後に禁煙にトライした。2回目のスマホ面談で、「あっけなくやめられました。喫煙所に行く気もなくなった」と言うと、医師は「素晴らしい」と称賛。5分で会話を終わらせた。>
<薬の服用は2カ月で終わったが白尾さんは禁煙を継続中だ。「全然吸いたくなくなった。時間も金銭的にも余裕が出た。一度も病院に行かない手軽さが良い」と振り返る。>とうそのようなほんとの話ですね。
私は喫煙しませんが、飲酒を一年365日欠かしませんでしたが、ある日体調不調などを理由に禁酒することにしたところ、その後は飲まないでも普通になりました。やればできるのですね。飲むのも自由、飲まないのも自由。喫煙も自由、止めるのも自由でしょうか。自由の意味をどうとらえるかでしょかね。
この新制度は、医師法の解釈を緩和したことでスタートしたようです。
<従来、遠隔診療は必ず医師が1回は対面することが義務だった。医師法に「医師は、自ら診察しないで治療をしてはならない」と定められているからだ。しかし、情報技術(IT)を活用した遠隔診療を推進する政府の方針で、厚労省は17年、健康保険組合(保険者)が健康診断の定期実施を確認したうえで医師と面談しない完全遠隔禁煙外来を認める通知を出した。>
だいたい医師法の「自ら診察」という点について、直接、会って話さないといけない趣旨に限定して解釈するのはIT時代にそぐわない解釈だったと思います。その意味では厚労省の通知は妥当なものでしょう。
その後この遠隔禁煙外来を利用する健保組合が増えていることが紹介されています。
ではその成績はというと驚くほどいいのですね。
<遠隔禁煙外来の成功率は8割とされる。自身も別の遠隔禁煙外来で診療する田那村雅子医師は「喫煙者は吸いたい、やめたい両方の気持ちを持つ。やめたいが通院できない人も多く完全遠隔禁煙外来は効果的。ただ、たばこへの心理的依存が重い人は医師が個別に治療すべきだ」と話す。>
この成績は、健保組合の従業員であることに関係しているかもしれません。会社内でも喫煙するのが躊躇される状況でしょうし、将来の会社での位置とかも関係して、やめる決意もきっかけがあれば容易にできたのかもしれません。
他方で、この完全遠隔禁煙外来は、医師にとっても朗報です。
<メドケアと提携する女性医師(34)は女児(1)を育てながら、主に自宅のパソコンで完全遠隔禁煙外来の診療を行う。白衣を着れば気持ちは切り替わる。予約制で通勤がないのが助かる。子どもの預け先がない土日の予約も多いが、自宅で診療可能だ。「常勤をやめる女性医師は多い。完全遠隔診療ならライフステージに合わせた仕事ができる」と歓迎する。>
このような遠隔外来が禁煙治療にとどまらず、さらに拡大することを望みたいですね。
そういえば、NHK超AI入門で、医療へのAIを扱った番組では、医師の問診票に代替するようなAIアプリが紹介されていました。一定の症状を患者側が入力すると、その症状に応じた可能性のある病気診断を提供するといったものだったと思います。
AIの場合膨大なデータを入力しているので、ベテラン医師並みに一定の診断が可能だとしながらも、そもそも疫学的な調査を踏まえたデータなので、人を見ると言うことではないわけです。その点、登場してた現役医師からは、個々の患者さんの家庭環境や生い立ち、社会的背景なども聞きながら、総合的に判断することを行っていると話して、AIとの違いを指摘していました。
AI(人工知能)には人間がもっているAI(愛)が必要と言った趣旨の別の記事での指摘もその通りと思うのです。
今日はこの辺でおしまい。また明日。