181127 コマツ方式の普及を <『経済成長の妨げを打開 コマツ坂根氏の処方箋』>を見て
昨夜のプライムニュースは<『経済成長の妨げを打開 コマツ坂根氏の処方箋』>というテーマで、ゲストにコマツ相談役の坂根正弘氏と元総務相の増田寛也氏を招いて議論されました。とりわけコマツの様々な点で創意工夫ある経営、これからの企業のあり方の一つを示すような内容が提供されました。
人口減少時代を前提に、人手不足に対応するために外国人材の受け入れ拡大を目的とした出入国管理法改正案について、緊急対策として一定の合理性を認めつつ、国内における高齢者や女性など多くの雇用の機会が整備されていないことを問題にしたり、現行の外国人を含めた雇用環境に問題があることの改善が必要との指摘があったかと思います。
与野党の議論がさまざまな争点があるにもかかわらず、適切な議論がされているか、坂根氏もきっと内心では疑問を感じているのではないかと思いました。
日本の労働慣行の特異性を多々問題にしていましたが、私も多く賛同できました。
たとえば就活ルールを大企業が統一して決めるというやり方も現在のグローバル経済に適合しないという点もそのとおりだと思います。私自身、45年くらい前でしたが、ああいう就活活動は私にはとてもできませんでした、その結果、弁護士という道を選んでしまったのかもしれません。
大学では勉強しなくても、どのような専攻を学んだとしても、就職先では通用せず、会社のルールが優先して、そこから新たにスタートするような状況は最近少しずつ変わっていっていると思いますが、海外の大学で授業を受ければ、いかに日本の大学の実像が奇妙なものかわかりますね。増田氏もそういった指摘をしていました。
坂根氏は、就活ルールをとりあげ、年度の一時期に一括採用すること、本社が東京に集中する大企業の問題性を指摘して、通年随時採用、地方分散を提案しています。その場合就職の目安はどのくらい専門知見・技術・伸びしろがあるかといったことが大きなファクターになるのではないかと思います。大学での勉強もそれだけ実質が伴わないと意味をなくすことになるでしょう。
コマツは本社を地方の小松市に移転し、地元の地方大学採用を推進し、地域貢献・社会貢献という企業の社会的責任を体現してきたように思います。
会社経営のあり方で坂根氏が指摘していた一つ、変動費・固定費・変動費率という指標を用いて経営管理している企業が海外では当たり前であるのに、わが国では少ないという点も同感です。
多くの企業は、税務申告用や、有価証券報告書用などで、貸借対照表・損益計算書を作成したり、銀行用に資金繰り表を作成しますが、自社の経営において各事業部門が採算性を有しているか、自社独自の上記指標を作成して判断する必要があるのに、あまり関心のない企業が多いように見えてしまいます。
そのような趣旨を坂根氏は指摘していたのではないかと思うのです。坂根氏は社長になったとき、固定費の比重が高いことに注目して、それをいかに下げるかを工夫して、固定費上昇の要因であった終身雇用を改め、収益改善を果たしたそうです。
コマツといえばIT、IOT装備の建設機械が多方面の産業に展開して言っている点が注目されていて、私も気になっていましたが、坂根氏の次の社長が得意分野だったそうです。
コマツが石川県で取り組んだ新たな戦略は次の4つが柱ということのようです。
<地元での大学卒採用を開始>
<農業&林業への技術支援を開始>
<電力削減~新工場バイオマス発電建設>
<地域交流を目的に「こまつの杜」竣工>
地元大学卒採用は先に述べました。建設機械メーカーのコマツが農林業に進出?というと驚きますが、私は農林業に関心を抱きだした10年前くらいから次第に情報を得るようになり、コマツの西欧で使われている機械が農林業分野で画期的な機能を発揮していることを知りました。
その点、坂根氏は、地元採用の社員の多くが兼業農家だったことから、その社員たちの雇用環境を整備する中で、自然と農業の現状に目をやるようになったそうです。兼業農家は、普通平日は会社に勤めますが、土日とか、連休などでは農業をしています。ある意味普通の会社員の週末ファーマーとさほど違わないかもしれません。
でも兼業農家は基本、伝統的慣行農法をおこなっており、たいていは農協指導でやっているでしょうね。トラクターでも何でも農業機械は自分とこの自由な時間で使いたいため、ほとんどが自前ですね。それが効率的か、生産性を考慮したものかと言えば、費用対効果的には疑問が多い場合が普通ではないかと思います。
ITやAIを装備した機械でもないですね。コマツはGPSを含めIT、IOTを搭載した農業機械を開発して、農業の合理化を開拓してきたようです。
私が着目したのは林業機械です。林野庁がウェブサイトで取り上げている高性能林業機械といったものの多くは、たぶん90年代のものとさほど大きな変化はないのではと思います。欧米、とくに北欧などで使用されている機械は、坂根氏が話していたように、IT,IOT搭載のもので、樹種、その大きさなどの市況が瞬時にITを通して林業機械の画面に現れ、それに対応する樹種を選んで一本を掴んで枝払いから造材まで一挙にして、さらにネットで近接する運搬トラックを呼び出し市場まで運ぶという一連の切れ目のない作業が行われているのです。
コマツは工場の省電力化を行い、90%も削減したそうです。これからの時代、いかに省電力化を図るか、よりいっそう企業力が試されるのだと思います。原発電力を頼ってどんどん電力消費するような体質の企業は淘汰されるのではないかと思うのです。
林業に関わっているため、バイオマス発電も手がけ、本来の高性能林業機械で生み出される大量のC級材や枝条も活用可能になるわけですね。
その他コマツは企業力を多方面に伸ばしていますが、そこには企業利益を超えた社会貢献を目指す姿を感じます。
これからの企業のあり方として多くが模索して欲しい一隅の光のように思えます。あまり絶賛していると、どこかで落とし穴があるかもしれませんが、そういう注意は怠らないと期待しています。
今日はこれにておしまい。また明日。