190410 豪華さと会計処理 <ゴーン氏動画><ゴーン妻ラジオ発言><会計評論家の見解>などを読みながら
花言葉シリーズを終わりにしたつもりでしたが、ゴーン氏妻の動きなどを見ていて、つい事務所のダリアのことを思い出しました。たしか「華麗」といった花言葉であったような記憶でした。<ダリアの花言葉>で確かめると、それは間違いなかったのですが、それ以外に<「優雅」「気品」「移り気」「不安定」>となっていました。やはり一筋縄ではいかないようです。
華麗、優雅、気品といったら、誰もが憧れそうなことばですね。ところが、移り気と不安定といういわく付きのことばもあります。華麗・優雅を保つことは容易でないのでしょうか。不安定さもついて回り、移り気な性格も併せ持っているのかもしれません。
ゴーン氏妻のことは最近のニュースで知った程度ですが、ベルサイユ宮殿で結婚式をしたとか、15億円のクルーザーを購入した会社の経営者だとか。いずれも華麗とか優雅に近いようですが、どちらかというと「豪華」ではあっても気品が伴っているか?で、華麗・優雅とも違うかもしれません。キャロル夫人の姿は保釈中のゴーン氏に付き添っているときの映像ですので、むろん華麗・優雅という姿とは異なるもので、そこから判断するのは気の毒でしょうね。
ところで、ゴーン氏が逮捕前に用意していた動画について、国内外の報道で取り上げられ、ロイターでは<ロイター<ゴーン日産前会長「事件でなく陰謀」 現経営陣には「うんざり」=動画公開>と報じています。
ただ、ゴーン氏の動画を少し見ただけですが、中身があまりに抽象的で無罪という結論のみ述べて、一部の日産経営陣に責任転嫁しつつ、無罪の理由は述べていないに等しいものでした。むろん弁護側としては、公判準備前に手の内を明かすことができないわけですから、被告人が話す内容はこんなものでしょう。でも誰に対して、何のために動画配信したのか、その有効性に疑問を持ちますね。たしかにゴーン氏を支援する人たちへのちょっと弱っている姿を見せつつ、しっかり無罪を訴えることは、多少は効果があったかもしれません。でも日産グループ関係者はもちろん、第三者には逆効果であったかなと思ったりします。
しかもゴーン氏妻は、自ら特別背任容疑が疑われる中、ゴーン氏の逮捕を受けて、もう一つのパスポートを使って出国したのですから、後味が悪いですね。たしかにNHK報道では<ゴーン前会長の妻仏ラジオの取材に「人権問題訴えるため」>とフランスに向かった理由を述べています。またNHK<出国したゴーン前会長の妻「身の危険を感じた」>では、東京地検特捜部が求めれば日本に戻る考えを示しました>とのことです。
その中で、彼女の出国について、弘中弁護人は<「事前に弁護団に相談はありいろんな意見があったが、最終的に出国を止める理由は何も思いつかなかった」>といういい方をされていますが、彼女の出国はできれば避けたかったと思っていないでしょうか。
むろんキャロル夫人が、今後検察の要請に従い、帰国して事情聴取に応じれば別ですが、その可能性は低い気がします。日本の司法制度を信頼していないでしょうから、わからなくもないですが・・・
他方で、ゴーン氏の特別背任容疑については、彼女の動きはプラスにはならないと思います。これで検察側が会社の金の私的流用について立証困難になるといった可能性は大きくないと思うのです。
この点、今朝のJBpressの記事<それでも検察はゴーン氏の特別背任を立証できない>は、会計評論家の見解を展開しています。
資金流出の容疑について、細野祐二氏は会計的視点に立ちながら、日産子会社からSBAへの資金使途のみが対象となり、そこから先はSBA独自の資金使途であって関係ないとしつつ、SBAへの送金は年間にすると約6億円で販売実績からは販売促進費として正常な金額であると、中東特有の商慣行から合理性があるとしています。
また、<還流資金500万ドルは、SBAからGFIを通して「ビューティー・ヨット」や「ショーグン・インベストメンツ」のクルーザーや投資金に化けている。>としつつ、いずれも貸付金や出資金となっていて、日産に損害を与えていないとしています。
いずれも会計処理としては、的確な指摘ではないかと思われます。しかしながら、会計的には妥当であっても、一体、誰がどのように金を動かしていたか、実際に誰が誰の金をどのように使ったかが問われているわけです。それは会計処理だけでは解明できないものです。
現在のところ、公判準備前ですし、むろん公判前ですから、証拠はもちろん検察側の主張もわかりません。当然、司法取引では担当していた副社長?でしたかがこの一連の取引について具体的に証言しているでしょう。また最近の報道ではこの取引を指示したり、報告を受けたメールなどが多くあるようです。ゴーン氏がどのように関わっていたかが問われるべきで、会計処理だけでは問題の本質を把握できないと思うのです。
また、朝日の記事<ビルの1室に40社登記、実態なしか 日産資金の還流先>のように、だれがこのような環流方法を作り出したのか、それは検察は相当の証拠で固めているのではと思うのです。そうでないと、保釈中に、裁判所が逮捕状、勾留状を発するとは思えません。
たまたま私も普通の刑事事件で、準抗告申立書を提出したところですが、普通の事件でも勾留決定を争うのは大変です。まして特捜事件ですし、国際問題にもなりかねない事件ですから、超特別でしょうね。刑事司法が検察側に偏っているといえばラクなのですが、そんな論理では戦えないですね。やはり双方、しっかりした証拠に基づく主張をしているでしょう。
そういえば田中角栄氏のロッキード事件の裁判を少し思い出しました。昔、公判記録を少しだけ読んだことがあります。今回の司法取引と同様、まだわが国にはなかった司法取引で入手したコーチャンとクラッターの嘱託証人尋問調書の証拠能力が大問題になりましたね。他方で、実際の公判廷での証拠調は特定の弁護人以外の尋問は残念ながらあまり参考になりませんでした。
ともかく今回の事件は、ロッキード事件ほどではないとしても、それに迫るほどの重大事件でしょう。今後の双方の攻防を注視していきたいと思います。実のところあまり関心がなかったのですが、ブログで取り上げているうちに、興味がわいてきました。いつまで続くか分かりませんが、弘中弁護団の弁護を楽しみにしたいと思うのです。ロッキード事件弁護団より優れているのではないかと期待しているのです。
今日はこの程度でおしまい。また明日。