190319 レオパレス不正の問題とプラゴミ <レオパレス施工不良 「組織ぐるみ」疑い濃厚>などを読みながら+補筆
空き家や空き共同住宅があちこちで目立つ中、真新しいこぎれいな賃貸パートもよく見かけるようになった気がします。空き家などに対処するのは時間がかかりますし、見通しが立たないのでしょうか。金融機関もだぶついた資金の受け皿探しが大変で、一応、賃貸収支事業が採算のとれる形で計画提案されれば、割合スムースに融資の紐をほどくのでしょうね。
今朝の毎日記事<クローズアップ2019 レオパレス施工不良 「組織ぐるみ」疑い濃厚 トップダウン体質、弊害>では、レオパレス不正問題を(会社側は「不備」と呼称していますが何でしょうね?)取り上げています。
記事では同社について<レオパレスは、建築を請け負ったアパートをオーナーから一括して借り上げ、同社が入居者を集めて家賃を受け取った後、管理費などを差し引いてオーナーに賃料を払うモデルで急成長してきた。>と急成長を指摘しています。
ただ、このモデル自体はずいぶん以前からありましたから、特別同社のものに優位性があるとは思えません。同業他社は利益確保、さらにいえば相場より高い家賃設定をしてその保証を別会社で行うとか、いろいろなサービスを付加していて、競争は激化していると思います。
今回の不正(毎日がそう指摘していますが、私もそういった理解の方が説得性があると思います)について、毎日の一面記事<レオパレス21施工不良、効率優先 「元社長関与」 調査委中間報告>で、<賃貸アパート大手レオパレス21は18日、弁護士3人でつくる外部調査委員会(伊藤鉄男委員長)による施工不良問題の中間報告を国土交通省に提出し、発表した。>と掲載しています。
中間報告については、レオパレス21のホームページで、<外部調査委員会による調査状況の報告>として公表されていますが、概要ですので、今ひとつわかりにくい印象です。むしろ<当社施工物件における施工不備問題の対応について>では、個々の「不備」について図入りで解説されていますから、わかりやすくて理解できます。
中間報告では、<「入居者を増やすため、学生や社会人の新生活開始に間に合うよう、工期短縮や施工業務の効率化が求められていた」>がこの「不備」の背景とされています。要はスピードアップということのようですが、たしかに工期短縮は費用も安くなり、誰もが求めるところで、競争上優位に立てます。
しかし、<外壁や部屋間の仕切り壁に、設計図や国交相の認定と異なる発泡ウレタンを使い、遮音性や耐火性の基準を満たしていなかった。>という、不正というべき事態が、単に工期短縮のために行われたとの弁解には腑に落ちないものがあります。
本来はグラスウールが使われるべきところ、発泡ウレタンが使用されてきたというのですね。
たとえば、レオパレス21の<界壁内部充填材の相違及び、外壁構成における大臣認定との不適合について>では、わかりやすく解説されています。<界壁内部充填材の相違>では、
<設計図書上では界壁内部の断熱材としてグラスウールが充填されるものと記載されているにもかかわらず、実際には、発泡ウレタンが充填されており、建築基準法の規定により共同住宅の界壁に求められている遮音性の基準値を満たしていない可能性があることを確認いたしました。>と。
石膏ボードの中に隠れていて見えないとでもいうのでしょうか。施工業者にとっては簡単に分かるのではないでしょうか。材料発注の管理部門でも容易に分かることでしょう。
<発泡スチロール>はたしかに便利ですが、熱に弱いことは素人でも常識でしょう。建築材料として、<押出ポリスチレン (XPS) は、主に建材に使われる、堅くて難燃性の発泡スチロールである>とされているように、<省エネルギーなどの観点から近代化された住宅の断熱材としては屋根材の下や外壁の下などにも良く使われている。>わけで、最近の住宅では割合普通に使われているかと思います。しかし、難熱性といっても限度があり、基本は<耐熱性は低く、約90℃で溶解する。>わけですから、耐熱性が要求される外壁や間仕切り壁に、使えるわけではないことは法令違反うんぬん以前の当然のことではないでしょうか。
現在、調査委員会やマスコミの注目は組織ぐるみかどうかという点のようです。それ自体はしっかりやってもらいたいと思うのですが、その構造的な背景にもメスを入れる機会がないか気になっています。
貸し手の金融サイド、さらにレオパレス21の関連事業者ですね。さらにいえば地主側に適切なアドバイスがあればとも思うことがよくあります。
で、ここまでが序論ですが、時間がなくなりました。簡単に述べます。
発泡ウレタンは、廃棄処理する場合厄介な代物です。まして建築廃材となった場合より大変ではないかと思います。いま急速に、不正に取り付けられた発泡ウレタンを外して本来のグラスウールなどに取り換える作業が行われていると思いますが、その取り外された発布ウレタンの処理はどうなっているのでしょう。
3月17日付け毎日記事<プラスチック危機国連環境総会閉幕 使い捨て規制骨抜き 米、厳格化に反対>も含め、プラスチック汚染の広がりは大変な状況です。安易にプラスチックを利用しすぎてきたツケというには重大な問題です。今回のような不正は、環境汚染の観点からも見過ごしにできません。
環境省も事前チェック、事後チェックに関与するくらいの意欲を見せてもらいたいものです。これは希望ですが。
今日はこれにておしまい。また明日。
補筆
ちょっと気になっていました。
<「元社長が関与」>という調査委の報告が大きく取り上げられつつ、それはいつで、その後役員は何も知らなかったのかなど、この分野で業績を拡大している企業トップが建基法違反状態を看過できるとは思えないと感じていました。
今朝の毎日・経済プレミア<レオパレス施工不良「元社長が関与」中間報告の衝撃>は、経済部記者の川口雅浩氏が言及したものです。それまでの記事も川口氏によるものですが、さらに突っ込んでいます。
グラスウールを使用すべきなのに発泡ウレタンを使用したことについて工期短縮や効率化を理由とする会社側が、<グラスウールに比べ発泡ウレタンの方がコスト的には割高と説明した>ことを追加しています。割高な材料変更が工期短縮のためというのは、それが建基法違反、少なくとも不備で取り替えが必要となる事態を考えれば、疑問です。
しかも元社長の指示というのですが、同人は巨額の資金流用で2006年に会社から全面的に退いているわけですから、本来、元社長が関与したさまざまなシステムや資材選択等は、その時点で見直され検証されるべきであったと思います。それから10数年にわたって法令違反のチェックがなされてこなかったというのもコンプライアンス体制が機能していないことの証左とみられてもやむを得ないように思います。
今後の外部調査委の調査・報告で全容が解明され、適切な対応策が出されること期待したいと思います。