180228 強い組織と人 <「“全員リーダー”の組織論~帝京大ラグビー9連覇」を見て
先ほどまで会議に出ていて、いま事務所に帰ってきました。これから本日の話題を考えてと思って、ニュースを見ましたがどうも冴えません。何かないかと思案して、昨夜見た<BS1スペシャル「“全員リーダー”の組織論~帝京大ラグビー9連覇」>について、少し書いてみようかと思います。
私自身、学生時代、たぶん一度もラグビーの試合を見に行ったことがなかったと思います。最初に見たのがもしかして、同志社大の平尾選手が国立競技場で活躍した試合だったのではないかなと思うのです。京都で知り合った同志社大の女学生が平尾選手のファンで、平尾選手を追っかけて上京するというので一緒に見たような記憶です。京都時代、写真にこっていて、仲間内でモデルになってもらって協力してもらった女学生だったので、あまり関心がなかったのですが、観戦しました。
ところが、そのとき初めて見た平尾選手は華奢で、こんなん体格で大丈夫かと思ったら、とんでもない華麗なフットワークというかステップで相手の防御陣をすり抜けてトライするのには、痺れました。その頃平尾選手の同志社大は強かったですね。それまでは早大、明大が図抜けていたように思いますが、このころの同大は見事でした。でも3連覇でしたか。
その後はいろいろな強豪チームが現れましたが、でもたいてい一年か二年の天下に終わっていました。やはり中軸となる4年生が卒業し、新しく1年生が入るといった大学チームの場合、優勝を連続することは極めて困難だと言うことはよくわかります。
それに比べて実業団の場合は中軸のベテランがずっといて(プロ野球みたいに移籍することはあまりないですから)、強い組織ができると連続優勝は可能性が高まるのかもしれません。松尾選手がいた新日鉄釜石がそうでした。松尾選手の頭脳プレーはいつまでも目に焼き付いていますし、スクラム陣の強固さも凄かったですね。
新陳代謝とも言うべき入れ替わりが組織の宿命とも言うべき大学チームであるにもかかわらず、帝京大学はなんと9連勝を果たしたのですから、これは脅威です。たしか最初の1勝も初めての優勝だったのではないでしょうか。関東大学ラグビーチームの中で、毎年割合強い実績を残していたと記憶しているのですが、頂点とか、それに近い位置まではなかなかいけなかった記憶です。もう40年以上前の話ですが。
最近の帝京大の試合を見ていると、負ける気がしないくらい、まるで大鵬みたいと思ってしまいます。でも今年の明大戦は勝負では負けていた印象を感じています。明大選手のキッカーがゴールキックをずいぶん失敗した運があったように思います。なぜ明大がここまで強くなったのかはわかりませんが。
元に戻ると、この明大戦を除き、大学チームとの闘いで負けるおそれのあるような展開は、おそらく9連勝の中で一度もなかったのではないでしょうか。それくらい強い帝京大、何が変わったのか、なぜそうなったのか、NHKはどのようにその要因にメスを入れるのか楽しみでした(偶然、チャンネルを回したら画面に出たのでしたが)。
でも、あまりよくわかりませんでした。技術的な部分、体力増強的な部分など、中核的な内容はもしかしてノウハウとか機密事項ということで、明らかにしなかったのでしょうかね。
ただ興味深い点は、岩出監督が選手全員に求めるのが、ラグビーをうまくなって優勝することではなく、彼ら一人一人が自立して自分で考えて社会に出て幸せになる人間に育っていくことといったことであったと思います。やはり優れた監督は、一人一人を大事にして、個々の人格的成長を見守り、幸せになる力を育てるという、人格形成を中軸に据えているのですね。
いや、そんなきれい事ではなく、絶対勝つことだ、連覇だといったことがないはずはないというかもしれません。しかし、大事な子どもたちを預かり、練習に参加する選手は150人もいるのに、選手登録されるのはわずか24人でしたか、チーム内での競争もとてつもなく厳しいわけですね。ほとんどが公式試合に出場できない補欠となるわけですから、そういう選手たちに気持ちを込めて対処しないと、有能な選手も生まれないでしょう。
高校時代は日本代表になったような優秀な選手が、当然、連覇を続けている強いチームに憧れて入ってくるわけですが、必ずしも選抜されるわけではないわけですね。そのときの挫折感は相当なものでしょう。でもしっかりと選抜選手をサポートする、そういう組織力、団結力がないと、連覇を9回も継続できるはずがないでしょう。
監督の明確な方針、一人一人の幸せになる力の強化は具体的にはさほどめいかくとはいえませんが、わかりやすい一つの例が紹介されていました。
たしか全員寮生活で、1年生から4年生まで一緒です。ここで思い出すのは、いまでいうパワハラ、先輩のしごきです。いやそうでなくても体育会特有の先輩至上主義的な風潮は、最近、相撲界でも問題になっていますが、大学ではよく事件となったように思います。明大、関東学院大などなど。とても強い時代に、大きな落とし穴となり、いずれも長い間弱体化していたと思います。
ところが帝京大では、4年生が、新入生に対して、荷物運びをやったり、グランド整備をしたり、たいていの体育会系の上下関係が逆転しているのです。脱体育会系というようです。スポーツにおいて、年齢や先に入会したかどうかではなく、技能が優れているか、チームプレイが優れているかどうかといった、能力こそ適正に評価され、それ以外は平等に取り扱われるべきでしょう。おそらく欧米のスポーツ界ではそれが当たり前ではないでしょうか。
それを岩出監督がラグビー界ではじめて?やったのではないでしょうか。そうなるとどこに大学に入ろうかと悩んでいる高校生は、先輩のしごきもなく雑用をさせられることのない、人間らしい大学生活を送れる帝京大を選ぶのは当然でしょう。
というか、学生として、あるべき生き方を学ぶことができる場を提供してくれているように思えるのです。ある意味で、大学生は自由すぎるくらい自由ですが、社会人としてのルールを、チームワークという形で自然と学ぶこともできるのかもしれません。
先輩がグランド整備をしたりしていれば、なにがチームに求められるかを自分の頭で考えることができるようになるチャンスでもあるでしょう。逆に、先輩からあれやれ、これやれと言われるままにしていれば、自主的な発想は生まれませんね。
帝京大の強さの秘密は、この放送だけではあまりわかりませんでしたが、学生相互や監督、さらに支援するスタッフたちとの間の意思疎通といったコミュニケーションはうまく図られている印象を持ちました。
ぼっと見ていたのでしょうか、あまりその秘密を理解できないまま、適当に書いてしまいました。青学の原監督のようにずばずばとはっきり話す方だと、わかりやすいような気がしますが、岩出監督は奥が深いのかもしれません。
今日はこのへんでおしまい。また明日。