190212 農地バンクの今後 <農地バンク見直し法案を閣議決定>などを読みながら
農地に囲まれた中で生活し仕事をしていると、農業をやっていなくても農風景ともいうべきものが自然に受け入れられるのです。とても都会のビルの中に舞い戻る気分にはなれません。そういう農風景も、都会の急激で異常な変貌とは比べものになりませんが、少しずつ変わりつつあることも時折感じます。耕作放棄地的なところが太陽光発電施設になっていたり、露地栽培の畑がハウス栽培になったり、いろいろ変化が見られます。
今日の仕事も6時になってなんとか一段落を終え、報道を見て今日の話題をと考えたとき、ふいに目に飛び込んだのがその農地をめぐる毎日記事<農地バンク見直し法案を閣議決定 地域協議促進し集約加速化目指す>でした。
記事では<政府は12日、農地の賃貸を仲介する農地中間管理機構(農地バンク)事業を見直す関連法案を閣議決定した。農地の集約を加速するため、耕作者の年齢層や後継者の確保状況を地図上で把握できるようにして地域の協議を促す。今国会での成立を目指す。>というのですが、以前から議論のあった農地バンクどうなるのかと興味を呼んだのです。
耕作放棄地対策や新規担い手対策として期待された農地バンク、それなりに活動実績があるものの、この2つの問題解消にはほど遠い状況かもしれません。
どうなるのでしょう。
記事は<農協などが担っている農地の集約事業をバンクに統合一体化することや、農地の借り手の利用状況に関する報告を廃止するなど手続きの簡素化も柱。>担ぎ手が多く力が分散し、他方で農地バンクの知名度もあがらなかったかもしれませんね。手続も参入障壁になったのでしょうか。
また農水省が提唱した「人・農地プラン」はその訴える内容はなかなか響きのよいものでしたが、私の狭い知見ではあまり知られてなかったように思っていました。その点、この見直しでは<地域ごとに話し合って地区の農業の将来像を示す「人・農地プラン」を作成するのに当たり、市町村が耕作者の年齢別構成などの情報提供に努めることを明確化する。>とのこと。
農業予算は、自民党の票田?でしょうからシーリングがあると言っても、巨額ですね。当然、この新しい制度でもアメとして用意しています。<関連の予算措置では、一定基準以上の集約に取り組む地域に交付する「地域集積協力金」の対象を、実効性のあるプランを策定している地域とする方針。集約が進みにくい中山間地域は交付要件を緩くする。>
政府が目指す農地利用の効率化は、大規模農家による農地の集約化ということのようです。記事では<政府は農地利用の効率化を目的に、全耕作地の中で大規模農家などの担い手が利用する面積の比率を2023年度までに80%とする目標を掲げるが、17年度で55.2%にとどまっている。(共同)>とのこと。共同通信からの配信のようで、簡潔ですが、これだけ読んでも、ぴんときません。といいながら全文引用してしまいましたが。
JA.comの2018.11.19記事<農地バンク運営見直しへ 農水省>では、少し詳細に内容に触れていますので、これを引用しながら少し考えてみようかと思います。30分ほど検索しましたが他に内容に言及したものをみつけられませんでした。今日は軽く取り上げるのでこれで十分かと思います。
まず農地バンクの役割について<農地バンクは、地域内に分散・錯綜している農地や耕作放棄地を借り受け、▽必要に応じて基盤整備を行い、▽借り受けている農地を管理し、▽まとまったかたちで担い手に転貸する、という仕組み。さらに再配分することで利用しやすく再配分して集約することもめざした。>
大いに期待された農地バンクですが、実際は<事業を開始した26年度以降、担い手への農地集積は増えて29年度は4.1万ha増加したが、そのうち農地バンク事業によるものは1.7万haにとどまっている。>と集積自体がそれほどでもない中、農地バンクの功績はその3分の1にとどまっているわけですから、期待外れとまでいかなくても、十分に機能しているとは言えないでしょう。
しかもこれまでの集積化は割合平坦で元々農地規模が大きい東日本で進んできましたが、<中山間地域を多く抱える近畿、中四国や、大都市圏を抱える関東、東海は進んでいない。中山間地域率が64.9%と全国一の中四国の集積率は27.4%となっている。>私は近畿のほんの一部を見聞していますが、農地規模もそうですが農民意識も、とても簡単にいきそうには思えません。
何が課題かについて<今後さらに集積を進めるにあたって農水省は「農地の集積・集約化の前提となる地域内での話し合いが低調」であることや農地バンク事業について現場から事務手続きの簡素を求める声が多いことや、農地バンクが地域とのつながりが弱いことなどを課題として挙げた。>そのとおりでしょうね。水利組合の席などだと結構活発に話が飛び交いますが、あくまで共通の利用に関わることにとどまり、自己の農地となると、農家はそれぞれ一国の城主並でしょうか。
ではどのような見直しなのでしょう。<見直し方向では農地バンクに一本化させるのではなく、市町村や、JAが行っている農地集積円滑化事業などと「一体化」させる見直しを行うこととした。>一本化と一体化とでどう違うのか、これだけではぴんときません。
<その前提となるのが地域での話し合い。>というのは誰も異論はないように思います。具体的な策はどうやら<「人・農地プラン」を見直す。>ことのようです。
このプランの方針はすてきに聞こえますが実効性のあるものにしようということのようです。
<とくに地域内の農地について耕作者の年代情報や、後継者の確保状況などを、個人名の記載までは求めないが、地域の現況を地図に落とし込んで把握し、それに基づき中心的経営体への農地の集約化の将来方針をプランに記載することを必須化する方針だ。>
これはだれが担うのでしょうか。「耕作者」を厳密に考えるとき、農地法外の使用貸借・賃貸借や請負など、多様な耕作実態をどのように反映させるのでしょうね。水利組合で継続的に活動していても、この実態を把握できる人はなかなかいないのではないかと懸念します。水利組合自体が緩やかな組織になりつつあり、昔のような堅固な組織は東日本では健在かもしれませんが、集約化の遅れている?地方では形骸化が著しいところが少なくないと思うのです。
その意味で、昔なら庄屋さんといった人が音頭をとれたのかもしれませんが、現在は農業委員もそういった期待はなかなかされていないのではと思うのです。
農水省は<そのためにコーディネーターを話し合いに積極的に参加させ、農業委員や農地利用最適化推進委員はその役割を法令で明確に定める。農地バンクの仕組みも簡素化し、農地の出し手から農地バンク、農地バンクから受け手への権利設定を一括して行うことができる仕組みを設ける。>と担い手役を強化するようです。
このコーディネーターという専門家?がどのような役割を期待しているのか、制度化まで考えているのかわかりませんが、農家の一体化が薄まっている中、果たして外部の第三者がうまくリードできるか、期待しつつ、注視したいと思います。農業委員なども権限を明確化するのはいいのですが、候補者段階から適任者を検討しておかないと、重荷になるかもしれません。農業委員などの選出方法にも見直しがあってもよいのではと思うのです。借り手に新規就農者などを期待するのであれば、より広い視野で考えておかないと、旧来の慣習を破ることは容易でないように思うのです。
なお、農水省の<農地中間管理機構の制度や実績等>はわかりやすく現行制度を説明していますので、関心のある方はどうぞ。
ちょうどいい時間となりました。今日はこの辺でおしまい。また明日。
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