たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

安保関連法訴訟 <自衛官に「訴えの利益」 審理差し戻し 東京高裁判決>を読みながら

2018-02-01 | 司法と弁護士・裁判官・検察官

180201 安保関連法訴訟 <自衛官に「訴えの利益」 審理差し戻し 東京高裁判決>を読みながら

 

今朝は久しぶりに朝の目覚めが良かったです。昨夜は皆既月食でも滅多に見られない「スーパーブルーブラッドムーン」だったのですね。西行のように月を愛でる意識がたまにしか生まれない私には猫に小判でしょうか。それでもNHKおはよう日本で、スカイツリーに集うカメラパースン、願い事をする家族などには、珠玉の姿だったのでしょう。

 

私の場合は今朝のうっすらと積もった白銀の世界、そこにパウダースノウのような粉雪が舞い散る風情がすがすがしくかんじるのです。とはいえ外の現場で働く人にとってはそんな余韻に浸れないでしょうね。彼ら彼女らのことを考えて少しは心を引き締めて・・・

 

今朝の毎日記事、ぱらぱら見ていて、東京高裁の差し戻し判決が目にとまりました。すでに多くの安保関連法について違憲訴訟が提起されていますが、訴えの利益が壁になる行政訴訟をえらばず国賠訴訟が中心ではないかと思います。よく訴えの利益が認められたものだと思い、裁判長は誰だろうと気になり記事を追いました。

 

同期の裁判官でした。ま、彼の判決までは見ていませんが、優秀でスマートな人ですね。すでに最高裁判事になった行政部出身の裁判官タイプに似た印象をもっています。彼は東京地裁行政部でも裁判長をしていたと思いますので、多くの行政事件について判決していると思います。その彼が裁判長で訴えの利益を認めたのは、それなりに意義があるでしょうね。

 

判決の内容は記事でしかわかりませんが、引用しておきます。

<安全保障関連法に基づく防衛出動命令は憲法9条などに反するとして、現役陸上自衛官の男性が国を相手に命令に従う義務がないことの確認を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は31日、原告に訴えの利益がないとして却下した1審・東京地裁判決(昨年3月)を取り消し、審理を東京地裁に差し戻した。>

 

ちょっとこの記事だけからは事実関係が明確でないですが、当該防衛出動命令はまだ発せられたものでない段階で、その命令が違憲無効として、その命令に従う義務がないことの確認の訴えではないかと思うのです。

 

行政事件訴訟法では

(無効等確認の訴えの原告適格)

第36

無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り、提起することができる。

 

「法律上の利益」がまず訴訟要件とされています。

 

この点、<杉原則彦裁判長は「出動命令に従わない場合、刑事罰や懲戒処分を受ける可能性があり、訴えの利益はある」などと述べた。【近松仁太郎】>とされています。

 

事件は

<関東の補給部門に所属する原告男性は2016年、「入隊時、集団的自衛権の行使となる命令に従うことに同意していない。命令に従うと、生命に重大な損害が生じるおそれがある」として提訴した。>ものです。

 

この訴えに対し、東京地裁は<「原告に出動命令が発令される具体的・現実的な可能性があるとは言えず、命令に従わないで刑事罰を科されるなどの不安は抽象的なものにとどまる」として、裁判で争えないと判断した。>

 

この判断は、従来の裁判所行政部が示してきたオーソドックスな見解ではないかと思うのです。

 

これに対し東京高裁は一歩踏み込んだ判断を示したのです。

<「原告が命令に従わない場合、重大な刑事罰や免職などの懲戒処分を受けることが容易に想定できる」と指摘。懲戒処分を受けた後の取り消し請求訴訟など他の手段での救済は困難として、1審を覆した。>

 

裁判所として、とりわけ東京高裁として、よく頑張った判断をしたものだと思うのです。

 

実は彼が東京地裁時代、私が代理人となってある建築確認取消請求の訴えを提起した事件で偶然彼の部に係属しました(東京地裁は行政部も複数あり、一般部もたくさんあるので滅多に同期の裁判官が担当することはないですね)。原告適格という訴訟要件が争われた事件で、理路整然と、これを認める判断をしたのです。むろん当時、建築確認訴訟としては目新しい判断ではなかったのですが、微妙な点がなかったわけではない中、スマートに認めました。ただ、実体判断の取消は認めませんでしたので、ま、東京地裁行政部の予想されたセオリーかな、いや最高裁の判断基準にそったものかなと、それは受け入れましたが・・・

 

差し戻し審の東京地裁がどういう判断するか、楽しみです。とはいえ、実体判断こそが問題で、彼もそこで試されるでしょうね。

 

なお、安保関連法の違憲訴訟は16年以来全国各地で多く提起されています。

<安全保障関連法を巡っては、市民らが憲法9条などに反するとして精神的慰謝料を求める国家賠償や自衛隊出動の差し止めを求めた訴訟が相次いでいる。弁護士らでつくる「安保法制違憲訴訟の会」によると、安保関連法に関する集団訴訟は1月24日時点で全国21地裁に計24件起こされており、原告総数は7152人に上る。 >

この内容は<安保法制違憲訴訟の会>のホームページで詳細に書かれています。

 

なお、ついでに彼が東京高裁裁判長として取り扱った事件を少し判例データーベースで調べてみたら、多くは控訴棄却で、原審判決を維持していますが、中に興味深い原判決変更の事件がいくつかあり、そのうち昨日取りあげた事例に関係するのがありましたから、参考までに引用しておきます。

 

平成29年4月26日東京高等裁判判決で、政務調査費返還請求控訴事件について、事件概要は次の通りです。まだ一審、二審ともなぜか判決文がアップされていないため、詳細はわかりませんが、少なくとも高裁で一審より有利な内容で原告の請求を認容したことはいえるでしょう。

 

県民である原告らが、県が県議会議員に対して交付した政務調査費について、これが外国における観光目的の調査研究の費用に充当されたのは違法であり、視察した議員は充当された政務調査費相当額につき不当に利得し、又は県に同額の損害を与えたと主張して、知事に対して、視察した議員に対する同額の返還、又は損害金の支払を請求するよう求めた住民訴訟の控訴審において、原告らの控訴に基づいて1審判決が変更された事例


事件の内容については、次のホームページで紹介されているのが一審判決日と同じですのでたぶんそうかなと思いますので、参考までに引用します。視察名目の観光旅行とみるべき事案なのでしょう。甲府地裁が限定的に認めた判断に疑問があるでしょうね。

 

政活費返還裁判  視察の一部「観光旅行と変わらず」>



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