野分だちて、雨さへ降り暮らすに、夢にだに逢はざりしことのながくありて、長からむと言ひしも難きこと、思ふ人ありし人を思ふはいとつらしと思へども、さても思ふ心のやまぬもあやし。
昼となく夜となく、ただながむるに、過ぎにしかたを思ひいづ。かの人は心かろき人にて、忘れじの行く末までは難きと思ひしに、さればよ。
君来むと言ひしに、ひぐらし待ちわぶるここち、言はむかたなく苦し。君知るかは。むねつぶるるばかりにて思ひ嘆かるる。
又の日、かの人の来むと言ひしを、待たじと思ふになどかは待たるる。
思ひつつぬれども人はみえざりけり、わが身には覚めざらましと思ふ夢もなし。
はや日も暮れぬ。いとよくつくろひて来ぬ人を待つに、思ひ結ぼほる。さればかの折はあからさまなる心にこそありけれ。はや思ひ離るらむ、われも思ひ絶ゆべしと思ふ。
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